・化石燃料の枯渇
「石油」の回でも触れたように、来世紀には石油などの化石燃料が不足することが考えられます。そういうと、「エネルギーが足りない!」と思う人がいそうですが、正確に言えば、足りないのは使いやすいエネルギー資源であって、エネルギー自体はたくさんあります。
・偉大な太陽エネルギー
地球の地表面の温度はそのほとんどが太陽エネルギーに由来しますが、1年間に人類が消費している全エネルギー(原油換算約80億トン)は、地球が受ける太陽エネルギーの約1時間分に過ぎないそうです。言い換えると、人類がエネルギー資源として利用しているのは太陽から来るエネルギーの1万7500分の1でしかないのです。足りないどころか、宇宙へ放射するエネルギーがわずかに滞り始めただけで「地球温暖化」を心配しなければならないくらい、余るほどあります。風力発電や波力発電は気象現象を通して太陽エネルギーを利用することですし、石油や石炭にしても、何億年も前に生物が光合成活動で溜め込んだ、いわば太陽エネルギーの缶詰みたいなものです。とすると、「次の世代は、太陽エネルギーの直接利用だ!」と考えたくなります。じっさい、日本で最も普及している家庭用自然エネルギー利用装置は屋根に設置する太陽熱温水器で、460万台も普及しています。お湯を沸かすだけとはいえ、太陽エネルギーを3割以上も利用できる優等生です。
・太陽光発電のすすめ
さて今回は太陽光発電を考えてみましょう。日本でも1平米(m2)当たり約1kWの太陽エネルギーが届いています。年間の日照時間を1500時間として、屋根に30平米の太陽電池、変換効率10%のものを設置すれば、年間4500kWh、平均世帯の消費電力くらいは十分に発電できます。環境単位でいえば1日5.3eu、ぜいたくなくらいです。
自然エネルギーは密度が低く、不安定で、石油代替エネルギーにはなりえないと電力関係者はよく言います。上記の太陽光発電の例でも、夜間は発電できませんし、曇りの日には足りないでしょう。また経済性の点でも元を取るのに数十年かかるかもしれません。しかし、いきなり主役交代を期待するのではなく、通常の電源をアシストするものとしては見てはどうでしょう。
いま日本の電力で問題となっているのは、ピ−クカットです。近年は冷房装置の普及により、電力消費の大きなピークが7月〜9月の昼間に生じています。電力会社はこのピークに合わせて設備を整えなければならず、いっぽうで原発など昼夜の出力調整ができないので夜間の電力は余ってしまう。そこで、エコアイスだ、揚水発電だと、夜間電力で昼間のピークを解消するのに躍起となっています。これらの装置はピークをずらすだけで、エネルギーを生み出すわけではありません。
そこへいくと太陽光発電は、いちばん電気の必要なときにいちばん多く発電し、電気の余っている夜は静かにしている。CO2もSOx、NOxも出さない。メンテナンスは各家庭が行う。こんないいことづくめの装置、電力会社はもっと普及に努めてもいいのではないでしょうか。そうして、何かのはずみに画期的な性能の太陽電池が開発されたら、改めて主役の位置をうかがう。そんな選択肢と考えるべきではないかと思います。
屋木伸司/文
(注と出典)
基本的数値は(財)新エネルギー財団資料などを参考にした。
30平米:
現在ポピュラーな太陽電池モジュールは3kWくらいのもの。約300万円かかるが、助成を受けると200万円少々でできる。太陽光発電の個人ユーザーの団体「太陽光発電普及協会」のホームページ(http://www.tip.ne.jp/hare/)では、コスト計算をして「自家用車は買うのにどうして太陽光発電を買わないのか」と訴えている。なお、このページ、報告者各自が自分の住所で「○○発電所」と名乗っているところが楽しい。また、ミサワホームなど住宅各社は屋根建材型太陽電池などでコストダウンを図り、消費電力自給自足住宅を謳っている。
効率10%:
将来的には技術革新で高くなると予想される。普及すれば資源問題も重要になるし、廃棄物問題もいずれ起こるので環境に配慮した素材を選ぶのも重要。
石油代替になりえない
E・カレンバック『緑の国エコトピア』は米国西海岸に環境理想国家が出現するという環境関係者には有名な小説だが、そのエネルギー的背景として主人公の若い女性が(都合よく)高効率の太陽電池素材を発見する。太陽光発電に将来を託するのには一種の理想主義、原理主義的側面があり、多くの批判もまたそこに向けられるが、現在の電気使い放題を前提に代替物を考えるのではなく、発電量に合わせて生活をする方向に切り替えるきっかけとすべきだろう。
ピークカット:
エコアイスは深夜電力で氷をつくり、昼間の冷房に用いる蓄熱ビル空調装置。揚水発電は隣接する水面高度の異なる2つの池(人造湖など)の間にパイプを敷いて、昼間は水を落として水力発電し、夜間は逆に下池から上池にポンプアップする。どちらも充電池の働きをするが、その存在価値は自分たちで8〜9割も安く設定した深夜電力料金に深く依拠している。
電力会社はもっと普及を:
「東京電力(株)」と環境NGO「市民フォーラム2000」の共同活動など、各社で助成制度の動きが見られる。