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PM2.5をはかる[1]
  PM2.5、いつどこからやってきた?

ニュースの天気予報を眺めていたら、なんだか予報の種類が増えた気がします。明日の天気、気温、湿度、風向き、時期によっては風向きや不快指数……。天気予報も時代や環境に適応しているんですよね。

この春、そんな天気予報のラインナップでひときわ異彩を放ったのが「PM2.5分布予測」。
近年注目が高まった背景には「中国の深刻な大気汚染の影響が、黄砂とともに日本にまで及んできた」という報道もありましたが、日本国内でもそれ以前から発生が確認されており、確かな原因はわかっていません。
ではこのPM2.5とはいったい何なのでしょうか。じつは昨日今日つくられた言葉じゃないんです。
そもそもどういった数値なのか、そしてどのように「はかる」のか。まずはあらためてその意味と成り立ちをおさらいし、その正体に迫ってみましょう。


あらためて「PM2.5」とは

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「PM2.5」は、大気中に浮遊する微粒子のうち、粒子径(直径)がおよそ2.5μm(マイクロメートル、1/100万メートル)以下のもの(※)。2.5μmとは髪の毛の1/30ほどの大きさと言われています。PMとはparticulate matterの略。

大気中に浮遊する微粒子はぜんそくの原因のひとつともいわれ、従来から問題視されてきました。PM2.5の研究は米国ではじまり、1997年に規制がもうけられています。現在米国ではPM2.5とあわせて、1997年以前から規制のあった「PM10」とよばれる、粒子径10μm以下の粒子の2種類について監視が行われています。

米国でPM2.5が規制化されたきっかけは、大気中の微粒子濃度と死亡者数との相関が調査されたとき、PM2.5濃度がPM10濃度よりも死亡者数と高い相関をしめすと報告されたことです。これは、より小さな微粒子のほうが健康におよぼす影響が大きいということを表します。より小さな粒子のほうが大きな粒子よりも気管を通過しやすく、肺の奥深いところまで届くためだといわれています。またPM2.5の大半が、排ガスなどに由来する有害ガスが凝集してできた微粒子であるため、大きな粒子よりも有害成分を多く含んでいるからだともいわれています。発生源としては、「ボイラー、焼却炉などのばい煙を発生する施設、コークス炉、鉱物の堆積場等の粉じんを発生する施設、自動車、船舶、航空機等、人為起源のもの、さらには、土壌、海洋、火山等の自然起源のもの(環境省「微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報」より)」もあるといわれています。


PM2.5をはかる

日本では、1975年から「SPM」(suspended particulate matter)とよばれる粒子径10μm以下の微粒子について環境基準が設定され、大気中のSPM濃度が監視されています。SPMは、米国で規制されているPM10とはその内容が少し異なりますが、規制の目的は同じものと考えてよいでしょう。

米国でPM10に続いてPM2.5の規制が始まったのと同様、日本でもSPMに続いてPM2.5の規制が始まりました。
ひとつのきっかけになったのは、1999年和解にいたった川崎市南部の道路公害をめぐる「川崎公害訴訟」。国と住民との和解案に「大気中のSPMの調査とともに、PM2.5の測定手法を調査すること」という条項がもりこまれました。これを境に、PM2.5の測定手法や健康に対する影響についての調査が本格的にスタート。採取装置や自動測定機、測定分析手法などの技術の進展により、小さな粒子をはかれるようになりました。また、大気中の濃度の測定、粒子を捕集して分析しPM2.5にはどんな物質が含まれているのかまでも調べられるようになりました。


はかる技術が果たす役割とは

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私たちに届けられる天気予報の「PM2.5分布予測」は、大気中の濃度が「多い」「少ない」という大雑把な情報ですが、国から発せられる注意喚起は明確な数値に基づいて行われています。数値は環境省の大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君)でも見ることができます。ここにも当然、はかる技術が役立っています。しかし、たとえば基準値を超える数値の日は外出を我慢する、それを知らせるためだけの技術だとすると、それはちょっと悲しいですよね。

じつは、「PM2.5をはかる」ことは、さまざまな有害物質の発生を減らすことに役立っているんです。SPM(PM10)やPM2.5を分析することで、その物質の大きな発生源が煙突や自動車からの排ガスだとわかり、2009年5月、国により「1年平均値が15マイクログラム/立方メートル以下であり、かつ、1日平均値が35マイクログラム/立方メートル以下であること」とした環境基準案が策定されました。
規制ができただけではありません。「PM2.5をはかる」ことは、たとえばエンジンの燃焼効率を上げて有害物質を出しにくくしたり、火力発電所や工場の煙突から出る前にとりのぞいたりと、排出量を減らす根本的な取り組みを支えています。また、排出量がちゃんと規制より少なくできているかも「はかる」ことで確認でき、企業や事業所も規制を守ることもできるようになるんです。


私たちの生活と密接な関係になってしまったPM2.5。気づかぬうちに、長い付き合いになっていたんですね。避けたいのはもちろんですが、できれば根本的な解決を願いたいところ。

次回は「排出量を減らすために役立てられている『PM2.5をはかる』技術」について、お話ししましょう。

※大気環境基準では、粒子径2.5μmの粒子を50%の割合で分粒できる装置を用いて採取できる微粒子をいいます。

 

Photo by Thinkstock/Getty Images


関連リンク

環境省_微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報

環境省_大気中の微小粒子状物質(PM2.5)の測定方法について

環境省_フィルタによる微小粒子状物質(PM2.5) 質量濃度測定方法暫定マニュアル (改定版)

国立環境研究所_SPM,PM2.5,PM10,…,さまざまな粒子状物質

環境省  大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君)

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