火力発電の排熱を考える
日本でいちばんエネルギーを消費している所はどこか考えてみて、すぐに思い当たるのは発電所です。正確に言えば消費というより、途中で加工しているわけですが。日本では火力・水力・原子力その他、自家発電も合わせて年間約1兆kwhを発電しています。
<国民1人1日9.4euに相当。なんと10人分の食料エネルギーです>
電気は、電灯にも動力にも通信にも使え、しかも使用の際に排気ガスもススも出ない、大変便利なエネルギーです。ユーザーにとって便利な反面、発電所では、
- 石油や石炭を燃やしたり(熱エネルギー)、
- ウランを核反応させたり(核分裂→熱エネルギー)、
- 水を高いところから落としたり(位置エネルギー)してタービンを回す
(運動→電気エネルギー)
ことにより、質の低いエネルギーから質の高いエネルギーを作るという効率の悪い作業を引き受けています。
火力発電所で石油(化石エネルギー)を燃やしてその熱量の何%が電気になるかの変換効率を「熱効率」といいます。現在は平均39%です。1951年頃の新設発電所が16%だったところから、70年頃にはすでに現在と同じ40%前後まで向上。その後はほぼ横這いで技術的限界といわれましたが、近年コンバインドサイクル(天然ガスでガスタービンを回しさらに蒸気タービンも回して総合熱効率を高める)など新技術の導入により、今年完成する東京電力の施設では設計熱効率が何と49%まで向上したそうです。
さて、熱効率39%として残りの61%はどこに行くのかといえば、煙突から出る水蒸気や温排水のような排熱として捨てられます。
<つまり、家庭で1000ワットのドライヤーを使うと、電気は貯められないので、どこかの火力発電所でそのドライヤーのために2500ワット分強に相当する燃料が焚かれ、1500ワット強の排熱が出ているという関係になります>
日本では年間発電量1兆kwhのうち6000億kwhは火力発電ですから、その1.56倍の9400億kwh=4000億eu分のエネルギーが環境中に捨てられていることになります。
<日本人1億2000万人が9年間食べていけるエネルギーに相当>
<火力だけでも日本人1人当たり毎日約9euが熱として逃げてしまいます>
排熱はどう考えてももったいないわけですが、発電にはもう使えなくても暖房や給湯など他の用途になら十分使えるはず。これを捨てずに有効利用する技術として注目されているのが「コジェネレーション」です(電熱併給などと訳されます)。ガスや石油を燃やしてタービンを回して発電し、その余熱から蒸気や熱水を作って、冷暖房や給湯に回すというものです。電気と熱供給を合わせて75〜80%の熱効率が達成されます。電気と熱の消費地に近くなければならないためどこでも導入できるわけではありませんが、地域冷暖房や大病院、工場などで普及しつつあります。
発電、蒸気、高温水、低温水と、目的に適った品位のエネルギーを段階的に使うことを「カスケード利用」といって、効率向上につながります。これからの環境の時代にはエネルギーもこれまでの大規模・集約型から小規模・地域分散型に向かうといわれ、まだ技術的には発展途上のコジェネレーション技術に期待が寄せられています。
こういったわけで電気は便利だけれど少しぜいたくなエネルギーなので、大事に使いたいものです。電気で冷暖房するのは、せっかく作った高品質エネルギーをまた低質に落として使う、本当は非効率な使い方なのです。