main

TOP○○をはかるピカピカをはかる > ピカピカをはかる[3] 車のピカピカを「守るためにはかる」

ピカピカをはかる[3]
  車のピカピカを「守るためにはかる」

「ピカピカをはかる」現場の声を聞きにうかがったのは、神戸合成さん。自動車向けの化学用品を製造、販売されています。連載初回に「ピカピカをはかる」現場の例で挙げた、自動車のボディコーティング用品で知られている企業です。

今回インタビューを受けていただいた代表取締役社長の宮岡督修さんいわく、「普通自動車全般でいえば3~4割程度じゃないでしょうか」という、ボディコーティングの普及率。身近なようでまだまだ知られていないことがたくさんありそうです。ボディコーティングに関する基本的なお話から伺いました。ボディコーティングで「はかる」がどんな役割を果たしているのでしょうか? 「ピカピカをはかる」現場レポートです。


愛車のメンテナンスは今、ワックスからボディガラスコーティングへ

洗車のあとは「ワックス」、昭和生まれの方にとってはそんなイメージが根強いかもしれません。「ボディコーティング」は現在、車のボディをケアする手段としてワックスに代わる存在として採り入れられています。

はかる場: 車の手入れといえばワックスの印象が強かったのですが。

宮岡さん: 私たち神戸合成もワックスからスタートしてる会社なんです。昭和の家庭の週末では、まだまだ高価で大切なマイカーを家の前でしっかり洗車して、最後にワックスを塗る。そんな光景をたくさん目にしました。しかしワックスは、一回雨にあたるとまだら模様になってしまったり、成分のひとつカルナバロウの臭いで手が臭くなったりと、問題も多かった。固形からエアゾールへ、カルナバロウからシリコンやフッ素系のコーティング剤へと、形や成分を変えて提供されてはいますが、現在の主力はボディーガラスコーティングになっています。

はかる場: ボディガラスコーティング。

宮岡さん: はい。コーティング剤に使用されるロウやシリコン、フッ素などの有機物は紫外線や酸化の影響を受けて劣化しますが、ガラスはそれらの影響をほとんど受けないんです。ボディガラスコーティングをボディに塗りつけると、薄いナノ単位のガラスの膜を形成します。車の塗装は有機系なので劣化するものですが、そこに無機のガラスコーティングを乗せて、光沢や撥水性をできるだけ維持していくわけです。主に新車購入時に行われることが多いのですが、たとえば食材にかけるラップフィルムをイメージしてください。何かのはずみで汚れがついてしまってもラップフィルムにつくだけで、食品そのものは無事。剥がしてしまえば新品同様です。ありえないことですが、もし汚れた状態でコーティングすれば、その汚れた状態が保持されます。ボディガラスコーティングは、新車の塗装を守ることが第一なんです。

ワックスはボディに薄い油の膜が乗ってるだけ。雨や接触で油が落ちれば、地肌(塗装面)が出てしまい、車自体が汚れたり劣化する恐れがあります。対するボディガラスコーティングはポリッシャーを使わない限り剥がれることはありません。ガラスの表面に汚れがついても、窓などと同じように拭き取れば元の状態に戻せるわけです。だから新車の時点でオススメするんですね。


水滴を弾くか馴染ませるか、あなたはどっち派? 撥水性と親水性の違い

街を走るピカピカボディの車。車好きでなくとも、目を奪われますよね。よくテレビCMなどで見かけるピカピカの車といえば、雨や水ハネをもろともせず、水滴を飛ばしている印象があります。

productはかる場: お話をうかがっていると、ボディガラスコーティングは「貼る」という印象ですね。

宮岡さん: ボディガラスコーティングに使うコーティング剤は液剤です。コーティング剤を塗る際に、空気中の水分と化学反応を起こして硬化して、ガラスに変わっていくんです。ですから塗ってすぐは性能が発揮されず、時間が経ち、2週間ほどで完全に硬化してガラスの皮膜ができあがります。

はかる場: 神戸合成で製造されているのはコーティング剤ですよね?

宮岡さん: そうです。ほとんどのコーティング剤は”1液”(本剤)”2液”(添加剤)と呼ばれる2種類の液剤を使用直前に混ぜあわせて使います。それぞれガラスコーティングの反応を起こす主剤と硬化剤のような役割を果たしますが、決められた割合で調合し、硬化させながら塗ります。私どもの製品の特徴は調合の手間を省き、1液と2液があらかじめ混ぜ合わされており、使用する際に調合する必要のない状態のものを販売していまして、お客様にも喜んでいただいてますね。

はかる場: 性能面での特徴はありますか?

宮岡さん: 無機質であるガラスは、水を弾きません。

はかる場: え? ワックスにしてもボディコーティングにしても、玉のような水滴が弾かれるイメージがありました。

宮岡さん: そうですよね。無機質のガラスには親水性(水との相性が良く、混ざりやすい)の物質が含まれており、きれいにふき取った状態で水を落とすと、ベタっと潰れて弾かないんです。このようなガラスの素材そのままの仕様でのコーティングは、親水性コーティングと呼ばれています。私どもは当初、親水性のコーティング剤を売り出しました。一見水弾きがなく手入れされてないように映りますが、油や汚れがついていても雨が降れば全部洗い流してくれる。簡単に水洗いで汚れが取れるんです。でも見た目は申し上げた通り、水がベタっと残るので、それがあまり受け入れられませんでした。私は無精な人間なので個人的には、雨で汚れが落ちたり水洗いで済む親水性が好きですし、好まれるお客様もいらっしゃいますが。

それで今、うちでは”ハイブリッド”と呼んでますが、無機質のガラスコーティング剤に有機のシリコン系の成分を結合させたコーティング剤を販売しています。車のボディに接する面には本来の塗装を守るような親水のガラスコーティングがされ、そのうえに撥水性の膜ができて水滴を玉のように弾く形を実現しています。ただしシリコン系の成分でつくる撥水の部分は有機質なので、劣化があります。やがて撥水性が落ち、最終的にはなくなってしまいますが、親水性の膜がそのまま残るのでボディ自体の劣化を防ぐことは変わりません。

はかる場: ということは、市場に出回っているのはほとんどハイブリッドのタイプですか?

宮岡さん: ワックスやポリマーを含めて考えると、撥水タイプか親水タイプのガラスコーティング、このどちらかが主流です。割合はおそらく7:3程度でハイブリッドタイプが多いのでは。好みの問題でもありますが、新車購入時ということもあり、カーディーラーさんの薦めで決められる方も多いでしょうね。水弾きに関してですが、”水滴の接触角”(※)が大きければ大きいほど、水滴が玉のようになってボディを転がります。普通の新車の接触角がだいたい80度くらい。私どものハイブリッドのガラスコーティング剤を初期に塗っていただくと、およそ102~103度くらいまで上がります。でもそれが何年ももつわけではなくて、いずれ撥水の部分が劣化して80度に落ちていって、それ以上落ちていくと最終的には親水になる、このような仕組みです。

 

※液体が接触する物体の表面と接触時にできる角度のこと。接触角が大きくなるほど、液体は物体から弾かれる。


五年保証を実現する、「ピカピカをはかる」技術

大切な車を長くきれいに使いたいと思うことは、すべてのオーナーさんに共通する思いでしょう。だからこそ、製品やサービスの品質が問われるわけです。神戸合成さんでは、自信の品質を「五年保証」というサービスで提供されています。

はかる場: 品質のお話を伺います。神戸合成ではカーメーカーと共同で「五年保証」がついたサービスを実施されてるそうですね。

宮岡さん: メーカーさんと協力して「光沢五年保証」という制度をカーディーラーさんに導入していただきまして、私どものコーティング剤が使われています。コーティングを実施されたお客様に、車検や整備のように来店してもらい、一年後にディーラーさんでコーティングの保存状態を点検します。その時に何を基準にするかというと「光沢」なんですね。

はかる場: HORIBAのグロスチェッカIGを導入いただいてます。

宮岡さん: はい。コーティングを実施してから一年の点検ごとにはかって確認します。万が一光沢が落ちていれば再施工させていただくことになるのですが、光沢が落ちていなくてもメンテナンスのコーティングと、クリーニングはするんですね。先ほどお話しした通り、ハイブリッドの撥水の部分は有機質ですので劣化があり、五年維持することはできません。点検の際に有機の部分を再度塗り、撥水性を少なくとも最初の実施時程度にまで戻すんです。ついでにお話しすると、このようなメンテナンスのクリーニングをする際に使用するクリーナーを、コーティングを利用されたお客様にお渡ししています。三か月に一回塗る量で一年分。こちらを利用されていれば、点検にいらっしゃる段階でもかなり撥水性が保たれているでしょう。

もうひとつ、年に一度の点検とはいえ、ご自宅でしっかり洗車されて臨まれる方ばかりかというと、当然そんなことはありません。美容院や理髪店に行く時のように、ボサボサのままシャンプーも期待されて、ということありますよね(笑)。このようにしっかりと整えた状態ではかるようにしています。


たゆまぬ品質保証への努力、「はかる」がお手伝いできること

ボディコーティングにおける「ピカピカをはかる」ことは、保証サービスの基準値をはかるという、重要な役割を担っています。もちろんそれだけではありません。製品として世に出るまでの長い長い工程でも「ピカピカをはかる」ことの意味がありました。

はかる場: 光沢をはかる、「ピカピカ」をはかることが御社のサービスで果たしている役割はどんなものでしょうか?

宮岡さん: 光沢保証をしている以上、私どもの製品を塗ったことによって車本来の光沢が損なわれるようなことがあってはなりません。コーティングを施していない90程度の光沢度をもつ車が、製品を塗ってどの程度上がるのか、他社さんの製品を塗った場合はどう変化するのか、光沢をはかることは日々の研究開発の中でひとつの判断基準になっています。光沢だけではなく撥水にとっても、紫外線は大敵ですのでUVテストなんかも行います。それぞれ劣化する要因をあえて与えて促進し、耐久性をテストするんです。スペックがOKになれば量産できるのか、量産した製品の品質は保たれているのか、ここまでしてやっと出荷されるんです。今回の五年保証についても数多くの中古車などでテストしまして、その際にもHORIBAさんのグロスチェッカIGを使用しました。その結果として、ディーラーさんでの導入に繋がりましたね。現在しっかり数値化して保証の基準にできるのが光沢。その意味では、「ピカピカをはかる」ことは欠かせません。

はかる場: 品質保証のお手伝いができているのですね。

宮岡さん: もうひとつ、味や匂い、五感で判断するものはいくら言葉で伝えても理解し合えないことがあります。経験や感性でバラつきがある価値観を客観的に、数値化していくことは非常に説得力があります。逆に数値がないと感情的になられたり、ましてやこちらはサービスですので何かしらの対応は必ずさせていただくんですね。ともすれば、クレームをつければサービスしてもらえると、誤った認識を持たれかねない。そういったことの歯止めにもつながっています。

はかる場: お客様の大切な車の「ピカピカ」を守る。コーティング剤は大きな使命を背負っています。時代のニーズとともに進化されてきたと思いますが、今後未来へ向けてどのような構想をお持ちですか?

宮岡さん: 「ピカピカをはかる」の取材で申し訳ないのですが(笑)、今現在、撥水での品質保証ができていないんですね。現在の品質ですと、80度の接触角を100度前後に上げる程度。これを150度くらいで仕上げられるようになると、水滴が文字通り玉のように転がり、接触面にほとんど残らないはずなんです。完璧に水滴が残らなければ、砂埃が飛んできてもエアーで飛ばせるレベルですし、水洗いも可能ですね。その時にはもっともっと多くの人に使っていただけるのではと、考えています。


インタビュー後、取材班は神戸合成さんの研究室を見学させていただきました。最新鋭の研究機材がミクロの世界で品質を管理する。静かな空間ながら、神戸合成さんの熱意に圧倒されました。

取材の最後に、舞台をカーディーラーへ移します。実際にどのように計測されているのか、また現場のスタッフさんからもお話をうかがいました。


実際に車のピカピカをはかってみた

宮岡さんのお話の中に出てきた「五年保証」。うかがったカーディーラーでも実施されています。点検時は最も汚れがつきやすい、ボンネットを三カ所はかります。

こちらのカーディーラーはボディコーティングを実施されて8年目。なかなか日々のメンテナンスに手が回らないお客様も多いようで、新車購入時に薦めると、反応は上々なようす。HORIBAのグロスチェッカIGは保証サービスの点検用に導入されてますが、「ピカピカをはかる」数値にはやはり、説得力を期待されています。

「そこなんですよね。私たちも自信を持ってサービスを提供してますが、1年、2年、3年と経つと、何か数値に出ないとわからないところがあるんですよ。しっかり洗車して、補強しても、最後が目視に頼らざるを得ない。でも、保証を薦める最初の段階で、一年ごとにこういった機器を使ってはかりますとお話しすると、お客様もすごく安心されます。当然保証って点検どうするの?という疑問は持たれると思うんですよ。その意味で感触はすごく良いです」

カーディーラーではディスプレイされる車や、店内の「ピカピカ」も求められます。グロスチェッカIGは五年保証サービスの点検用に導入されてますが「せっかくなのでほかの用途にも使わせてもらいたい。導入の元も取れますし(笑)」と、店長さん。


「ピカピカ」は見た目の印象であり感覚的なものですが数値で見られるようになれば、今回のように保証の基準値になったりと、より重要な役割を果たせます。街で見かけるピカピカはきっとあなたの気持ちを華やかにしてくれますが、その裏ではひょっとしたら日夜ピカピカをはかり、維持する努力が隠されているかもしれません。

 

神戸合成株式会社

 

ピカピカをはかる

>>ピカピカをはかる[1] 暮らしの中のピカピカをはかる
>>ピカピカをはかる[2] 光沢をはかる仕組み

Page Top