はかる場 » はかりをはかる http://www.jp.horiba.com/hakaruba はかる場」とは、「はかる」ことで「見える」ようになる世の中のアレコレを紹介するメディアです。 Thu, 19 Nov 2020 04:47:00 +0000 ja hourly 1 http://wordpress.org/?v=3.5.1 はかりをはかる[2] 「はかり」の日本史 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/344/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/344/#comments Thu, 04 Jul 2013 02:00:41 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=344 前編では「はかり」の基準や決まりごとについてお話しました。正しく等しい「はかり」ではからないと、誤差が混乱を生んでしまうこともあるのです。

現在日本では、「はかり」や「はかる」ことの基準としてメートル法を取り入れていますが、もちろんこれは近代以降に取り入れたもの。今回は日本の「はかり」の歴史を遡ってみましょう。


豊臣秀吉は「天下」だけでなく、「はかり」も統一していた

メートル法の採用以前、日本にも独自に決められた「はかり」が存在しました。「はかり」を決めることは重要な国家事業。日本では701年の大宝律令で「はかり」と「単位」が定められました。しかし、実際には厳密に統一が進んでいたわけではなく、たとえば年貢を納める際に使用していた“米を「はかる」”升ひとつとっても、地方や時代によって大きさもマチマチでした。

ようやく一般に通用する升ができたのは、貨幣経済が定着した戦国時代末期のことです。豊臣秀吉で有名な“太閤検地”もちょうどこのころ。秀吉は天下統一のために、それまで基準があいまいだった、ものさしと升の基準を定めました。全国の領地を共通のはかりではかることによって、面積に応じて決められた量の年貢を納めるという仕組みが実現し、盤石な支配体制を築くことができたのです。貨幣という共通単位が一般化したからこそ、「はかり」も統一していくことができたというわけです。


現代の日本の「はかり」

戦国時代に統一されたものさしや升が広まり、日本国内でも徐々に「はかり」の基準が整備されていきました。明治時代になると、西洋化・近代化の流れから、当然のように基準はもっと厳しいものが求められるように。欧州各国の文化が平行に輸入され、日本古来の尺貫法と入り乱れることで、混乱した状態となりました。たとえば、フランスをお手本にした陸軍ではメートル法、イギリスに習った海軍ではヤード・ポンド法(※)が採用されました。兵器や機器の標準がバラバラになったままで、新しい国づくりを進めていたということになります。

日本の「はかり」の基準が正式にメートル法に統一されたのは、昭和41年(1966年)のこと。このとき尺貫法を一方的かつ全面的に禁止してしまったため、伝統的なものづくりの分野、工芸や呉服の世界での標準だった鯨尺(くじらじゃく)や曲尺(まがりじゃく)まで使えなくなるという弊害もありました。単位が変わると、消えてしまう文化もあるのです。

現在の日本では、ヤード・ポンド法はほとんど見られなくなりましたが、一部の分野において尺貫法が用いられている場合があります。お米を炊くときは「180g」よりも「1合」といわれるほうが、なんとなくしっくりきますよね。姿を消してしまった単位もある一方で、日本古来のものと新しいものをうまく組み合わせて使っていくというのは、日本人独特の「はかり」方なのかもしれません。


グローバリゼーションが進む現在、正しい「はかり」や単位の統一が合理的であることは言うまでもありません。しかし、公的にはメートル法への移行を認めているものの、アメリカとイギリスでは現在もヤード・ポンド法が採用されています。1999年、アメリカ航空宇宙局(NASA)が、調査衛星を火星軌道にのせる際、メートルとヤードの換算ミスで火星探査プロジェクトとともに1億6,000万ドル以上の予算が一瞬にして消えてしまうなんてことも、ありましたね。

「はかり」は正しいことに意味があります。その正しさを信頼し、活用することができるからこそ、わたしたちは混乱することなく、日々暮らしていけるといってもいいでしょう。「はかる場」では、身の回りのさまざまな「はかる」を紹介していきます。そこには「はかり」の存在が欠かせません。ぜひ、いろんな「はかり」に注目してみてください。

※ヤード・ポンド法とは、アメリカ合衆国を中心に英語圏で使われている、長さをヤード、質量をポンドとした単位系

 

>>前編はコチラ

 

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はかりをはかる[1] 「はかり」の起こりと決まり https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/304/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/304/#comments Mon, 01 Jul 2013 02:00:26 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=304 熟練の寿司職人ともなると、寿司一貫のシャリの重さを、グラム単位ですべて同じ重さに握ることができるそうです。この場合の「はかる」技術は、長年の修行の賜物であり、おいそれと一般人にマネできるものではありませんね。

お寿司屋さんでなくとも、私たちの生活は何かを「はかる」シーンであふれています。それは重さかもしれませんし、長さかもしれません。そこで私たちは「はかり」を使います。職人技のような特殊なケースもあり得ますが、「はかり」はモノを正しく「はかる」ためになくてはならないものです。

今回のはかる学入門は、「はかり」について。


「はかる」ものをどう「はかる」?

国際キログラム原器(出典:BIPM‐international prototype of the kilogram)

前述したとおり、「はかる」ためには「はかり」が必要です。しかし、ちょっとややこしいですが、「はかり」を「はかる」ためにもその基準となる「はかり」が必要です。「はかり」を「はかる」ための基準、つまり「はかり」の大元となった考え方のひとつに、「単位のキホン[2]」でとりあげた“メートル法”があります。

メートル法の大もとは長い間、フランス生まれの“メートル原器”がつとめていました。白金90%、イリジウム10%の合金でできたメートル原器は、パリ郊外のルイ14世の宮殿の地下金庫に厳重に保管されていました。しかし、金庫や警備で厳重に保管していても、金属でできたメートル原器は温度などの条件で伸び縮みします。そのためより正確な定義ができた現在、メートル原器はお役御免となっています。

さて、現在のメートルの定義は、光の速度を基準にしたもので、1メートルは「1秒の1/299,792,458の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ」とされています。聞いてなかなかイメージできませんが、“どんな条件下でも変化しない、普遍的なもの”とされる光の速さを基準にしたことで、「1メートルは1メートル」と言い切れる、厳密な定義がされたということです。

一方、最後の原器として120年以上にわたり“重さ”(正しくは質量)の基準であった国際キログラム原器。メートル原器と同じく、白金・イリジウム製で、直径約39ミリ、高さ39ミリの円柱形です。本来質量は一定のはずですが、洗浄により1億分の6程度軽くなってしまったことや、科学の進歩により高精度な計測が必要になってきた背景もあり、その定義の危うさが指摘されました。そして2011年、国際度量衡総会にて廃止が決定。今後はメートルと同じように、10年ほどかけて新定義を策定し、移行するということです。私たちが日常的に使っている重さの単位について、基準が今(2013年7月現在)、空白だというのは不思議な事実ですよね。


はかりの決まり

たとえば家でケーキを焼く時に、レシピ通りのはずなのにうまくいかないことがあります。もしかするとその原因は、お菓子の本で使っている「はかり」と、あなたの家の「はかり」に誤差があるせいかも。自家製ケーキであれば、コツをつかめば済む話かもしれませんが、それが商売や、公の取引や証明に関わってくると話は別です。「はかり」のほんの小さなばらつきが、大きな混乱を招くこともあるからです。

取引や証明のための計量には、検定に合格して誤差が小さいことを示す「検定証印」が表示された計量器を用いなければならないことが、「計量法」という法律で定められています。また品質管理の方法が基準に適合しているメーカーの計量器には「基準適合証印」が表示されていて、これも取引や証明に用いることができます。

これらの検定をおこなう機関や基準検定証印のある計量器を製造するメーカーは、経済産業省が指定することになっており、それぞれ「指定検定機関」「指定製造事業者」と呼ばれています。「検定制度」は、重さをはかる「はかり」だけでなく、タクシーのメーターや、自動車の車検のために整備工場で使う計量器なども対象になっています。たとえば大気汚染防止のための工業排ガス監視用「ガス濃度計」なども対象になっています。


いかがでしたか? 体重計や温度計、ちょっと見回せば身の回りにたくさんある「はかり」の成り立ちと決まり。「はかり」により決められることの多さや重要さを考えると、 “正しさ”の追及にも納得がいきますね。
後編では日本の「はかり」に目を向けてみたいと思います。

 

>>後編はコチラ

 

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