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運転をはかる[2]
  ドライブレコーダーがはかる「運転の今と未来」

「運転をはかる」。前回紹介したドライブレコーダーとデジタルタコグラフ、そしてクラウド管理システムが果たす役割を、私たちは「運転をはかる」と呼ぶことにしました。映像や数値で運転時の状況を可視化し、安全運転を実現するための指針としてフィードバックする。その中には、速度や走行距離・時間といった単純な数値から、行動を記録することで読み取る運転のクセまで、さまざまな情報をはかります。

シリーズ第二回では、より具体的に「運転をはかる」意味を掘り下げるべく、ドライブレコーダーの仕組みをはじめ、「運転をはかる」ことが社会に果たす役割についてお届けします。HORIBAでドライブレコーダーの開発を担当している、石倉理有さんにお話をうかがいました。


タクシーを使った社会実験が契機になった、ドライブレコーダー開発

今でこそ低価格化が実現し、広く知られるようになったドライブレコーダー。前回も概略はお話ししましたが、石倉さんにあらためて、開発の経緯をうかがいました。

drive_1石倉さん: 元々は、国土交通省が映像記録型のドライブレコーダーの研究を行っていたのがはじまりです。研究を進めていく過程で、タクシーの実機に導入し、効果予測のための本格的な社会実験を始めることになりました。しかし当時は量産型のドライブレコーダーがなく、プロトタイプはとても大きく高価なものだったので、量産化へ向けて製作の依頼をお受けしたのです。2004年のことです。

はかる場: なぜ実験にタクシーが選ばれたのでしょうか?

石倉さん: 現在企業でドライブレコーダーを搭載している車両をおおまかに分類すると、タクシー・トラック・バス・営業車の四つに分けられます。交通事故は、一般道路、とりわけ生活道路での事故が多いんですね。高速道路での交通事故は、主な事故原因が自身の運転ミスに限られます。しかし生活道路での事故の場合は、飛び出しや相手の不注意運転など、さまざまな要因があります。そのため、生活道路を走ることが多いタクシー数百台に検証機を搭載し、社会実験を行ったのです。

はかる場: 映像記録型のドライブレコーダーを開発する狙いはどこにあったのでしょうか?

石倉さん: 交通事故を未然に防止することを目的としていました。たとえば「あなたは安全運転ですか?」と質問します。おそらくほぼ全員が「私は安全運転をしています」と答えるのではないでしょうか。気持ちはわかりますが、何の根拠もない、個人の感覚でしかないですよね。第三者と「あの人は安全運転ですか?」「安全運転だと思います」とやりとりがあったとしても、やはり個人の感覚です。個人の感覚に頼らざるを得なかった「安全運転」を、映像や独自に設定した基準値で定量的・相対的に評価しようと開発されたのが、ドライブレコーダーなんです。


ドライブレコーダーで「運転をはかる」仕組みと可能性

はかる場: 基本的なことですが、“安全運転を評価する”ことを期待されているドライブレコーダーの機能はどういったものなのでしょうか?

石倉さん: みなさんのご自宅にもビデオカメラがあると思います。赤いボタンを押すと、録画がスタートしますよね。ドライブレコーダーはボタンのかわりに、加速や衝撃に反応する“Gセンサー”(加速度センサー)がスイッチになっています。これは急ブレーキ、急ハンドルなどに反応して作動するイベント型ドライブレコーダーに取り入れられ、スキップバックレコーダ装置とも呼ばれる仕組みです。Gセンサーが起動した前後を録画することで、事故前後の情報を収集します。そのため、常に映像を記録する装置が作動しており、事故が起きたその時点よりも、30秒程度前からの情報が記録できるのです。

常時録画型のドライブレコーダーもあります。事故の前後や瞬間だけではなく、文字通り記録したい時間、ずっと録画し続けることができます。最近は、ニーズが常時録画型に移行しているように思います。たとえば自分の車が止まっている時に、たとえば自転車がぶつかってきたとしても、振動が小さいのでGセンサーは感知しないこともあるんですよ。またタクシーなんかだと、車内のトラブルを録画しておきたいというのも、よく耳にする話です。

これを受けてドライブレコーダーのカメラ位置も変化しました。HORIBAの初期のドライブレコーダーは、筐体ごとフロントガラスの上部に取り付ける形で、内蔵されたカメラで前方を撮影していましたが、現在は装置とセパレートタイプのカメラが2つあり、前方と車内を撮影しています。

はかる場: イベント型、常時録画型、どちらにもニーズはあると思うのですが、メリット・デメリットはありますか?

石倉さん: 常時録画型に車上荒らしの予防を期待される向きもあるのですが、基本はエンジン稼働中に作動する装置ですし、仮にバッテリー電源で使用となったとしても決して少ない電気で動くわけではないんですね。防犯用とするには、改良が必要です。もうひとつ、常時録画型はデータ量が膨大です。何かピンポイントで目的の画像を探すのは一苦労です。その点で、事故前後を記録するような目的なら、イベント型のほうが適していると言えますね。

はかる場: 記録される映像は、ドライバーの運転とその環境。この映像から交通事故防止につなげるためには、何を見ていると言えるのでしょうか?

石倉さん: 結論を言うと、「心象に左右されない、客観的事実」ということですね。たとえば自動車と自転車が衝突すると、たいていは自動車のほうが悪い、となるんですね。自転車は“交通弱者”という扱いです。でも、昨今自転車のマナーの悪さもかなり指摘されるようになりました。この背景には実際に事故の証拠として提出され、自転車側の過失が明らかにされるなど、ドライブレコーダーの普及によってわかってきたところもあります。

はかる場: 人間の目や記憶を判断基準にすると、感情やコンディションに左右されてしまいますよね。そのブレがなくなることには非常に意味があると思います。事故の予防に活かされることもありますか?

石倉さん: 元々、私たちも「事故を撮る」ことが目的ではなく、「ヒヤリ・ハット」を撮りたかったんです。急ブレーキを踏むに至った経緯は? 急ハンドルの原因は? 記録した映像から、このドライバーは前後の動きより左右の動きが激しいので左右の確認が足りない、といった具合に教育に反映させる。実際には事故時の証拠として利用されることのほうが多く、それで広まっていった背景もあるんですが。

フィードバックはドライブレコーダーから直接に行うことも可能です。急ブレーキなどあらかじめ指定しておいた条件で、音声や警報などのアラートを鳴らすことができるのです。Gセンサーで検知できるのは、急ブレーキや急ハンドルなど。それに加えて、スピード、エンジン回転数、アイドリングなどを記録するものもあります。多くの場合、導入される事業者さんで基準を設定されます。その基準に抵触すればアラートが鳴って、ドライバーにフィードバックされる。このサイクルですね。慣れれば撮影時のアラートの音で「あ、撮られた」とわかるようになりますし、自分の運転のクセをあらためて知ることになるでしょう。元来は基準のない自制心を、安定的に刺激する。抑制がかかるんです。

デジタルタコグラフで記録していた基本の三要素は、速度・距離・時間ですが、最近のドライブレコーダーではこれらも記録することが可能です。数値を基準に長時間勤務を避けるなどの労務管理に加え、運転の技術に関する管理ができるようになれば、事故防止への取り組みもより踏み込んだ対策ができます。


クラウド管理で夢広がる「運転をはかる」未来

はかる場: HORIBAでは、リアルタイムに運行情報をデータセンターに収集する新しいタイプの運行管理システムもあるそうですね。これまでデジタルタコグラフやドライブレコーダーが果たしてきた役割に加え、いわゆるビッグデータの集積・蓄積が与える影響もありそうですが?

石倉さん: クラウドで横断的なデータ収集が可能になった場合、今まではHORIBAとお客様の一対一の関係で蓄積されていた情報が、いろんな業種、いろんなお客様のものと比較することが可能になります。比較することで、より絶対値に近づけることができるようになるんです。クラウド型には、単純に事務所に専用のハードウェアを用意しなくて済む、というメリットもありますね。リアルタイムでデータを収集するので、ドライバーがどこで何をしているかがわかることもメリットのひとつと言えるでしょう。おかげでサボることは難しくなりますが(苦笑)。

はかる場: すでに災害時にはビッグデータ的な使い方がされているケースもあるようです。蓄積したデータを基にした安全なルート案内や、事故を未然に防ぐための危険箇所・要因の共有と夢は膨らみますが、石倉さんの中でドライブレコーダーが実現する未来予想図のようなものはお持ちですか?

石倉さん: 悪い考え方をすると、監視モニターにもなり得るんですよね。今でもいろんなところに、監視カメラがついてますよね。あれが街中を動きまわってると考えると、どこで何が起きているのか、データを集められれば、すべてわかるという世界も描けます。

はかる場: グーグルストリートビューのリアルタイム版みたいですね。あちこちカメラが動きまわってるわけですから。

石倉さん: そうすると、どこでどんな状態になってるかというのが、誰にでもわかるようになります。目的地へ行こうとしたときに、渋滞しているなら車で行くのはやめようかという判断もできます。だからそういう意味では、情報を公開することによって、渋滞緩和につながるかなと思います。混んでるところにわざわざ行こうという人はいないですから。それだけでなく、悪いことをしようとする人も、見られてるぞという状態になれば、できないようになりますよね(笑)。ドライブレコーダーのアラートと同じように、抑止効果になるかもしれません。

はかる場: その社会が実現するには、プライバシーの問題や、情報の管理が課題となってきますね。ドライブレコーダーがどれくらい普及しているか、にもよりますし。

石倉さん: 現在は、一般のドライバーの分も含めて、300万台くらいで導入していると言われています。日本全体での自動車保有車両数は8,000万台くらいありますので、もう数%の車には搭載されています。訴訟における証拠利用を見る限り、今後ドライブレコーダーが無いと不利になる場面も出てくるでしょう。この先もある程度の数まで普及するだろうとは思っていますが、監視される社会だけが実現するようでは健全な社会とは言えませんね。

はかる場: 運転だけでなく、世の中で起こっていることも記録していくということになるでしょうか。

石倉さん: 現実に起こっていることを記録できて、今まで知り得なかったことが後から検証できることは、すごく有意義なポイントかなと思います。良い使い方も悪い使い方もできるというのは、どんな道具でも一緒です。世の中の健全化につながるものを作っていきたいと思います。


なぜ事故が起きてしまうのか。その答えは一つではありません。しかし、ドライブレコーダーが可視化するアレコレが、あるケースでは証拠として活躍し、また別の現場では安全運転を徹底するための重要な指標になっています。今後、ドライブレコーダーの普及と、それらをネットワークする技術が浸透すれば、交通事故の減少に貢献できるのではないでしょうか? 「運転をはかる」ことは、過去と未来をつなぎ、安全運転を実現する、未来へ向けた技術と言えそうです。

次回は、実際にドライブレコーダーとクラウド管理システムを導入している企業の事例を紹介します。

 

運転をはかる

>>運転をはかる[1]  ドライブレコーダーとデジタルタコグラフ
>>運転をはかる[3] 「運転をはかる」と安全・安心が“グンと高まる”ワケを知る


関連リンク

国土交通省 効果的・効率的な交通事故対策の推進

国土交通省 事業用自動車の重大事故の発生状況

自動車運送事業用自動車事故統計年報

警察庁 平成25年中の交通事故の発生状況

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