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100億のインド人と22億のアメリカ人!?

この「環境単位」1eu=2000カロリー(kcal)というのは、人間1人が1日に摂取する必要があるエネルギー量です。実際には世界平均で2700カロリーくらいが供給されています。日本人は2900カロリー、アメリカ人は3600カロリーくらいです。

かつて18世紀末、英国の経済学者マルサスは『人口論』で、人口増加によって食糧不足が必ず訪れると唱えました。実際には今日に至るまで、人口は増えたのに食糧は何とかなっているわけですが、これはマルサスが間違っていたのではなく、化学肥料や機械化をはじめとする近代的農業技術の進展によって単位面積当たりの収量が増大したことによるものでした。


マルサスの亡霊

いま、世界人口は約60億人といわれ、毎年8000万人以上のペースで増加しており、来世紀半ばには94億人とか100億人に達すると言われています。いっぽうで農業技術による飛躍的単収増加はもう望めず、新たな農地開発も限界で、それどころか地球環境問題や土地の劣化、農地から産業用地への転用などのため、農地は減ろうとしています。こうして、またマルサスの亡霊が語られるようになりました。飢餓の世紀が来ると。

世界は何億人の人間を養うことができるのでしょうか。いま世界では20億トンの穀物と6億トンのイモ類などを生産し、1億トン近い漁獲量を得ています。「世界すべての人間がアメリカ人の暮らしをするならば22億人しか食べられないが、インド人の暮らしなら100億人が暮らせる」という試算があるそうです。食糧が足りなくなるから途上国に人口抑制を強制せよという人がいますが、配分の問題でもあるのです。世界の平均値では余裕がある今日でも、8億とも12億ともいわれる人が飢餓人口とされています。平等に分け合うことはそれほどに難しいといえましょう。


美食の果てに…

世界の穀物の4割は飼料となり、つまり肉や乳製品にかたちを変えてから食べられています。美味しい牛肉1kgを得るためには8kgもの穀物飼料が必要という話もあり、それだけ美食のために無駄をしているともいえます。豊かになると高タンパク食化が進むのが現代世界の傾向で、かつての日本も、現在の中国も肉食化に進んでいます。

だからといって、肉食をやめろというのも極論だと思います。しかし今日の「飽食」といわれる食生活については反省が必要でしょう。日本人は2900カロリーと書きましたがこれは供給量で、実際に口にしているのは2000カロリー少々です。その差は流通過程や家庭で捨てられる分と考えていいでしょう。日本人は年間に3000万トンの残飯を出しているそうです。「米一粒たりとも残さない」を唯一の信条として生きている私でも、立食パーティなどに出席して、膨大な量の残り物を前に無力感に襲われることがあります。

飢餓はともかく、食糧不足の時代はいずれ来るでしょう。そのときのためにも、「もったいない」という素朴な感情を磨滅させないようにしたいものです。


屋木伸司/文


(注)
人口論:
人口は幾何級数的に増えるが、食糧生産は算術級数的にしか増えないから、絶対的に食糧不足になる、と論じた。(筆者は不勉強ゆえ原典を読んだわけではありません)
飼料:
本来、酪農や牧畜は、人間にとってそのままでは役に立たない草原の草を乳肉に転換するという自然配慮型産業だが、美食化のため穀物を喰わせる食肉生産が増え、またハンバーガーなどに使う安い牛肉供給のために熱帯雨林が伐り開かれるなどして、環境関係者からすっかり敵視されるようになってしまった。
かたちを変えて:
今日の農業や漁業は、トラクターや漁船の燃料、温室暖房などに大量のエネルギーを費やしており、石油を食品に変換しているだけだという批判もある。科学技術庁資源調査会編『家庭生活におけるエネルギー有効利用』によると、食品に含まれる熱量に対する生産投入エネルギーは牛肉(2000kcal/kgくらいとして)や養殖ぶりで約5倍、米で0.91倍、きゅうりは露地物なら9.1倍だがハウス物は45.9倍。生産投入エネルギーはモデル試算で1人1日3300カロリーに上る。
配分:
戦争や災害のたびに食糧援助が大規模に行われているが、食は文化の基本なので、どこにでも小麦粉やトウモロコシを送れば済むというものではない。
食糧不足:
来なければ幸いだが、情報不足の隣国の例もある。カロリーベース食糧自給率30%、世界最低クラスといわれる日本は、世界最大の食糧輸入国でもある。日本が米生産量より多くのトウモロコシを海外から輸入しているなんて想像したことありますか?

(参考資料と番組)
矢野恒太記念会編『'98/99世界国勢図解』
世界資源研究所他『世界の資源と環境1998-99』
ワールドウォッチ研究所『地球データブック1998-99』
〃 『ワールドウォッチ地球白書1997-98』
レスター・ブラウン『環境ビッグバンへの知的戦略−−マルサスを超えて』
NHK総合テレビ『クローズアップ現代』


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