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![]() 岐阜県神岡町。 ![]() スーパーカミオカンデに通じる坑道の入り口。 ![]() スーパーカミオカンデの断面模型。 ![]() スーパーカミオカンデの天井部の空間。広い! 山頂からの深さは1000メートル。
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岐阜県、神岡鉱山の坑道を利用して建設された世界最大の実験水槽、スーパーカミオカンデを訪ねた。直径42メートル、高さ39メートルの巨大な水槽に、5万トンの純水(不純物のない水)が常に満たされている。実は素人の想像で、この水槽の中が見れると思って勇んで出かけたのだが、入ることができたのは水槽の天井の上の部分のみ。聞いてみると、完成してから3年間、まだ一度も水槽を開けていないそうだ。不純物が入らないように、というのがその理由。この点に関しては細心の注意が払われている。巨大ではあるが、限りなく繊細な装置なのだ。
実は、この巨大な水槽は、1億分のさらに1億分の1センチ以下と言われている素粒子を対象とした実験装置。具体的には、この装置の目的は主に二つ。 1つはニュートリノと呼ばれる宇宙からやってくる粒子の検出。 もう一つは、陽子の崩壊という現象を捉えること。 うーん、これだけじゃ、なんのことだかさっぱりわからないか。 でもニュートリノや陽子の説明から始めてしまうと、キリがないので、ともかく話を先に進めることにする。 話を思い切りはしょると、ニュートリノというのは、レプトンと呼ばれる素粒子の一つで、宇宙空間を高速で飛び回っている。 太陽のような恒星の中心や、超新星爆発の時など、宇宙でもかなり高いエネルギーの現象が起きている場所で生まれて、宇宙空間に飛び出していく。 ニュートリノは他の粒子と全く反応しないのが特徴で、とにかくこの広大な宇宙を「我関せず」といった調子で、ひたすら飛んでいるらしい。だから、僕たちのカラダはもちろん、地球すらも「まるでそこに無い」かのごとく突き抜けていく。なんだかクールでかっちょいい奴なのだ。 驚くのはその数。スーパーカミオカンデ所長の戸塚洋二教授によれば 「1平方センチあたり、毎秒660億個のニュートリノが太陽からやってきて、突き抜けて行っている」のだそうで、このテキストを読んでいる、あなたのカラダを、たった今も太陽の方向から毎秒何兆個ものニュートリノが突き抜けていっていることになる。(夜でも、地球の裏側から突き抜けて来る!) ちなみに、ビッグバンの時にできたニュートリノはさらにその百倍もの数で、しかも宇宙の全方向から飛んできているのだそうだ。ちょっとクラクラしてしまった。そういう世界に生きてたんだなぁ。
20世紀の科学は「この世界を構成している究極の物質は何か?」という問いの答を、ものすごい勢いで追求してきた。1911年にドイツのアーネスト・ラザフォードが原子の中に原子核を発見したのを皮切りに、大型の加速器の発達によって、あっというまに、原子核を構成するさらに小さい粒子である陽子、中性子を発見し、遂にその先のクォークへとたどり着いた。 つまり僕たちのカラダも、虫や花や動物たちも、ビルも、山も、海も、空気も、地球も、太陽も、銀河も、どんな物質であれ、ずーっと分解していくと結局「クォーク」という粒子にたどりついてしまう、ということがわかったわけだ。 ちょっと自分と素粒子の関係を考えてみた。 例えば食事をすれば、ほかの生命を形づくっていた素粒子は僕たちの体内に吸収され、カラダの一部になる。ある日、くしゃみとなって出ていった素粒子は巡り巡って、東京タワーの一部になっているかもしれない。そう考えると、僕たちの肉体は物質のレベルでは周りの世界と溶け合っているってことか。 さらに大きな時間の流れで考えてみる。太陽も地球も僕たちも、もともとは宇宙空間に漂っていたガスの中から生まれたわけで、そのガスは太陽が存在する以前にあった星の残骸だったわけで・・・と、どんどん遡れば、結局僕たちのカラダを作っている素粒子はビッグバンの直後から存在していることになってしまう。 実際、陽子の中には宇宙が始まった直後の真空が閉じこめられたまま、と言うから、この話はあながち想像だけのものではない。僕たちは、少なくとも体の材料というレベルでは宇宙の始まりから存在していることになる。うーん、またクラクラしてきた。
陽子もニュートリノも見ることはできない。目をつぶっても、感じることもできない。でも僕の身体は無数の陽子や中性子でできており、毎秒毎秒無数のニュートリノが突き抜けている・・・スーパーカミオカンデを後にして、外界に通ずる暗い坑道の中をクルマで走りながら、自分と素粒子と宇宙を結ぶ深い深い間柄について思いを巡らせてしまった。 上田壮一(文/写真) |
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