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野菜のおいしさをはかる[1]
  「おいしさ」を「はかる」ことはできるの?

レストランや居酒屋探し、みなさんは何を頼りにされますか? 今だとやはり、口コミサイトでしょうか。ソーシャルメディアを利用している方からは、フォローしている人のレコメンドがいちばん、という声も聞かれます。もちろん古くからのグルメ雑誌の信頼も変わらず厚いことでしょう。

ところでこれらはすべて、発信する人と受け取る人の「味覚」に左右されます。おいしいと思うかどうか。ご存じのとおり、十人十色、千差万別です。誰しもがおいしいと思う名店の味、変わらぬおいしさのあのお菓子……多くの人に愛される「おいしさ」はたしかに存在しますが、それでも人の味覚に頼らざるを得ません。もし「おいしさ」が客観的に判断できたとしたら。お店選びや食材選びもガラリと変わりそうです。人間がおいしさを感じる仕組み、肉や魚、野菜など素材が持つ成分からもおいしさのヒントがあるはず。

というわけで今回のテーマは「野菜のおいしさをはかる」。そうです、「はかる」ことももちろん、おいしさを客観的にするための研究開発に利用されています。


意外と知らない? おいしさを感じる「味覚」の仕組み

食べ物を「おいしい」と感じるとき、私たちは目で見て匂いを嗅いでと、ほかの感覚器からの情報を統合して判断しますよね。おいしさにつながるさまざまな信号のひとつとして、味覚が存在します。

「味覚」はご存じのとおり五感のひとつです。五感のうち「視覚」には視力検査、「聴覚」には聴力検査と客観的な数値として「はかる」ことになじみがありますが、「味覚」の場合はそうではありません。「味覚」をはかることはできるのでしょうか?

味覚には「甘味」「苦味」「酸味」「塩味」「うま味」の5つの基本味があります。この基本味を受容するのが、「味蕾(みらい)」という名の、数十の“味細胞”の集合体です。舌を中心に口腔内に存在し、個人差はあるようですが平均して7,000~9,000個もあるそうです。舌先、舌の奥とそれぞれの神経細胞の役割を経て脳へと伝えられていきます。

味細胞の膜には受容体と呼ばれるタンパク質が存在し、先述した感覚からの情報を体内に伝えていく役割を担っています。詳細は省きますが、甘味や苦味、うま味に関してはタンパク質に対する味物質との反応で信号が脳に送られる仕組み、酸味と塩味はイオンを通す構造が利用されているなど、基本味の中でもその働きはさまざまです。


苦味の正体「硝酸イオン」と「野菜のおいしさ」

味やおいしさに関する研究は奥が深く、多様な技術や知見が役に立っています。おいしさすべてをこの記事で網羅することはとても不可能ですので、はかる場では「はかる」技術が活躍している“ある味”についてお届けします。その味とは……「苦味」です。

苦味と聞いて何を思い浮かべますか? コーヒー、ビール、大人の嗜好品。野菜にも苦いものがありますよね。苦味には、多くの毒物が苦いことから、有害物のシグナルとしての機能があると言われています。余談ですが酸味にも同様に、本能で避けるべき“腐敗”を伝える役割があるとされています。苦味のある飲料や食品には大人のイメージがつきますが、成長する過程でそれら苦味を持つ飲料や食品が安全なことを知っているからこそ、本能的な反応を超えて楽しめると考えると腑に落ちますね。

苦味を感じる飲料や食品が多岐にわたるように、苦味を感じさせる物質も多種多様です。たとえば野菜。肥料をやりすぎてしまうと、土壌中の「硝酸イオン」が増加します。土壌から根を通じて野菜に取り込まれる物質ですが、多すぎると野菜を傷つけることがありますし、野菜の中に多量に含まれると“苦味”が過ぎておいしさをそこねてしまう可能性もあるのです。しかし、この「硝酸イオン」は同時に、食材が育つための大切な要素なのです。


おいしさにつながる物質もあれば、そうでない物質もあります。次回は、農家や販売店を悩ませる、野菜の苦味の原因のひとつ、「硝酸イオン」対策で活躍する「はかる」技術に迫ります。「野菜のおいしさをはかる」ことで、おいしい野菜づくりに貢献できるでしょうか?

 

野菜のおいしさをはかる

>>野菜のおいしさをはかる[2] 野菜の成長とおいしさを左右する「硝酸イオン」をはかる
>>野菜のおいしさをはかる[3] おいしい野菜を届けるために「はかる」

 

Photo by Thinkstock/Getty Images


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おいしさを科学する(ニッスイ)

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