Gaiapress
HORIBA
TOP
Super Nature / 不思議探検隊
icon
生物の不思議な世界
icon
icon
icon
icon
icon
icon
icon
未知とのコミュニケーション
icon
icon
icon
icon
icon
icon
icon
icon
不思議の科学
icon
icon
icon
icon
icon
icon
icon
icon
icon

樹木医がつなぐ、木の心、人の心

 
木のお医者さん=樹木医という仕事を知っていますか?
人間と自然との距離がどんどん遠くなっている現代、
木々の声に、今一度耳を傾けるべきではないでしょうか。
塚本こなみさん
塚本こなみさん
環境緑化コンサルタント、日本初の女性樹木医。1996年に、あしかがフラワーパークの「大藤」の移植に成功。99年に同園の園長に就任する。現在、全国の巨樹や古木林の保護、治療、移植に取り組んでいる。


塚本さんが移植を手掛けた「大藤」の前で。
塚本さんが移植を手掛けた「大藤」の前で。
■木は全てを受け入れる存在
「木は全てを受け入れるもの、この仕事を続けてきて、そう考えるようになりました」そう語るのは、樹木医の塚本こなみさん。樹木医とは「樹木の診断および治療、後継樹の保護育成、樹木保護に関する知識の普及および指導を行う専門家」資格で、「木のお医者さん」ともいうべき存在。塚本さんは女性では初の樹木医として知られ、巨樹や老木の保護・治療のために全国を走り回っています。
「枝を切られようとも、雷に打たれようとも、手入れをされず朽ちていこうとも、それら全てを受容し、許す」のが木なのだという塚本さん。「だって動物は動くことができますが、木は生えている場所で生きていくしかないのです。木が可哀相とか、治療してあげたいというのは、実は人間側の一方的な思いにすぎません」
塚本さん自身も、樹齢数百年の古木の治療をする際、「まだ数十年しか生きていない私に、治療する資格があるのだろうか」と考えたこともあるとか。確かに木が本当はどう思っているのかなど、人間に分かるはずもありません。
「それでもなお、木に深い思いを抱き、次の世代に残したいと考えている人達がいらっしゃいます。その思いに応えていくことが、樹木医の役目だと考えるようになりました」

■樹木も人間も「根っこ」が大事
「大切なのは木が生えている場所の土壌です。土壌環境は空気と水と土で決まりますが、これが悪いと、地面の下の根にも悪い影響が出てしまいます」
大地にしっかりと根を伸ばしているからこそ、地上の幹や枝が大きく成長することができます。しかし根元付近の土がカチカチでは、根は十分に成長できないとのこと。地上部分だけを見ていたのでは、本当の木の姿は分からないのです。
木は、幹の直径の20倍から30倍もの範囲に根を張っています。それらを全部含めて、木はひとつの「生き物」です。
また「根が大事なのは、人間も同じではないでしょうか」と塚本さんはいう。人間にとっての根っことは、どこでどう育てられてきたか、と言い換えられるかもしれません。かつては考えられなかった事件・事故がニュースで伝えられる度に、現代人の根っこがおかしくなっているのではと思う人も多いはずです。
「現代人はあまりに自然から遠ざかってしまいました。表面的には緑豊かに見える山々も、実態は人間の手が入らず、荒れ果てるままです。でもそれに気づくことさえできないのが現実です」
日本人は古来より、自然の中に神の存在を感じ、敬ってきた歴史があります。しかし戦後、経済発展のみを目標に走り続けてきた結果、木々や植物の声を聞く力さえ失ってしまったのかもしれません。
「地球環境を守ろうと叫ぶ人達がいますが、それは傲慢な考えだと思います。私たち人間こそ、自然の恩恵を受け、守られているはずなのに……。一度、裸足で土の上に立ってみてください。きっと何かが感じられるはずです」

園内を歩きながら、気軽にスタッフに声をかける塚本さん。
園内を歩きながら、気軽にスタッフに声をかける塚本さん。


枝や幹に塗られた真っ黒な「墨」。できるだけ自然素材を使う、塚本さん独特の治療法だ。
枝や幹に塗られた真っ黒な「墨」。できるだけ自然素材を使う、塚本さん独特の治療法だ。
■樹木医は漢方医
現在、塚本さんは、栃木県足利市にある「あしかがフラワーパーク」の園長を務めています。ここは花と緑のテーマパークで、四季折々の花や植物が楽しめますが、特に樹齢130年、800畳敷の大藤棚は世界的に有名で、見頃となる時期(毎年4月下旬から5月)には、多くの観光客で賑わいます。
「普通の藤棚を知っている人ほど、ここの大藤を見ると驚かれますね。今まで見ていた藤は何だったのだろうと」
実はこの大藤は元々別の場所にあったのを、1996年に塚本さんの指揮の元、現在の場所に移植されたもの。それが縁で、塚本さんは1999年から園長に就任し、移植を手掛けた大藤を見守り続けてきました。
フラワーパークの園内の木々をよく見ると、枝や幹に真っ黒な部分がところどころにあるのに気づきますが、これは塚本さん独特の木の治療法。
「痛んだところには、墨を塗るようにしています。自分の立場で考えれば、化学系の薬品を使ってほしいとは思わないでしょう? この木が私の体だったら、どうしてほしいだろうか、と考えて処置を行います。木のお医者さんといっても、あくまでも木自身が持つ回復力を手助けしてあげるのが私の仕事です」
樹木医とは、メスをにぎる外科医というよりも、体全体のバランスを考える漢方医と考えた方がいいようです。

毎年、春が巡ってくるとともに、また新しい花を咲かせる木々たちの姿は、生命のサイクルを実感させてくれます。近所の公園やお隣の庭にある木や花々に、少しだけ注意を向けて、「木はどんな思いで、この場所で生きているのだろう」と考えてみてはいかがでしょう。そこから木との新しい関係が始まるかもしれません。
塚本さんが園長を務める「あしかがフラワーパーク」。
塚本さんが園長を務める「あしかがフラワーパーク」。大藤をはじめ、園内の花の状況など、詳しくは公式サイトで確認できる。
http://www.ashikaga.co.jp/
 
Copyright