はかる場 » はかる学入門 http://www.jp.horiba.com/hakaruba はかる場」とは、「はかる」ことで「見える」ようになる世の中のアレコレを紹介するメディアです。 Thu, 19 Nov 2020 04:47:00 +0000 ja hourly 1 http://wordpress.org/?v=3.5.1 pHをはかる[2] pHの定義と、私たちとの関わり https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/572/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/572/#comments Thu, 19 Sep 2013 02:00:35 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=572 前編では、身近なもののpHや、pHの調べ方についてお話しました。リトマス試験紙の名前で、小中学生だった頃を思い出された方もいらっしゃいますか? pHはまたの名を「水素イオン指数」とされているように、水溶液中に含まれる水素イオンが、理解するための鍵を握っています。後編では水素イオンの話を中心に、pHの定義がどのようにして生まれたのか、そして一見わかりにくい私たちの生活との関わりをテーマにお送りします。


水素イオンの量を基に作られたpHの定義

水素イオンの量を基に作られたpHの定義

pH 4とpH 7では、水素イオンの数が103 = 1000倍も違う

pHは液体中の水素イオンの濃度を表します。水溶液にどれだけの水素イオンが含まれているかによって、pHの値が決まります。たとえば水(H2O)のごく一部には、水素イオン「H+」と水酸化物イオン「OH-」という電気を帯びたイオンが存在しています。水素イオンが多い場合が酸性、水酸化物イオンが多い場合がアルカリ性です。水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度をかけ合わせると、温度が一定であればどのような水溶液でも常に一定の値(10-14)になることがわかっています。水素イオンが増えると、それに応じて水酸化物イオンが減ることに起因します。つまり水素イオンの数をはかれば水酸化物イオンの数もわかるというわけです。

pHの数値は、1リットルの溶液に含まれている水素イオンの数にそのまま対応しています。pH 7の中性は、両者の数が10-7モル、つまり0.0000001モルで等量。7より小さいと水素イオン優勢の酸性、7より大きいと水酸化物イオン優勢のアルカリ性です。理論的には0ならば水素イオン、14なら水酸化物イオンがいっぱいいっぱいの状態ということになりますね。pH 4ならば10-4=0.0001モル、pH 2ならば10-2=0.01モルの水素イオンが含まれており、pH 4とpH 2では水素イオン数に2倍ではなく100倍の差があります。ちょっとしたpHの変化でも、水溶液の性質は大きく変化するのです。


見直されたpHの定義、キーワードは「活量」

ここまでの説明はpHの考案者・セーレンセンの定義によるものです。その後、pHは水素イオンの濃度ではなく、水素イオンの活量に関係のあることがわかってきました。活量とは“その固有の性質を発揮できる”量のことです。では水素イオンの活量とは何なのでしょうか。例を挙げてご説明します。

容器の中にビー玉が1個入っていると考えてください。容器内にはビー玉が1個しか入っていないので、このビー玉は自由に動くことができます。しかしビー玉が2個、3個……と増えていくにしたがって、それぞれのビー玉の動きは制限されるようになってきます。ビー玉同士がぶつかることもあるでしょうし、ビー玉が増えれば増えるほど動きにくくなるからです。ここでこの制限の度合いをfで表現すると、制限の度合い(f)×容器内のビー玉の数が、“自由に動ける玉が何個あるか”に対応しています。

この例を水溶液の水素イオンに置き換えてみます。ビー玉は水素イオン(H+)、玉の数は水素イオン濃度([H+])、自由に動けるビー玉が何コ存在しているかが、水素イオン活量になるわけです。また f は、専門用語で「活量係数」と言います。現在、pHはこの活量を考慮して補正された数値が使われるようになっています。


 暮らしに深く関わるpHのチカラ

暮らしに深く関わるpHのチカラ分析の世界でpHが重視されるのは、pHの値によってその液体と他の物質との反応の仕方が変化するためです。つまり液体や物質の性質を決める、重要な要素である、ということ。もちろん土や食物など“水分”を含むものも、pHがその性質を左右しますし、水なしでは生きられない生物にとってもpHの変化は重大です。

植物が育つ土のpHは、リンゴやイネが5.0~6.5、モモやナシが6.0~7.5と、それぞれ好みがあるようです。そのため、農家では土のpHを肥料などで調整して作物を育てます。私たちが日常的に食しているパン・酒・ビール・醤油・味噌・チーズ・乳酸飲料といった、酵素が持つ酸性のはたらきを利用して製造する食品では、pH測定が欠かせません。酵素の働きはpHに影響され、それぞれの酵素が一定のpHにおいて、最も効率よく発酵が行なわれるからです。この他にも工業や医療など、pHを「はかる」ことが重要な意味をもつ場面は多岐にわたります。pHを「はかる」ことは普段、私たちの生活では見えにくいことですが、暮らしを支える“縁の下の力持ち”だと言えます。


私たちの生活とは決して切り離すことができないpH。そして、分析の世界では絶対不可欠な基本の指標です。お肌の性質から、地上に降り注ぐ雨まで。pHを知ることで、きっと暮らしが見えてきます。

 

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pHをはかる[1] pHって何? https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/530/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/530/#comments Thu, 29 Aug 2013 02:00:38 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=530 酸性とアルカリ性を判別する時に用いられる数値、pH(ピーエッチ)。多くの人にとってpHの認識はこのようなものなのでは? 研究や仕事でpHを「はかる」ことでもなければ、pHがどのような単位なのか、私たちの生活とどのように関わっているのか、なかなか知る機会もありませんよね。水溶液の性質を表すのに大きな役割を果たし、実は私たちの暮らしにも欠かせないpH。今回のはかる学入門は、pHの成り立ちから生活への関わりまでを前後編にわけて紹介します。


pHの基本、酸性とアルカリ性

pHの基本、酸性とアルカリ性

pHは日本語で「水素イオン指数(または水素イオン濃度指数)」と呼ばれ、酸性・アルカリ性の度合いをあらわす単位です。pはパワー(指数)、Hは水素をあらわしており、0から14までの数値で表されます。中間値のpH 7が中性で、低い値を酸性、高い値をアルカリ性と呼びます。pHの考案者はデンマークの科学者・セーレンセン。彼がデンマーク人だったため、デンマーク流に「ペーハー」と読まれることも多いのですが、1957年のJIS(日本工業規格)化を経て現在では「ピーエッチ」に統一されました。一般的にはどちらの読み方でも通じます。

私たちの身近なものでpHをはかってみると、水道水がおよそ6.5、海水は8.0~8.5程度。そのほかにも普段口にする飲み物のほとんどは、中性よりやや酸性になっているものが多いです。夏場の気温が高い時期に、“ペットボトル飲料を飲みかけのまま長時間放置すると細菌が増えて危険”というニュースがありました。水・お茶などは中性に近く、細菌が繁殖しやすいので傷みやすいと言われています。逆にスポーツ飲料はpH 3.0~4.0と酸性で雑菌の繁殖を防ぐ作用があるため、常温でも傷みにくいのです。一方で酸性が強い食べものや飲みものは、歯を溶かしやすいということも知られていますよね。


目で見るpH

目で見るpH

みなさんはpHをはかった経験がありますか? おなじみなのはやはり、リトマス試験紙でしょう。ちなみにリトマスとは苔の名前。試験紙に使われる試薬が、地中海地方のリトマス苔から作られることに由来します。酸性では青色の試験紙が赤く、アルカリ性では赤色の試験紙が青く変わるというリトマス試験紙の実験は、理科嫌いの人でも覚えているはず。このリトマス試験紙を使った測定はあくまでも大雑把な酸性・アルカリ性の判定方法で、pHが5程度より低い酸性か、8程度より高いアルカリ性でしか反応しません。

リトマス試験紙の他にもpHをはかる方法はたくさんあります。“万能試験紙”はpHに応じて14段階で色が変化し、リトマス試験紙よりもはるかに詳しくはかることができます。高校の化学の実験などでも使われる“BTB溶液”は、3段階で性質を示すことが可能。酸性を示すと黄色になり、中性で緑に、アルカリ性を示すと青へと変色する仕組みです。ほかにもpH 10以上でアルカリ性を示すと赤紫色に変色する“フェノールフタレイン溶液”、酸性から中性に変化するにつれて黄色から赤へ変色する“メチルオレンジ”などなど。指示薬ごとに反応する範囲が違うため、さまざまな用途に応じて正確なpHの値を調べることができます。


pHのこと、少し思い出していただけたでしょうか? 自然界では、アジサイの花の例もあります。アジサイの花の色は土壌のpHと関連があり、pH 4.5~5の酸性土壌では青色が強く、酸性が弱くなるにつれて赤みを帯びてきます。リトマス試験紙とは赤・青の関係がちょうど反対の関係になっている、と覚えてくださいね。

後編ではさらに詳しく、pHの成り立ちを見ていきましょう。

 

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はかりをはかる[2] 「はかり」の日本史 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/344/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/344/#comments Thu, 04 Jul 2013 02:00:41 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=344 前編では「はかり」の基準や決まりごとについてお話しました。正しく等しい「はかり」ではからないと、誤差が混乱を生んでしまうこともあるのです。

現在日本では、「はかり」や「はかる」ことの基準としてメートル法を取り入れていますが、もちろんこれは近代以降に取り入れたもの。今回は日本の「はかり」の歴史を遡ってみましょう。


豊臣秀吉は「天下」だけでなく、「はかり」も統一していた

メートル法の採用以前、日本にも独自に決められた「はかり」が存在しました。「はかり」を決めることは重要な国家事業。日本では701年の大宝律令で「はかり」と「単位」が定められました。しかし、実際には厳密に統一が進んでいたわけではなく、たとえば年貢を納める際に使用していた“米を「はかる」”升ひとつとっても、地方や時代によって大きさもマチマチでした。

ようやく一般に通用する升ができたのは、貨幣経済が定着した戦国時代末期のことです。豊臣秀吉で有名な“太閤検地”もちょうどこのころ。秀吉は天下統一のために、それまで基準があいまいだった、ものさしと升の基準を定めました。全国の領地を共通のはかりではかることによって、面積に応じて決められた量の年貢を納めるという仕組みが実現し、盤石な支配体制を築くことができたのです。貨幣という共通単位が一般化したからこそ、「はかり」も統一していくことができたというわけです。


現代の日本の「はかり」

戦国時代に統一されたものさしや升が広まり、日本国内でも徐々に「はかり」の基準が整備されていきました。明治時代になると、西洋化・近代化の流れから、当然のように基準はもっと厳しいものが求められるように。欧州各国の文化が平行に輸入され、日本古来の尺貫法と入り乱れることで、混乱した状態となりました。たとえば、フランスをお手本にした陸軍ではメートル法、イギリスに習った海軍ではヤード・ポンド法(※)が採用されました。兵器や機器の標準がバラバラになったままで、新しい国づくりを進めていたということになります。

日本の「はかり」の基準が正式にメートル法に統一されたのは、昭和41年(1966年)のこと。このとき尺貫法を一方的かつ全面的に禁止してしまったため、伝統的なものづくりの分野、工芸や呉服の世界での標準だった鯨尺(くじらじゃく)や曲尺(まがりじゃく)まで使えなくなるという弊害もありました。単位が変わると、消えてしまう文化もあるのです。

現在の日本では、ヤード・ポンド法はほとんど見られなくなりましたが、一部の分野において尺貫法が用いられている場合があります。お米を炊くときは「180g」よりも「1合」といわれるほうが、なんとなくしっくりきますよね。姿を消してしまった単位もある一方で、日本古来のものと新しいものをうまく組み合わせて使っていくというのは、日本人独特の「はかり」方なのかもしれません。


グローバリゼーションが進む現在、正しい「はかり」や単位の統一が合理的であることは言うまでもありません。しかし、公的にはメートル法への移行を認めているものの、アメリカとイギリスでは現在もヤード・ポンド法が採用されています。1999年、アメリカ航空宇宙局(NASA)が、調査衛星を火星軌道にのせる際、メートルとヤードの換算ミスで火星探査プロジェクトとともに1億6,000万ドル以上の予算が一瞬にして消えてしまうなんてことも、ありましたね。

「はかり」は正しいことに意味があります。その正しさを信頼し、活用することができるからこそ、わたしたちは混乱することなく、日々暮らしていけるといってもいいでしょう。「はかる場」では、身の回りのさまざまな「はかる」を紹介していきます。そこには「はかり」の存在が欠かせません。ぜひ、いろんな「はかり」に注目してみてください。

※ヤード・ポンド法とは、アメリカ合衆国を中心に英語圏で使われている、長さをヤード、質量をポンドとした単位系

 

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はかりをはかる[1] 「はかり」の起こりと決まり https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/304/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/304/#comments Mon, 01 Jul 2013 02:00:26 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=304 熟練の寿司職人ともなると、寿司一貫のシャリの重さを、グラム単位ですべて同じ重さに握ることができるそうです。この場合の「はかる」技術は、長年の修行の賜物であり、おいそれと一般人にマネできるものではありませんね。

お寿司屋さんでなくとも、私たちの生活は何かを「はかる」シーンであふれています。それは重さかもしれませんし、長さかもしれません。そこで私たちは「はかり」を使います。職人技のような特殊なケースもあり得ますが、「はかり」はモノを正しく「はかる」ためになくてはならないものです。

今回のはかる学入門は、「はかり」について。


「はかる」ものをどう「はかる」?

国際キログラム原器(出典:BIPM‐international prototype of the kilogram)

前述したとおり、「はかる」ためには「はかり」が必要です。しかし、ちょっとややこしいですが、「はかり」を「はかる」ためにもその基準となる「はかり」が必要です。「はかり」を「はかる」ための基準、つまり「はかり」の大元となった考え方のひとつに、「単位のキホン[2]」でとりあげた“メートル法”があります。

メートル法の大もとは長い間、フランス生まれの“メートル原器”がつとめていました。白金90%、イリジウム10%の合金でできたメートル原器は、パリ郊外のルイ14世の宮殿の地下金庫に厳重に保管されていました。しかし、金庫や警備で厳重に保管していても、金属でできたメートル原器は温度などの条件で伸び縮みします。そのためより正確な定義ができた現在、メートル原器はお役御免となっています。

さて、現在のメートルの定義は、光の速度を基準にしたもので、1メートルは「1秒の1/299,792,458の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ」とされています。聞いてなかなかイメージできませんが、“どんな条件下でも変化しない、普遍的なもの”とされる光の速さを基準にしたことで、「1メートルは1メートル」と言い切れる、厳密な定義がされたということです。

一方、最後の原器として120年以上にわたり“重さ”(正しくは質量)の基準であった国際キログラム原器。メートル原器と同じく、白金・イリジウム製で、直径約39ミリ、高さ39ミリの円柱形です。本来質量は一定のはずですが、洗浄により1億分の6程度軽くなってしまったことや、科学の進歩により高精度な計測が必要になってきた背景もあり、その定義の危うさが指摘されました。そして2011年、国際度量衡総会にて廃止が決定。今後はメートルと同じように、10年ほどかけて新定義を策定し、移行するということです。私たちが日常的に使っている重さの単位について、基準が今(2013年7月現在)、空白だというのは不思議な事実ですよね。


はかりの決まり

たとえば家でケーキを焼く時に、レシピ通りのはずなのにうまくいかないことがあります。もしかするとその原因は、お菓子の本で使っている「はかり」と、あなたの家の「はかり」に誤差があるせいかも。自家製ケーキであれば、コツをつかめば済む話かもしれませんが、それが商売や、公の取引や証明に関わってくると話は別です。「はかり」のほんの小さなばらつきが、大きな混乱を招くこともあるからです。

取引や証明のための計量には、検定に合格して誤差が小さいことを示す「検定証印」が表示された計量器を用いなければならないことが、「計量法」という法律で定められています。また品質管理の方法が基準に適合しているメーカーの計量器には「基準適合証印」が表示されていて、これも取引や証明に用いることができます。

これらの検定をおこなう機関や基準検定証印のある計量器を製造するメーカーは、経済産業省が指定することになっており、それぞれ「指定検定機関」「指定製造事業者」と呼ばれています。「検定制度」は、重さをはかる「はかり」だけでなく、タクシーのメーターや、自動車の車検のために整備工場で使う計量器なども対象になっています。たとえば大気汚染防止のための工業排ガス監視用「ガス濃度計」なども対象になっています。


いかがでしたか? 体重計や温度計、ちょっと見回せば身の回りにたくさんある「はかり」の成り立ちと決まり。「はかり」により決められることの多さや重要さを考えると、 “正しさ”の追及にも納得がいきますね。
後編では日本の「はかり」に目を向けてみたいと思います。

 

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単位のキホン[2] 7つの単位が最初の分析機器 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/180/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/180/#comments Wed, 19 Jun 2013 04:10:11 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=180 「はかる」ことの基本となる、単位。前回はそのはじまりをたどりました。暮らしを形作る「時間」をはかることから生まれた12進法はそのまま時間をつかさどり、現代を生きる私たちの生活にも受け継がれています。

一方で、一般的なモノのはかり方において採用されているのはほとんどが“10進法”。今回は10進法に起源を成す、現在の私たちの暮らしを支える単位の基礎となる、7つの基本の単位についてお話しします。


世界基準を定めた“メートル法”

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1年=12か月、1日=24時間ではかる時間、円を360度と定義した角度。今ではこの二つの単位でのみ12進法を基準としていますが、現在使われている単位のほとんどはフランス革命のときに誕生した、10進法の“メートル法”を世界基準としています。世界共通で使える統一の単位制度の確立をめざし、制定されました。ちなみにこのとき、時間の10進法も提案されましたが、評判が悪く定着しなかったという事実も残っています。

メートル法の基本は「子午線」と「水」です。長さの基本となる1メートルは、地球の北極点から赤道までの子午線弧長の1000万分の1の長さで定義されました。重さの基本、1グラムは1センチ立方で摂氏4度の水の重さ。温度に関しても同様に、摂氏1度の目盛りは、水の沸点と融点を100等分したものと定められています。「メートル」の名は、ギリシア語のメトロンやラテン語のメトラムが起源で、「はかり」や「測定」を意味します。グラムはラテン語のグランマで、「小さい重さ」という意味があります。


基本の単位はたったの7つ

国際キログラム原器

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メートル法が基準となって以来、技術や産業が発展するにつれ次々に新たな単位が生まれてきましたが、その分大きな混乱も生じました。そこで1960年に「国際単位系」(略称SI)が制定されました。その基準となったものは7つ。長さ(メートル)・質量(グラム)・時間(秒)・電流(アンペア)・熱力学温度(ケルビン)・物質量(モル)・光度(カンデラ)です。

あまり耳馴染みのないものもあるかもしれませんが、この7つの基本単位で、ほかのさまざまな単位を定義づけすることができます。たとえはラジオの周波数はヘルツという単位であらわされますが、ヘルツは時間を用いて説明できますし、私たちの食事にかかわるカロリー(熱量・ジュール)も、熱力学温度を基準にはかることができます。

また、単位にはその大きさをあらわす接頭語が存在します。大きなものから小さなものまで20種類ほど定められており、たとえばインターネットをする人なら「ギガ」「テラ」という言葉に聞き覚えがあるかと思います。これらは「巨人」「怪物」といった大きいモノをあらわすギリシア語が起源です。ニュースなどで耳にすることもあるでしょう、「ナノ」「ピコ」はラテン語が起源で、それぞれ「小人」「キツツキ」を意味し、小さな単位の接頭語となっています。

分析の世界では「ppm」「ppb」という言葉がよく使われます。どちらもパーセントの変形で、「セント」が100分の1をあらわし、「センチュリー」が100年のことであるように、「パーセント」は100分の1。「ppm」の「pm」は「パーミリオン」、すなわち100万分の1、「ppb」の「pb」は「パービリオン」、すなわち10億分の1を意味します。いずれも最初の「p」はパーツ(部分)を意味するので、物質の微妙な濃度などを表現するときなどに、よく使われています。これらは単位ではありませんが、それぞれ大きさや長さ、重さなどを持つ分析対象をはかる際の物差しになります。


単位が最初の分析機器

単位を生み出し、その基準を定めたことによって、私たちの生活はとても便利になりました。スーパーで牛肉を買う時は、グラム数が表記されているので、それを目安に買い物をすることができますし、道路を自動車で走る時は、制限速度が決められていることで、一定の秩序を保って通行することができるのです。

私たちはさまざまな機器を用いてあらゆるものをはかってきましたが、もしかすると単位が最初の分析機器なのかもしれません。これから「はかる場」で紹介する記事でも、さまざまな単位が登場します。そのひとつひとつに意味があり、それらを理解することで、日々の生活がより便利に、楽しくなるといいですね。単位のキホン、前後編でお送りしました。

 

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単位のキホン[1] 最初にはかった単位とは https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/171/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/171/#comments Wed, 19 Jun 2013 04:00:14 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=171 kihon1_sub_1

2013年5月23日、冒険家の三浦雄一郎さんが、世界最高齢の80歳でエベレスト登頂に成功しました。輝かしいニュースに日本中が湧いたのは、記憶に新しいところです。

エベレストといえば、標高8848メートル、山頂は気圧が地上の1/3(およそ0.3気圧)、気温は一番暖かい時期であってもマイナス17度ほどと、世界でもっとも過酷な環境の1つとして知られています。今でこそ標高、気圧、気温などを事前に知ることができ、さまざまな情報があるからこそ、今回の三浦さんのように万全の対策を講じたアタックが可能になりました。しかし、このような情報がなかった時代は、今以上に困難なチャレンジであったことは想像に難くありません。

エベレストのような過酷な環境だけでなく、単位は私たちの日々の暮らしに密接にかかわっています。天気予報や乗換案内、外出時に必ず確認する情報も時間や距離といった単位がベースにありますし、外出先で買い物をすれば、重さで決められたモノに対して対価を支払うこともあるでしょう。単位とは、すべての“はかる”ことの基本であり、私たちの生活基盤でもあります。

ここでは、普段何気なく使っている単位のキホンに迫ります。まずは、単位の始まりをひも解いていきましょう。


最初の単位は“時間”だった?

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私たちは、日々の生活で多種多様な単位を用いて暮らしています。長さや温度だけでなく、重さ、時間、密度など、ありとあらゆるものが基準として単位を持っています。

こうした単位がいつごろ誕生して、どのように広まっていったのか。その起源にはさまざまな説があります。たとえば洋の東西を問わず、長さの単位は、“一歩の歩幅”や“両手を広げた長さ”など、人間のからだを基準としていました。当然個人差はありますし、民族によっては個体差もあるでしょう。狩猟の対象だった動物たちも、小さな単位の代わりを果たしていたかもしれませんね。

しかし、最初にうまれた単位は“時間”であったという説があります。古来より、人間にとって時をはかることが、生活とは切り離すことができないものだったからです。


今も残る“12進法”というはかり方

古代エジプトで天文学が発達したのは、農業における種まきや収穫のタイミングを決めるためでもありました。太陽の動きから1年365日の長さが知られていましたし、月の満ち欠けによって1カ月の長さが決められました。現在使われている単位のほとんどが、10進法を採用しているのにも関わらず、時間だけが12進法を基準にしているのは、1年の長さが12カ月であることに由来しています。このことひとつとっても、時間という単位がいかに人々にとって重要なものであったことがわかるでしょう。

古代中国でも円周を12等分し、時間と同様に十二支を割り当てていました。日本でも「草木も眠る丑三つ時」という言葉がありますが、このことからも日本での時間の概念が古くから、12進法だったことがわかります。

時間のほかにもう1つ12進法を用いている単位が、“角度”です。角度の起源は古代バビロニア。太陽が星の間を縫って1周する時間が365日であることに気がついたバビロニア人が、天空を365等分しようとしたことに始まります。365は半端なので360にしたということです。このエピソードからも、単位の起源を確実にするものとはいえませんが、時間という単位が、単位という概念の初期からあったことがうかがえますね。


時は金なり。少し長くなってきたので、単位のキホンも前編はここまでにします。後編では、膨大な数が存在する単位の基礎となる、7つの単位を紹介します。

 

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