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水のキホン、「純水」とは

地球は「水の惑星」です。地球表面の7割が海です。生物はこの海で誕生しました。植物も動物も、もちろん我々人間も、水なしでは生きることができません。人間のカラダの7割も水から成り立っています。

地球上にも体内にも、あたりまえのように存在している水ですが、その性質は物質のなかでもかなり特殊です。ふつう液体の密度は、温度が低いほど大きく(重く)なりますが、水がいちばん重いのは、摂氏4度のとき。だから氷が水に浮くわけです。もし水が他の液体と同じ性質だったら、海は底から凍りはじめ、まったく動きのない世界となり、そこで生命が誕生することもなかっただろうといわれています。

さらに、水のモノを溶かす(溶媒としての)働きがなければ、化学や物理学の研究や、さまざまな生活技術の発達もありえなかったとも言われています。もちろん「はかる」ことにとっても、水は何より重要な要素です。電気を通しやすい、その特性を利用した導電率は無論のこと、“純粋”は分析のための基本物質なのです。私たちの暮らしと切っても切れない間柄の「水」。ここでは「はかる」対象として、「水」を見ていきましょう。


“きれいな水”と“うまい水”

“きれいな水”と“うまい水”

豆腐やお酒の良し悪しは、水で決まる、と言われています。このように飲みものや食べものの素となる“きれいな水”は、おいしい料理に不可欠です。ただし、ここでいう“きれいな水”は、“不純物が含まれていない”水ではありません。もちろんカビ臭い水やカルキ臭い水は論外ですが、ほとんど不純物を含まない水は、文字通り“味気ない”もの。清流やおいしいわき水には、適度のミネラル(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄などの鉱物質)を含んでいます。

飲料水において、よく硬水や軟水という言葉が使われますが、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを多く含む水が硬水、それぞれ少ない水が軟水と呼ばれます。日本の河川の水はほとんど軟水で、海外産のミネラルウォーターは、基本的に硬水です。おいしい料理をつくるには、硬水がよいのか、軟水がよいのか知りたくなりますが、一つの答えはありません。日本の料理は軟水を使うことを前提に発達してきたものですし、硬水が多い地域では、硬水にふさわしい料理がつくられてきました。水の違いが食文化の個性をつくってきたのです。

このように、味を左右する“きれいな水”や“うまい水”の定義はありません。一方で、限りなく“純粋”な水は存在します。「純水」と呼ばれる水です。


「純水」と「超純水」

「純水」と「超純水」

科学の実験や分析にとって、水は何よりも重要な要素です。不純物が大量に入った水で実験器具を洗っていては、正しい結果など出るはずがありません。とりわけ化学分析には、「純水」が不可欠です。

世にいわれる「純水」は、正確には完全に“純粋”な水ではありません。あくまでもほとんど“純粋”に近い水のことを指します。一般的には水道水などの水をフィルターでろ過し、イオン交換樹脂などを通して精製したものです。イオン交換樹脂を通過することで、水の中にイオンの形で含まれているミネラル分などの不純物が取り除かれます。このようにしてつくられた「純水」は、「脱イオン水」と呼ばれることもあります。さらに徹底してイオンを取り除いた水、「超純水」と呼ばれる水も存在します。ほんの小さな異物も許されない半導体製造プロセスで基板の洗浄などに用いられたり、医療をはじめ多くの分野で重要な役割を果たしたりしています。

これらの「純水」や「超純水」には賞味期限があります。“純粋”であるために、空気に触れるだけで大気中の二酸化炭素を吸収し、少しずつ変質してゆくため、精密な分析などに用いる場合はなるべく早めのご使用を、というわけです。


「純水」。飲料水や生活用水として、暮らしの中では触れることのない「水」です。しかし、塩分や河川の汚染を「はかる」ために用いられる「導電率」は、まさに“水に含まれる不純物の量”を知る、すなわち「純水」との違いを数値にして「はかる」ことなのです。

 

Photo by Thinkstock/Getty Images


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