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ゴミをはかる[1]
  安全に処理するために、ゴミの中身を知る

日本で一年間に出されるゴミの量を、ご存じでしょうか? 主に家庭から出る一般廃棄物が約4,500万トン(平成24年度実績・環境省調べ)、さまざまな事業によって排出される産業廃棄物が約3億8,000万トン(平成23年度実績・環境省調べ)。この膨大な量のゴミをどのように処理するのか。それはゴミを生み出している私たちに突きつけられた課題です。

平成24年の時点で、一般廃棄物はリサイクルに回るのが約20%、残りのほとんどが粉々に砕いたり燃やしたりしたあと、埋立処分場で処理されています。産業廃棄物は平成23年度の時点で、約53%が再生利用され、残りは全体の約3%のボリュームまで減量化されて最終処分場に埋め立てられています。生活者の間でも環境問題に対する意識が高まるにつれて、リサイクル(資源化)、リデュース(減量)、リユース(再利用)の3Rに、リファイン(分別)、リペア(修理)の2つを加えた「5R」の考え方が定着してきました。その結果、一般廃棄物の総量は、平成23年度から24年度にかけて約20万トン減っています。またゴミ処理技術の進歩により、出たゴミを大幅に減量できるようにもなってきています。ゴミを出す時点の工夫、ゴミを処理する技術。私たちは二つのアプローチで、ゴミ処理問題に向き合っています。

私たちの社会は、自分たちで排出したゴミとその処理の問題に、しっかりと向き合っています。一方でゴミ処理を行ううえで一点、見過ごせない問題があります。それは、ゴミの中に有害物質が含まれている場合です。ゴミをいかに処理するかという大きな問題に取り組む中で生まれる新たな問題。ここに「はかる」が関係しています。


それぞれができることを……ゴミ処理の基本はゴミの分別

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ゴミ処理では、中身の分別が重要です。リサイクルやリユースに回すために、あるいは燃焼・粉砕して減量する場合も、中身を確認して有害物質を取り除かなければなりません。たとえば、有害物質を含むゴミを処分場に埋めてしまうと、環境汚染を引き起こしかねません。廃棄物から有害物質が漏れだし、それが地中に染みこんで、河川の水や土壌を汚染するのです。

先にもお話したとおり、一般廃棄物については分別収集が徹底されるようになってきました。分別方法は自治体ごとに細かく定められています。そのひとつにペットボトルのキャップとラベルを分別し、リサイクル可能なPET樹脂製のボトルを回収する仕組みがあります。ちょっと前ならば大げさに思えたことも、今では自然と行っていませんか? また、家電製品のリサイクルは平成13年に「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」が制定され、現在はこの法律に則ってリサイクルが進められています。家電製品はペットボトルと同じように、家庭で分別して捨てることはできません。家電製品のリサイクルは、廃棄物の削減と金属やプラスチックなどの資源の再利用が目的ですが、エアコンや冷蔵庫には冷媒としてフロンが、液晶テレビの画面には水銀やヒ素が使われていることもあります。これらを家庭では処理できないため、専門の業者が処理を請け負い、リサイクルする資源と有害物質に分別する必要があります。そのため、リサイクルと回収・運搬の費用を使用者が負担することが定められました。

どちらも人々の暮らしの中で排出されるゴミですが、その中身によって処理の難しさも、役割も変わってくるのです。


産業廃棄物の中身

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テレビや新聞でもたびたび大きく取り上げられているので、なんとなくイメージされている方も多いことでしょう。産業廃棄物は、処理するために一般廃棄物よりも高度な処理が求められます。産業廃棄物の要件は、廃棄物処理法第二条に以下のように定められています。

「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)」

これら事業活動によって生じた20種類の廃棄物を産業廃棄物と呼び、示すとおり内容は多岐にわたります。建設現場で出るコンクリートやレンガの破片(がれき類)、食品加工場から出る魚や獣の“あら”もそのひとつです。

産業廃棄物のなかでも、引火性の廃油や、強い酸性/アルカリ性の廃液、医療機関などから出される使用済みの注射針、毒性の強い水銀や鉛などは特別管理産業廃棄物と呼ばれます。これらは、爆発性、感染性、毒性が強く、適切に処理しなければ私たちの健康や生活環境に大きな被害を及ぼすおそれがあります。排出されてから処理されるまでの間、常に注意して取り扱うことが定められており、これらを排出する事業者には、特別管理産業廃棄物管理責任者の選任など、通常の産業廃棄物よりも特別な管理や処理方法が義務づけられています。


ゴミなのに丁寧に? 非破壊でゴミをはかる

産業廃棄物は扱いを誤ると私たちの生活に悪影響を及ぼす危険性が大きく、処理する際は詳細な決まりにしたがって、適切な処理が求められます。適切に処理するためには、処理前に廃棄物内に含まれているものを確認し、リサイクル可能な資源や有害物質を分別する事が欠かせません。ここに「はかる」技術が活かされています。

以前「文化財をはかる」シリーズでは、はかる対象である文化財を保護するために非破壊であることが求められました。対象物にX線を照射し、対象物を構成する成分を明らかにする仕組み。ゴミをはかる際にも、この方法が役に立ちます。産業廃棄物に有害物質が含まれている可能性がある以上、手で触りながら分別することには危険が伴います。また、ゴミに含まれる有害物質の中には、その物質単体で有害なものだけではなく、同じくゴミの中に含まれた成分と反応することで有害物質化するものも。手を触れずに、かつ対象をいたずらに崩さずに「はかる」ことが、必然的に求められるのです。

とはいえ、同記事で紹介したようなX線分析顕微鏡にゴミを入れてはかる、なんてことはできません。そこで、ゴミをはかる現場では携行型の「ハンドヘルド型蛍光X線分析装置」が用いられています。次回は、手軽ながらも多様なニーズに応える「ハンドヘルド型蛍光X線分析装置」を通じて、「ゴミをはかる」世界をさらに深堀していきます。


私たちの暮らしに密接するゴミ問題。ひとりひとりがゴミ箱に捨てる際の行動はもちろんですが、一方で見えないところで重大な作業も行われています。そこで活躍する「ゴミをはかる」技術。ハンドヘルド型蛍光X線分析装置はいったい、何を見つけてくれるのでしょうか? そこには有害物質だけではなく、意外にも価値ある発見まで含まれているようです。次回、「ゴミをはかる」技術に迫ります。

 

ゴミをはかる

>>ゴミをはかる[2] 有害? 再生可能? 安全なゴミ処理の第一歩は、「はかる」こと

 

Photo by Thinkstock/Getty Images


関連リンク

環境省 廃棄物・リサイクル対策

一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成24年度)について

産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成23年度実績)について

環境省 廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル

経済産業省 3R政策

日本産業廃棄物処理振興センター

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