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文化財をはかる[1]
  文化財と、文化財が抱えている問題を知る

ひとえに文化財といっても、その形はさまざま。1950年に制定された文化財保護法では、文化財を次のように規定しています。

“この法律で「文化財」とは、次に掲げるものをいう。
一  建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で我が国にとって歴史上又は芸術上価値の高いもの(これらのものと一体をなしてその価値を形成している土地その他の物件を含む。)並びに考古資料及びその他の学術上価値の高い歴史資料(以下「有形文化財」という。)
二  演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(以下「無形文化財」という。)
三  衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないもの(以下「民俗文化財」という。)
四  貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとつて歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で我が国にとつて学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)
五  地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの(以下「文化的景観」という。)
六  周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値の高いもの(以下「伝統的建造物群」という。)”

「有形文化財」、「無形文化財」、このあたりの言葉は聞かれたこともあるのでは。民俗芸能や風習などを指す「民俗文化財」に触れることもあるかもしれません。四項に該当する「記念物」は少しイメージしづらいですが、史跡、名勝、天然記念物などが該当します。形はさまざまですが、共通しているのは「人類の歴史の中で生み出されたもので、それを通じて歴史や文化を正しく理解することができ、また将来に渡って残すべき価値の高いものであること」でしょうか。

前置きが長くなりましたが、今回、はかる場で取り上げるテーマは「文化財をはかる」。「はかる」が文化財にどんな役割を果たすのか、見ていくことにしましょう。


文化財を守ることは国の文化を守ること

やはり馴染み深いのは「有形文化財」でしょうか。建造物、絵画、彫刻、工芸品から書籍や古文書まで。実は“国宝”や“重要文化財”も有形文化財から指定されます。先ごろ世界遺産に登録され話題を呼んでいる富岡製糸場もまた、初期の建造物が重要文化財に指定されている有形文化財でもあります(敷地そのものは史跡)。

法律や条例で文化財を指定するのには、その存在自体に高い価値を認めようということもありますが、やはり主な目的は「保護」にあります。その価値が認められれば観光資源になることもあり、国や自治体の補助も得ながら、定期的なメンテナンスや修理・修復で良い状態に保ちます。たとえば、海外のファンも多い京都にはたくさんのお寺や神社がありますが、訪れた時に限って修理中と、ちょっと残念な経験をされた方もいるのではないでしょうか。文化財の多くは今の建物のように耐震性や防火性に優れていないので、時が経てば経つほど補修の必要性が増していき、あちこちで修復工事が見られるということになります。

時の移ろいは文化財そのものだけではなく、保護方法にも影響を及ぼします。維持にかかるコスト、所有者の高齢化や後継者不足、ものによっては千年の時を経て補修を行うこともあり、技術の継承も困難になっています。


「はかる」で文化財の価値を可視化する

文化財の指定にも、いろいろな要件が求められます。定義にあるように「歴史上、芸術上価値が高い」とするためには、歴史的背景の理解やそれを示す文献、芸術的な観点と、たしかな目が必要です。過去には文化財指定後に贋作であることがわかり、指定の取り消し、指定に関わった人物の辞職につながったケースもありました。

もうおわかりですね。これら文化財の指定や、保存・修復の課題解決に「はかる」が役立っています。使う技術は「X線分析」。そうです、文化財は傷をつけることができないので、指定や修復のための調査も非破壊であることが必須です。文化財を壊すことなく組成や内部を明らかにすることで、つくられた地方や年代の特定につながります。文化財保存・修復の分野で活躍する「文化財をはかる」技術について、これからより深く迫っていきましょう。


次回は文化財をはかる、X線分析顕微鏡についてのお話です。

 

文化財をはかる

>>文化財をはかる[2] 壊さずに真実を解き明かす、X線分析顕微鏡
>>文化財をはかる[3] 文化財をはかることは、文化財から教えてもらうこと

 

Photo by Thinkstock/Getty Images


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