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最新鋭戦闘機も顔負け、蛾のステルス機能?

 
動物たちが進化の過程で身につけた能力は
人間のハイテクさえ凌駕するものが少なくない。
暗闇の中で隠密行動を可能する蛾のテクノロジーとは。
 
蝶と蛾。似たような姿をしていますが、「どっちが好きですか?」と聞かれたら、多くの人が「蝶」と答えるのではないでしょうか。蛾は何故人気がないのか、と考えるに、やはり体を覆っている「繊毛」を気持ちわるいと思われているのでしょう。しかし蛾にしてみれば、あの繊毛こそが、天敵から自分の身を守る最大の防御システムなのです。

以前、「不思議探検隊」のレポートで『真っ暗体験記』を紹介しました。完全な暗闇の中では、当然視覚は役に立たず、聴覚の重要性を再認識することになりました。事実、野生に生きる動物たちは五感をフルに活用して、周囲の情報をつかんでいます。
敵に発見される前にすばやく姿を隠し、獲物に気づかれることなく接近する。なにやら敵対する国家同士が、レーダーや偵察機を駆使して情報戦を繰り広げているようです。

さて、蛾に話を戻すと……蛾は主に夜に活動するので、敵の数は基本的に少ないのですが、安心はできません。羽根のはばたきによって生じるわずかな空気の乱れをキャッチして、襲いかかってくることもあるからです。しかし蛾の羽根の先端には、繊細なふさ飾りがついているので、はばたいても空気の乱れを最小限に抑える効果があります。つまり音を極力出さないようになっているのです。
しかし音を出さないだけでは、まだまだ安心できません。天敵の中にはコウモリのような存在がいます。コウモリは人間の耳には聞こえない6万6000〜11万ヘルツの超音波を発して、反射して戻ってきた音波を感知し、3〜5ミリ程度の昆虫を見分けることができます。まさに強力なレーダーを使って、敵機の動きを把握する戦闘機のようです。では蛾は、これにどう対抗するのでしょうか。

ここでも体を覆う繊毛が威力を発揮します。コウモリからの超音波を受けると、繊毛の間につまっている空気分子が共振、すると繊毛同士の摩擦が起きて、超音波が熱エネルギーに変化します。この時、音波は反射することがないのでコウモリに気づかれることはありません。蛾の方は「コウモリが近くにいる!」とわかるので、急いでその場を離れれば安全です(一時的に死んだフリをすることもあるようです)。
これはもはやレーダーに映らない「ステルス機能」と言っていいでしょう。進化の果てに、人間たちのハイテクも真っ青の特殊能力を身につけた動物たち。暗闇で右往左往してしまう人間は、まだまだ彼らから学ぶべき点があるのではないでしょうか。
icon 参考文献:ヘルムート・トリブッチ著『動物たちの生きる知恵』(工作舎)
 
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