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pHをはかる[2]
  pHの定義と、私たちとの関わり

前編では、身近なもののpHや、pHの調べ方についてお話しました。リトマス試験紙の名前で、小中学生だった頃を思い出された方もいらっしゃいますか? pHはまたの名を「水素イオン指数」とされているように、水溶液中に含まれる水素イオンが、理解するための鍵を握っています。後編では水素イオンの話を中心に、pHの定義がどのようにして生まれたのか、そして一見わかりにくい私たちの生活との関わりをテーマにお送りします。


水素イオンの量を基に作られたpHの定義

水素イオンの量を基に作られたpHの定義

pH 4とpH 7では、水素イオンの数が103 = 1000倍も違う

pHは液体中の水素イオンの濃度を表します。水溶液にどれだけの水素イオンが含まれているかによって、pHの値が決まります。たとえば水(H2O)のごく一部には、水素イオン「H+」と水酸化物イオン「OH-」という電気を帯びたイオンが存在しています。水素イオンが多い場合が酸性、水酸化物イオンが多い場合がアルカリ性です。水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度をかけ合わせると、温度が一定であればどのような水溶液でも常に一定の値(10-14)になることがわかっています。水素イオンが増えると、それに応じて水酸化物イオンが減ることに起因します。つまり水素イオンの数をはかれば水酸化物イオンの数もわかるというわけです。

pHの数値は、1リットルの溶液に含まれている水素イオンの数にそのまま対応しています。pH 7の中性は、両者の数が10-7モル、つまり0.0000001モルで等量。7より小さいと水素イオン優勢の酸性、7より大きいと水酸化物イオン優勢のアルカリ性です。理論的には0ならば水素イオン、14なら水酸化物イオンがいっぱいいっぱいの状態ということになりますね。pH 4ならば10-4=0.0001モル、pH 2ならば10-2=0.01モルの水素イオンが含まれており、pH 4とpH 2では水素イオン数に2倍ではなく100倍の差があります。ちょっとしたpHの変化でも、水溶液の性質は大きく変化するのです。


見直されたpHの定義、キーワードは「活量」

ここまでの説明はpHの考案者・セーレンセンの定義によるものです。その後、pHは水素イオンの濃度ではなく、水素イオンの活量に関係のあることがわかってきました。活量とは“その固有の性質を発揮できる”量のことです。では水素イオンの活量とは何なのでしょうか。例を挙げてご説明します。

容器の中にビー玉が1個入っていると考えてください。容器内にはビー玉が1個しか入っていないので、このビー玉は自由に動くことができます。しかしビー玉が2個、3個……と増えていくにしたがって、それぞれのビー玉の動きは制限されるようになってきます。ビー玉同士がぶつかることもあるでしょうし、ビー玉が増えれば増えるほど動きにくくなるからです。ここでこの制限の度合いをfで表現すると、制限の度合い(f)×容器内のビー玉の数が、“自由に動ける玉が何個あるか”に対応しています。

この例を水溶液の水素イオンに置き換えてみます。ビー玉は水素イオン(H+)、玉の数は水素イオン濃度([H+])、自由に動けるビー玉が何コ存在しているかが、水素イオン活量になるわけです。また f は、専門用語で「活量係数」と言います。現在、pHはこの活量を考慮して補正された数値が使われるようになっています。


 暮らしに深く関わるpHのチカラ

暮らしに深く関わるpHのチカラ分析の世界でpHが重視されるのは、pHの値によってその液体と他の物質との反応の仕方が変化するためです。つまり液体や物質の性質を決める、重要な要素である、ということ。もちろん土や食物など“水分”を含むものも、pHがその性質を左右しますし、水なしでは生きられない生物にとってもpHの変化は重大です。

植物が育つ土のpHは、リンゴやイネが5.0~6.5、モモやナシが6.0~7.5と、それぞれ好みがあるようです。そのため、農家では土のpHを肥料などで調整して作物を育てます。私たちが日常的に食しているパン・酒・ビール・醤油・味噌・チーズ・乳酸飲料といった、酵素が持つ酸性のはたらきを利用して製造する食品では、pH測定が欠かせません。酵素の働きはpHに影響され、それぞれの酵素が一定のpHにおいて、最も効率よく発酵が行なわれるからです。この他にも工業や医療など、pHを「はかる」ことが重要な意味をもつ場面は多岐にわたります。pHを「はかる」ことは普段、私たちの生活では見えにくいことですが、暮らしを支える“縁の下の力持ち”だと言えます。


私たちの生活とは決して切り離すことができないpH。そして、分析の世界では絶対不可欠な基本の指標です。お肌の性質から、地上に降り注ぐ雨まで。pHを知ることで、きっと暮らしが見えてきます。

 

>>前編はコチラ

 

Photo by Thinkstock/Getty Images


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