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『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』レポート
『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』がすごいらしい。という噂に、2005年10月4日〜11月23日まで、東京広尾で開催された「ダイアログ・イン・ザ・ダーク2005 D-HAUS」に参加しました。
暗闇のファーストインプレッション
堤隊員:
世界中で話題になっている、この「暗闇」の体験はいかがでしたか。
湯浅隊員:
いや、本当に真っ暗でしたね。案内役の人が声をかけてくれなかったら大変だったと思います。
堤隊員:
このイベントでは7名が一組となって闇の中をさまよいますね。一緒に体験した人たちは、すべて初めて会った人たちなのに、闇の中では奇妙な友情が芽生えてきたのは不思議な感情でした。この先どう進んでいいか分からなかった時に、自然と手をつかんで「こっちですよ」などと声を掛け合いました。
湯浅隊員:
互いに声を出し合うから、イベント名に「ダイアログ(対話)」が入っているんですよね。一人で黙っていたのでは、始まらない。
堤隊員:
グループ7名で、ひとつの体験を共有するような感覚です。
湯浅隊員:
僕の場合、この7人は飛行機がジャングルに墜落して生き残った人達のような気がしました。同じ災難にあって自然と現われる協力関係ですよ。
堤隊員:
今回は、ガイド役がいて1時間ぐらいすれば元の世界に戻れるのですから安心して参加できますが、もしこれが一人だったら戻れるどころか、一歩も前に進めませんでしたね。そうそうガイド役の方は視覚障害者の方なんですよね。「困った時はいつでも呼んでください」とおっしゃっていましたが、彼だって見えているわけではないのに、こちらは全面的に頼ってしまう。暗闇の中で立場が逆転しているんですね。
視覚以外の感覚が磨かれる?
湯浅隊員:
目が見えないとは、こういうことなのかと思い知らされました。しかし、だんだん身体が慣れて来るにつれ、僕は何だか懐かしい気持ちになってきました。
堤隊員:
懐かしい、とはどういうことですか?
湯浅隊員:
もちろんはっきり記憶しているわけではないのですが、母親の胎内にいた時の思い出というか、子どもの時、お寺などで体験した『どうどう巡り』ですか、お寺の縁の下などにある、真っ暗闇を廻っていく仕掛けですね。そのようなことを思い出しました。
堤隊員:
そういう体験は、子どもにとってはワクワクドキドキの世界ですね。
湯浅隊員:
どうどう巡りは、イニシエーションといって、体験する人が一度死んで、通り抜けると生まれ変わるという意味があります。母親の子宮を体験する仕掛けです。今回も僕にとっては、そのような体験でした。
堤隊員:
どうどう巡りと違うのは、巡っていく通り道に、森や牧場、駅、街角、部屋の中などが設定され、日常生活で出会う物品が用意されていることです。これらを触ったり、嗅いだりして何物かを見つけていきます。視覚以外の感覚である聴覚、触覚、嗅覚、そして味覚を総動員して世界を感じていきます。中でも最後の方にバーに入り、ドリンクを振る舞われる場面がありました。この時、飲んだビールがうまかったなあ。
湯浅隊員:
僕もビールを飲みましたが、いつもと違ってましたか?
堤隊員:
視覚情報が無い分、味覚が鋭敏になっていたせいもあるんでしょうが、一口一口をゆっくり味わったせいでしょうか。
湯浅隊員:
同じグループの参加者からは、「暗闇の中で、どうやってこぼさずにグラスに飲み物を注げるのか不思議!」という声も上がってました。
堤隊員:
バーテンダーの女性も視覚障害者の方ですよね。そう言われると、凄い技術のように感じてしまいますね。
逆転した世界で感じたこと
湯浅隊員:
でも彼女にとってみれば、当たり前のことだと思うんです。目が見えないというのは、別の世界を生きるようなものですね。盲目の人は、見えて当然で作られた今の世界を生きるのは、大変なことだと思います。僕なんか、この暗闇の中で足を踏み外して、電車のホームから線路へ落ちるのではと恐怖を感じた時、それを実感しました。
堤隊員:
別の世界を生きるとはどのようなものでしょう?
湯浅隊員:
僕自身、かなりの視覚人間で、暗闇の中でガイド役の指示や、同行の人たちの声を聞きながら、方角や言葉の意味を考えて自分の身体が自然に、前に広がる空間を視覚的に想定しようとしていたようです。
堤隊員:
それだと他の人の言葉がなければ前に進めませんよね。自分でにおいを嗅いだり、自分の声の反射で自分の位置を確認したりできないとダメですね。
湯浅隊員:
そうなんですよ。それに慣れないと暗闇で立ちすくむしかないわけで。別の世界を生きるとは、視覚以外の感覚を総動員して全然別の世界とのつながりを作ることなのでしょうか?
堤隊員:
ダイアログ・イン・ザ・ダークを体験した一人一人が、別々の感想を持つと思うんですよね。自分が感じたことを、後々ふくらませていけばいいんじゃないかな。
湯浅隊員:
感想を互いに語り合うことで、新しい発見もあるでしょうね。暗闇の外でも「ダイアログ」をしないと。
堤隊員:
今回は、視覚障害者が使う「杖(白杖)」の使い方を教わって、これを持って暗闇の中をさまよいましたが、この杖がなければ大変ですよね。人間は2つの足で立っていますが、暗闇ではそれが危なかっしくて仕方がない。つい床に手をついて四つんばいになりたくなります。これは四つ足の動物と同じですよね。四つんばいだと、後ろ足で体重を支えて、前足で前方を探れるわけです。その上、鼻や耳が前方にきて地面に近づくので、微妙な臭いや音を関知しやすいかもしれない。
湯浅隊員:
なるほど、「杖」が前足と同じ働きをするわけだ。堤隊員、四つ足で生活してみると新しい世界が見えてくるかも知れませんよ。
参加者が「ありがとうございました」と言った!
「単に視覚障害者の世界を疑似体験するものではありません。視覚からの情報がない環境で、他の感覚を研ぎ澄ませることで、新しく発見することがあると思います」と語るのは、NPO法人ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表の金井真介さん。ガイド役の方も案内役に徹して、「ここでは、こんな風に感じてください」などと誘導するようなことはしないという。「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の発案者であるアンドレアス・ハイネッケ博士によると、以下の3つのルールを守れば後は自由に設計して構わないのだそうだ。
NPO法人ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表の金井真介さん
完全な暗闇にすること
参加者は数名のグループを単位とする
視覚障害者がガイドを務める
発祥の地ドイツ以外の国々でも「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」が行われているが、それぞれ独自のアイデアが盛り込まれているという。「日本に合った設計があっていいと思いますし、地方で開催する場合は、ローカル色が出るような仕掛けも考えられますね」と金井さん。
参加者から、いろいろなアイデアや提案もあるという。「真っ暗闇の屋外で自然の風を感じてみたい」という人もいたそうで、「確かに魅力的なアイデアですが、開催する会場の問題もあるので、できるところからやっていきたいと思います」
現在、常設会場の設置に向けて活動を進めているそうだが、「常設会場ができれば、自由な会場設計が可能になります」と期待をふくらませている。また常設展示になれば、ガイド役の視覚障害者の雇用創出にもつながる。なにせ健常者にはできない仕事なのだから。
イベント終了後、アンケート用紙に感想を記入している参加者の元へガイド役の人が挨拶にやってくる。まだ言葉にならない思いを一生懸命口にしながら、最後に「ありがとうございました」という参加者が多いのが、印象的だった。
ダイアログ・イン・ザ・ダーク
[DIALOG IN THE DARK]
1989年、ドイツのアンドレアス・ハイネッケ博士によって考案された「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は、日常生活の様々な環境を織り込んだ真っ暗な空間を、視覚以外の感覚を用いて体験するワークショップ形式の展覧会です。誕生以来世界17カ国、100都市で開催され、既に200万人以上が体験しています。
日本では1999年に初めて紹介され、以後毎年開催され、回を重ねるごとに口コミで評判が広まり、チケットは予約だけで完売する状況になっています。2005年には、グッドデザイン賞(ユニバーサルデザイン賞)を受賞しています。
2002年11月、日本での継続的な開催を行っていくために「特定非営利活動法人 ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン」が設立され、常設会場の設置を目指して活動を続けています。
問い合わせ先:
「ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン」公式HP
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