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タイヤをはかる[1]
  タイヤと温度のあつ~い関係

私たちは日々、移動しながら生きています。自転車から自動車、バスに電車まで、生活の中で多くの乗り物を利用します。それら多くの乗り物に共通して重要な役割を果たすのが「タイヤ」。速度を上げたり下げたり、角度をつけて進路を変えたりと、目的地にたどり着くためには欠かせない存在です。

タイヤはご存知のとおり消耗品です。走行距離はもちろん、あらゆる負荷により、すり減っていくことは避けられません。また、その時々の天候や道路のコンディションに左右されることも多く、安全に使用するためには市場への出荷前や日々のメンテナンスが欠かせません。ここでも「はかる」技術が活躍しています。今回は自動車のタイヤを例にお話しします。タイヤの性能に密接な関係がある「タイヤの温度」を「はかる」、その意味を探っていきましょう。


タイヤの「温度」と「性能」の密接な関係

自動車が走ると、地面に接しているタイヤの温度が上がります。なんとなく想像できますよね。また、ご存じのとおりタイヤはゴム製です。温度が低ければ固く、温度が上がれば柔らかくなります。自転車などで触った経験がある方もいるかもしれません。タイヤの地面に接する部分を「トレッド」と呼びます。トレッドもゴムでできており、柔らかくなれば地面との摩擦が増え、反対に固くなれば摩擦が少なくなります。摩擦が大きくなると、カーブを高速で走っても滑りにくくなったり、急ブレーキをかけてもスリップせずに止まることができます。この状態が“グリップの良い”タイヤ、というわけです。ただ、あまり摩擦が大きすぎるとタイヤが回転する時の抵抗も増えてしまうので、自動車の燃費に悪影響を与えることも。グリップが良いことと、燃費の良さはトレードオフの関係にあると言えます。

タイヤの温度はどのように上昇するのでしょうか? 実際に自動車が走る状況は、真夏のカンカン照りの日もあれば、夜間や冬季などの路面がひんやりするような温度の低い場合もあります。温度の低い場合でも、走行中の摩擦によってタイヤの温度が上昇しますが、上昇の度合いを左右するのは車が走るスピードです。例えば時速120キロメートルで走行している車のタイヤは、走っていない状態から40~50℃も上昇すると言われています。早く走ることを目的とした車やタイヤには、その上昇に耐えうる設計が必要になるのです。

 

タイヤの温度と密接に関係している、タイヤ点検の重要なポイントのひとつが「空気圧」です。タイヤの温度が上昇することで、タイヤの中の空気が膨張し、空気圧が上昇します。車にはそれぞれ車体に合った空気圧が指定されていますが、指定されている数値はタイヤが冷えている時のものです。一方でタイヤの温度が上がった状態ではかった空気圧が指定した数値になっていても、温度が下がった時には空気圧が不足した状態で走ることになります。タイヤの空気圧は不足していても膨張してしまっていても、破損の原因になるうえに寿命を縮めてしまいます。ドライバーの方は自分や同乗者の安全のためにも、日ごろの点検で意識することが大切です。


タイヤの性能と温度の密接な関係についてお話してきました。タイヤメーカーでは、季節・天候・時間とさまざまに変化する温度状況の中でも、適度な“グリップの良さ”と“燃費性能”のバランスをとるべく、日夜研究開発を行っています。温度を「はかる」ことは、とても大切な役割を果たしています。

ところでタイヤの温度を「はかる」にはどうすればよいのでしょうか? 当然ながら走行中のタイヤは高速回転しており、体温計のように触れた状態ではかることはできません。そこで登場するのが「放射温度計」です。耳慣れない名前の温度計ですが、実はこの温度計、“離れたところからモノに触れずに温度がわかる”優れものなのです。

次回は触れずに温度をはかる「放射温度計」の仕組みに迫ります。

 

タイヤをはかる

>>タイヤをはかる[2] 触れずに温度をはかる“放射温度計”の仕組み
>>タイヤをはかる[3] 全日本学生フォーミュラ大会で「タイヤをはかる」(前編)
>>タイヤをはかる[4] 「タイヤをはかる」とレースの裏側が「見えてくる」

 

Photo by Thinkstock/Getty Images


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タイヤをはかる[2] 触れずに温度をはかる“放射温度計”の仕組み

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