我々の宇宙はどんな姿をしているのか。最新の宇宙物理学は,その疑問を次々と解明してきたが、宇宙にはまだ未解決の問題がたくさん残されている。暗黒物質の存在もそのひとつだ。
「宇宙全体の物質の9割は、従来の観測方法では捉えることのできない暗黒物質だと考えられています。その正体は解明されていませんが、理論上はいくつかの候補があがっており、世界中の研究者がその存在を証明しようと狙っています」というのは伏見賢一・徳島大学助教授だ。
伏見助教授によれば、候補のなかで最も重要なのがニュートラリーノという素粒子だ。「超対称理論」という物理理論が存在を予言しているもので、ニュートリノと同様、鉛や岩盤などいろいろな物質を通り抜けてしまう性質をもっている。しかし、ほとんど重さの無いニュートリノに対して、ニュートラリーノは陽子の数十倍の質量をもつ。もし、この粒子が宇宙を満たしていることが証明されれば、これが暗黒物質の正体といっていい。
研究者たちは、ニュートラリーノを捉えるために、ヨウ化ナトリウム結晶によるシンチレーション現象をもちいた観測を続けてきた。さまざまな放射線や素粒子が、この結晶を通過するとき、ヨウ素原子と衝突して蛍光を発する。観測で、既知の粒子と異なる光エネルギーを確認できれば、ニュートラリーノの存在を証明することができるというわけだ。
「ただ、研究には大きな壁がある。ニュートラリーノによる蛍光は、大きな1キログラムの結晶の場合でも数ヶ月に1回程度ですが、それに対して自然界に存在する放射線による蛍光は1秒間に数個。膨大な雑音のなかから本命だけを捉えることが非常に難しいのです」(伏見助教授)
各国の研究グループは、できるだけたくさんの蛍光を捉えるため数百キログラムという大きさの結晶をもちい、それを自然放射線の少ない地下の岩盤の下などに設置して観測してきた。そして、2000年の2月、イタリアと中国による共同研究であるDAMAのチームが、ニュートラリーノを捉えたと発表した。これは蛍光エネルギーを1年間観測したところ、12月よりも6月の方が多かったという内容。私たちの太陽系は、暗黒物質の流れのなかにあり、地球が暗黒物質流れの向きに動くときと反対のときとで、エネルギーの量に周期的な変化が起こると予想されていたからだ。
しかし、DAMAの発表については、専門家からは「解析にまだ問題がある」「季節変動は電源のせいかもしれない」など、疑問が相次ぎ、捉えた現象が暗黒物質によるものとは認められなかった。










