はかる場 » 空気をはかる http://www.jp.horiba.com/hakaruba はかる場」とは、「はかる」ことで「見える」ようになる世の中のアレコレを紹介するメディアです。 Thu, 19 Nov 2020 04:47:00 +0000 ja hourly 1 http://wordpress.org/?v=3.5.1 空気をはかる[3] 大気汚染をはかることは「はかりつづける」こと https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1559/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1559/#comments Thu, 29 Jan 2015 02:00:26 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=1559 生き物が生きるために欠かせない、でも目に見えない「空気」。前回は、その測定方法についてお話しました。その目的は、大気中に漂う、私たちの生活にも影響を及ぼす有害物質から人々の暮らしを守るため。空気をはかることは、私たちが何気なく暮らしていける「あたりまえ」を守ってくれています。

「空気をはかる」連載の最終回は、国内外で大気汚染測定の研究をされている、大学の研究室を訪ねました。大阪府立大学 現代システム科学域・工学部・大学院工学研究科の竹中規訓教授へのインタビューです。竹中さんと一緒に研究をされている大阪府立大学 地域連携研究機構・研究員の今村清さん とともにお話をうかがいました。空気をはかる現場の最前線へ。


水から空気へ、ベトナムにあった大気汚染研究のきっかけ

日本のみならず、海外でも広く活躍されている竹中さん。どんな研究をされているのでしょうか。

竹中さん:1999年から10年間の計画で、ベトナムの大学と環境関係の研究交流プロジェクトがスタートし、現地に行くようになりました。私は2004年から参加し、2009年までの6年間、プロジェクトに携わりました。そのプロジェクトは大阪府立大学とベトナムの大学との研究交流が主なテーマで、つつがなく終了しましたが、今度はバイオディーゼル燃料に関する調査でもう一度行けることになり、その際に大気汚染をしっかりはかろうということになったんです。

はかる場:大気汚染を「しっかりはかろう」とは?

竹中さん:今も現地では窒素酸化物(NOx)などの基礎データをはかっているのですが、最初はその基礎データがうまく取れなかった。最初の10年間で使っていた装置では現状把握も難しくて、簡易測定だけのデータをどこまで信用できるのかもわからない状態でした。NOxやオゾンのデータがないと大気の状態が分からないので、きちんと管理してもらえる装置が必要でした。

はかる場:そこで、「しっかりはかろう」、なんですね。

竹中さん:大気汚染の調査は、大気中のあらゆるものをはかって、何が原因なのかをはっきりさせるところからはじめます。改善のために、調べた結果をもとにして手を打つのですが、その効果を知るためにはビフォー/アフターで見ていかなければならないので、はかり続けることが大切です。プロジェクトではかる土台をつくってきましたが、現在は向こうの研究者がはかってくれていて、年に一回程度データを見せてもらう共同研究のような形になっています。

はかる場:大学間でのプロジェクトということですが、どのような目的があったのでしょうか?

竹中さん:もとは大気ではなく水環境の研究だったんです。ベトナムは飲み水がちゃんと安心して飲めないので、飲み水をどうやって確保するかという、水汚染の方が中心でした。そこから大気汚染の研究にも広がり、現在にいたります。

はかる場:竹中さんが空気をはかることに興味を持ったきっかけも水だったそうですね。

竹中さん:大気中における水の役割ですね。まず大気をはかるというよりは、大気中の水の中で起こる反応、何が起こっているのかという、サイエンスのベースの部分に興味があったのでその辺りをずっと研究していました。大気中の現象は知られていないことがたくさんあるので、“知らないことを見つけたい”という感覚が私の研究ベースです。

水は、大気中のさまざまな物質の中で3番目か4番目に多い成分。こんなにたくさんあるのに、あまり注目されていないですよね。少しわかりにくいですが、たとえば「大気中の物質が雨に溶けたら、地面に落ちたあとどうなるの?」など。雨が地中に染み込むと、乾いてまた出てくる物質があったりするんですね。今は離れていますが、こういった事象は今も調べたいですね。


大気汚染を語るうえで避けては通れないNOxとその研究

竹中さんが所属している大阪府立大学の環境物質化学研究グループは、大阪で光化学スモッグが問題となりはじめた昭和40年代中ごろから存在しています。お話しいただいた「大気中の水」に関する研究をはじめ、その光化学スモッグの研究にも関わられてきた竹中さんですが、ご専門は「窒素」。

はかる場:メインで研究されているのはどのような分野ですか?

竹中さん:私は窒素関係ですね。光化学スモッグに代表されるように、大気汚染で起こる問題は光化学反応です。物質が光を吸収して起こす化学反応で、大気汚染物質を生み出す原因です。この反応で生まれるOHラジカル(ヒドロキシルラジカル)という物質があります。活性酵素と呼ばれる化合物のひとつで、強い酸化作用を持ち、人体に取り込まれると健康な細胞まで酸化させて傷つけてしまうので、体内の活性酵素の量は老化のスピードに関わるともいわれています。このOHラジカルの生成にも深い関係を持つのが窒素化合物(NOx)です。単体でも酸性雨や温室効果ガスの原因とされているなど、大気汚染の研究をするうえで避けては通れません。

はかる場:大気汚染に大きく、広く関わる窒素化合物のなかで、特に専門とされているものはありますか?

竹中さん:亜硝酸に注目しています。亜硝酸はいくつかあるOHラジカルの発生源でも中心的な存在なんです。亜硝酸の量が増え、OHラジカルが増え、オゾンの割合も増える、という大気汚染におけるキー的役割をしているのではないかと、個人的には思っています。ヨーロッパではかなり注目されていて、一部では喘息にも相関関係があるのではと研究が進んでいます。

はかる場:もし喘息との相関関係が明らかになれば、また大きな問題になりそうですね。

竹中さん:そうですね。大きなところでは住環境の基準が見直される可能性すらあります。亜硝酸にしろ、その先にあるOHラジカルやオゾンの問題にしろ、つまるところNOx自体が問題になってきます。NOxの化学式にもあるとおり、窒素と酸素でできている以上、燃やせば燃やすほど発生します。だから発生させないというのはなかなか難しい。取り除く方向で考えなければいけない。それも含め、NOxの量をはかることからはじまっているといえますね。


目に見えない「空気をはかる」ことは、はかりつづけることで意味を成す

多くの大気汚染物質の原因となるNOx濃度を知ること。大気汚染対策の第一歩として、空気をはかる技術を用いている竹中さん。この第一歩が、私たちの社会にどのような役割を果たしているのか、あらためてうかがいました。

中央左が竹中さん、中央右が今村さん。研究にかける熱い思いを語ってくださいました。
(両端はおふたりのベトナムでの研究をサポートしているHORIBAの丸山さんと田中さん。インタビュー当日、一緒におふたりのお話をうかがいました)
 

はかる場:竹中さんの研究をはじめ、空気をはかる現場とそこで行われていることは、私たち一般市民にはあまり身近ではありません。しかし、時に住環境を選ぶ際にも大きく影響を受けるなど、実際は切っても切れない間柄だったのですね。

竹中さん:空気がなくては生きていけないですし、あってあたりまえのことで、また、呼吸で取り込むのも誰も何の疑問も持たずに行います。だからこそ、誰かがはからないといけない。大きなモニタリングステーションはその時々に問題となっているものをはかります。それを考えると、これから影響の出そうなものや、小さな兆しでも「このへんおかしいんじゃないか?」と思えるものにはある程度網を張ってはかる。大学や研究者にはそのあたりの役割が求められていると思います。

はかる場:はかるとみつけられる、ということですね。

竹中さん:なにしろ、大気や大気汚染物質は見えないですから。だから値に対する信頼度を得るためにもはかりつづけることが重要です。質量のような標準のものさしがないので、経年の変化や、はっきりした物質との相対関係など、さまざまなデータを組み合わせての判断が必要です。大気は変化していくので再現性も難しい。一方で、はかったデータによって基準値が決められる物事は多く、大きな影響を及ぼします。だからこそ、冒頭のベトナムの例もそうですが、その場その場でしっかりとはかりつづけることが大切。その点でも、365日24時間、止まることがない測定装置の存在はありがたいですし、これからも欠かせません。


「空気をはかる」ことは、それ自体が大気汚染の解決策になるわけではありません。まずその環境の状態を知ることは小さな一歩であり、その後さらに細かい成分をさまざまな手法で分析するために欠かせない第一歩。

工場や車が排出するガスだけでなく、世の中には多様な環境基準が存在します。それらがどんな目的で設けられて、どんな理由で基準の数値が設定されたのか、あれこれ調べてみるといろんな発見がありそうです。

 

空気をはかる

>>空気をはかる[1] 私たちの空気は「汚れ」ている?
>>空気をはかる[2] 大気汚染対策に「空気をはかる」が果たすこと

 

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空気をはかる[2] 大気汚染対策に「空気をはかる」が果たすこと https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1393/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1393/#comments Mon, 29 Sep 2014 02:00:01 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=1393 光化学スモッグにPM2.5。大気汚染は私たちの身近な問題として、また時に私たちの身体に小さくない悪影響を与える重大な課題として存在します。世界的に国を挙げての対策が進んでいますが、ここ日本でも各地での「環境モニタリング」が実施され、得られたデータを基にさまざまな施策が行われています。大気中の大気汚染物質を明らかにし、大気汚染対策のベースとなる「空気をはかる」。今回はどのように「空気をはかる」のか、その仕組みがテーマ。HORIBAで大気汚染監視用濃度測定装置を担当している水野裕介さんにお話をうかがいました。


できるだけ人の呼吸に忠実に……大気汚染物質のはかり方

空気は目に見えません。当然、汚染されているかどうかもわからない。空気中に漂う大気汚染物質のはかり方とは?

mzn2はかる場:大気中の汚染物質をはかる仕組みについて、基本的な仕組みについて教えていただけますか?

水野:大気汚染物質の測定は、主に人が健康に暮らしていける基準濃度以下であるかどうかをチェックするために行われています。人が普段生活している中で長期的・短期的に影響 がない濃度が環境基準にされているため、はかる条件も人が普通に呼吸するような環境に近づける必要があります。 一般的には大気を屋内へ引き込んだ後、二酸化硫黄や一酸化炭素など、専用装置で濃度測定を行っています。

はかる場:直に大気をはかっているのかと思ってました。

水野:大気汚染物質濃度は、高精度と安定性が求められます。そのため、環境条件が整った 部屋の中に設置されているのが一般的です。先に挙げた二酸化硫黄や一酸化炭素といったガス状の物質はこのパターンではかれますが、微小粒子状物質と呼ばれているPM2.5は大気を引き込む方法が違います。ガス状物質とは違って、2.5μm以下の非常に小さな粒子であるものの、装置に取り込む過程で吸着したりして測定値に影響が出てしまいます。そのため、大気を採取する部分を部屋の天井に穴を開けて、直接外に出してその影響を最小限に抑えるようにしています。

はかる場:設置場所に決まりはあるのですか?

水野: 一般環境大気測定局と呼ばれる住民が住んでいる地域を代表する場所や、自動車排出ガス測定局と呼ばれる自動車排出ガスの影響が大きいとされる場所と、その設置場所には決まりがあります。また、大気汚染による人の健康の保護及び生活環境の保全から測定局数が算定されています。その測定局数は人口や可住地面積や地域的特徴に即して算出されています 。現在、1800局以上で測定が行われています。

はかる場:では、機器に取り込んだ空気のはかり方についてうかがいたいのですが。

水野:現在のガス物質の測定方法は、「ウェット方式」と「ドライ方式」があります。ウェット方式とは、対象物質を液体と化学反応させ、濃度に応じた色の変化を測定する方法や、溶媒に溶けたイオン濃度に応じて電気伝導率を測定する方法です。ドライ方式とは、液体を使わずに物質に特定の光を当て、濃度に応じた光の吸収量や発光量を測定する方法です。

PM2.5などの浮遊粒子状物質ではまず、掃除機のように空気を吸い込み、専用のフィルターに捕集するのが一般的です。日本では浮遊粒子状物質(SPM)と呼ばれる粒子径が10 μm以下と微小粒子状物質(PM2.5)と呼ばれる粒子径が2.5 μm以下が環境基準として定められています。その中でPM2.5に代表される粒子状物質は、 大気中の粒子から分粒器と呼ばれるものを使って 2.5 μm以下の粒子を取り出しフィルターに捕集します。そのフィルターに放射線の一種のベータ線を照射すると、捕集された量に比例してベータ線が吸収される原理を用いて重量が求められ、吸った空気量から最終的に濃度が計算されます。

その他に、粒子に照射した光の散乱量を測定する方法や捕集された粒子量に応じて変化する振動数を測定する方法などがあります。


時代に求められるPM2.5対策、その現状と課題

大気汚染の状況は時代や場所によって多様です。ニーズに合わせて「空気をはかる」技術も進化しています。今もっとも対策を求められているのがPM2.5対策です。

_029A8537はかる場:時代や環境の要請によって求められる技術も変わってきますよね。お話を聞いているとやはり、今だとPM2.5の測定が大きなニーズになっているのでしょうか?

水野:そうですね。日本では大気汚染対策の中でも工場から排出される排ガス、ディーゼル車の排出対策などで成果をあげています。一方で光化学オキシダントや、PM2.5の問題はまだまだ。PM2.5の環境基準ができたのも2009年です。国(地域・人)によってPM2.5がもたらす影響は違います。 PM2.5は微小粒子状物質という総称で呼ばれているとおり、金属・有機物など多くの物質を含んでおり、その中身がわかって初めて効果的な対策ができるのですが、まだ重さでしかPM2.5を把握できていないのが現状です。

はかる場:それは大きな課題ですね。それこそPM2.5が騒がれはじめてから、人々の関心はどう体に悪いのか、どこからやってきたのか、そんなところだったと思います。

水野:簡単に言えば都市圏のPM2.5と山間部のPM2.5では中身が異なります。しかしその違いがわからない。そのため、その中身の分析が重要になってきます。すでに国を挙げての対策もはじまっています。そうなってくると、ここまでお話してきた重さを測定する装置はその一部で、様々な分析技術、例えば酸性やアルカリ性度合いが測定可能なpHメータや元素分析が可能な蛍光X線分析技術などを上手に組み合わせて、その課題を解決していく必要があると考えています。HORIBAには様々な分析技術があり、このような技術をどのようにして役立てていくか、日々研究をしています。

はかる場:知りえたデータをどのように使うかというのも重要ですよね。

水野:環境を改善していくためには3つのステップがあり、サイクルを回しています。最初はやはり、ご紹介しているような装置を置いて状況を把握する。状況が把握できたら今度は、発生源もしくは発生メカニズムの把握を行う。自動車の排気を抑えたり、工場からの排ガスを減らしたりして、対策を。そしてもう一度モニタリングし、対策に対して結果はどうだったかを確認する。

発生源次第では、企業や自治体、一国で済む問題ではないかもしれません。データを上手に活用し、関わる人たちが連携していくことも求められますね。


最後に「空気をはかる」ことの意味を問いかけると、水野さんはこう、力強く語ってくれました。

mzn1はかる場:「空気をはかる」お仕事は、世の中に対しどんな役割を担っていると考えますか?

水野:繰り返しになりますが、人の健康と安全、これがまず貢献できることではないかと。空気をはかる……人には見えないものを数値で可視化する。これまでは健康被害となる特定のガスを測定して、それが基準以内であるかどうかを監視するのが主な目的でした。しかしこれからは、空気をはかるプロフェッショナルとして、未然に防ぐことを担うべきではないかと思います。

空気をはかり、得られたデータが先回りして人の健康と安全を守る。生きるうえで欠かせない、あって当たり前の空気だからこそ、気が付かないうちにそんな技術に支えられているかもしれませんね。


次回は、実際に大気測定の研究を行っている、大阪府立大学の研究所を訪問します。

 

空気をはかる

>>空気をはかる[1] 私たちの空気は「汚れ」ている?
>>空気をはかる[3] 大気汚染をはかることは「はかりつづける」こと

 

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空気をはかる[1] 私たちの空気は「汚れ」ている? https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1373/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1373/#comments Fri, 29 Aug 2014 02:00:18 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=1373 自然豊かな高原にて「あー、空気がおいしい!」と、声に出したかと思えば、都会に戻ると「やっぱり都会の空気は……」とボヤく。自然に囲まれた暮らしをしている方は、逆の経験をされているかもしれませんね。

空気がおいしいかどうかはさておき、私たちの暮らしで空気がないことは考えられません。人間は空気中の酸素などを取り入れてはじめて、脳や心臓、大切な器官が活動します。そこまで根源的な話に戻る必要もないでしょう。料理に使うコンロのガスから発電するために必要な燃料を燃やすため。当たり前のことですが、空気がなければ私たちは生きていけないのです。

空気の大切さをお話したところで、再び空気の質について。「空気が汚い」「空気がきれい」といった表現は、日常的に使いますよね。空気は、味よりもむしろ、「汚れ」で表現されることのほうが多いです。代表的なのが大気汚染。空気は基本、窒素に酸素、二酸化炭素などにより組成されていますが、私たちの生活で排出されるさまざまな物質が漂います。その中で人の健康に悪影響を与える物質を「大気汚染物質」と定め、健康的な生活が守られるための基準値を設定しています。

この汚染物質が皮肉なことに、先に挙げた火を使うシーンや、私たちが生きていくための活動の中で生まれてしまっています。人の生活が営まれながら、きれいな空気を維持することはできないのでしょうか……? そこで「空気をはかる」。今回のシリーズでは、空気の汚れにまつわるお話をお届けします。


空気の汚れを知るためのキーワード「大気汚染物質」

大気汚染物質は、主なところで二酸化硫黄(SO2)、一酸化炭素(CO)、浮遊粒子状物質(SPM)、二酸化窒素(NO2)、光化学オキシダント(Ox)、ダイオキシン類、微小粒子状物質などが挙げられます。これらは主に自動車の排ガス、工場や焼却場から排出される煙から大気中に広がっていく物質です。すなわち日常生活を営む過程で生じた問題なのです。

これら大気汚染物質には明確な危険性があります。大気汚染物質を吸い込み、気管支や肺に入れてしまうと、喘息や気管支炎、肺機能の低下などが引き起こされます。実際日本でも1960年代には、工場地帯の住民を中心に喘息患者が増加するなど、経済や産業が発展していく中で社会問題にもなりました。

ならば文明化した社会を捨てて、自然と共生する世界を目指すのか? そんなシンプルにはいきません。汚染された空気を浄化するための技術も研究されていますが、ハードルは高い。ならば汚染の元を抑えようということで、ろ過機などを使った排出時の浄化が行われています。また、法律や条令で排出量そのものを規制する動きも。工場から排出される大気汚染物質については、大気汚染防止法、都道府県の生活環境保全等に関する条例などが施行され、一定の環境基準を守ることが義務付けられています。自動車についてもディーゼル車運行規制の取組みや、最近では電気自動車やエコカーの開発など、さまざまな面でさまざまな人や団体が、汚染物質の発生自体を抑えようと努力しています。


「環境モニタリング」で空気の汚れをはかる

人々が大気汚染を防ぎ、きれいな空気を守るための取り組みはあらゆるところで行われています。そのための第一歩として、大気汚染の状況を把握する必要があります。そのひとつが「環境モニタリング」。監視すべき地域を決め、交通量や工場からの排出量を管理し、汚染物質の量を可視化します。設置される場所は目的によってさまざま。住民の環境を測定するためには住宅の近くに、自動車の排ガスを詳細に調べるためには直接的に道路脇、といった具合です。汚染の量を調べるためだけではなく、汚染物質の排出を未然に防ぐためにも使われています。工場の敷地内や、さらに自動車など移動しながら汚染物質の発生源になりうるケースでは、製造段階でのチェックが欠かせません。

「環境モニタリング」で収集したデータは自治体や国に送られ、気象に関する注意報・警報の発令や、新たな規制の制定につながります。光化学スモッグ警報や、近年特に問題視されているPM2.5に関する注意喚起が身近なところでしょうか。対象となる汚染物質によって計測方法や機器も異なりますが、きれいな空気を、私たちの生活を守るために、このようなモニタリングは日本各地で行われています。ここに「空気をはかる」技術が使われています。


次回は「空気をはかる」仕組みについて、実際に使用されている機器のお話をします。

 

空気をはかる

>>空気をはかる[2] 大気汚染対策に「空気をはかる」が果たすこと
>>空気をはかる[3] 大気汚染をはかることは「はかりつづける」こと

 

Photo by Thinkstock/Getty Images

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空の中身は、どこ吹く風ですか。 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1293/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1293/#comments Tue, 19 Aug 2014 02:00:52 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=1293  

スマホでメールを確認したり。今日の予定を考えながら会社に向かったり。忙しい日々を過ごす現代人。その頭上には美しい青空が広がっているものの、都会の空が本当に澄んでいるのか、皆さまは関心を寄せたことがありますか。HORIBAの技術は車や工場の排ガスなどに含まれ、健康への影響が懸念されるPM2.5(微小粒子状物質)の大気中濃度を測定。全国の環境観測施設などで採用されています。空を見透し、街を見守る。安心な都市づくりへ、HORIBAも一緒に歩んでいます。

 

※広告シリーズ 「見えないけど、見つけられる。」 WEDGE(ウェッジ)2014年9月号より

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