はかる場 » 動物の健康をはかる http://www.jp.horiba.com/hakaruba はかる場」とは、「はかる」ことで「見える」ようになる世の中のアレコレを紹介するメディアです。 Thu, 19 Nov 2020 04:47:00 +0000 ja hourly 1 http://wordpress.org/?v=3.5.1 動物の健康をはかる[4] 動物医療の最前線で「動物の健康をはかる」意味を知る https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/921/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/921/#comments Thu, 26 Dec 2013 02:00:54 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=921 「動物の健康をはかる」と題してお届けしてきた連載もいよいよ最終回。最終回にして、「動物の健康をはかる」最前線へお邪魔しました。これまで血液検査を中心に「動物の健康をはかる」仕組みや意味をお届けしてきましたが、獣医師さんへのインタビューで動物医療の現場の声をうかがいます。日々、動物とその飼い主さんたちと触れ合う獣医師さんのお話しからは、ロジックだけではない、「動物の健康をはかる」ことの意義が見えてきました。


愛しているなら知ったつもりで済まさない、「人と動物の違い」

訪れたのは京都市南区にある「めぐむ動物病院」。犬や猫、うさぎをメインに診察しているそうです。獣医師の中村仁先生にお話しをうかがいました。

はかる場:動物の診察について、一般的にどのような流れで行うのか教えてください。

中村先生:まずは飼い主さんに「何が気になるのか、どのような症状なのか」という来院理由を詳しくお尋ねします。その上で通常、触診や聴診などひと通りの身体検査を確実に行い、問題点をできるだけ明確にします。診断するためには次に何が必要かを相談したうえで各種検査や治療に進みます。はじめの診察には結構時間を使います。30分、場合によっては1時間くらいかかる場合もありますね。

はかる場:やはり、言葉が通じない動物を診療するうえで、飼い主さんとのコミュニケーションが重要になりますか?

中村先生:そうですね。飼い主さんが気にしていた症状とは一見関係なさそうなこと、たとえば普段の食事内容やトイレの回数であるとか、いろんなお話を伺います。異常が出る前の情報も非常に重要です。よく観察されている方がほとんどなので多くの情報を収集することができますが、普段あまり気にしていないこともお聞きしますのでお答えいただくのに苦労される場合もあります。

はかる場:動物が喋れないのと同じように、飼い主さんも自分の症状ではないので、言葉を通して理解するむずかしさがありますよね。

中村先生:確かに理解するのはむずかしいですが、飼い主さんでなければわからない情報もたくさんありますので、いろいろと教えていただく必要があります。また、病気の説明などは自分や家族が同じような病気をされた経験があるなど、イメージしやすい場合には比較的理解していただけます。治療の方針も似ていたりします。でも、人と同じ病名がついていても、治療の方針が全く違うということもあります。たとえば猫の糖尿病。人の場合は健康診断などで高血糖が見つかると病院に行き、診断後は食事療法や内服薬での管理から……という具合ですよね。しかし猫の場合、糖尿病と診断された時点からインスリン注射を1日2回始めていただくことが多いのです。動物はなかなか症状がわかりにくい。症状がはっきりした時にはかなり進行しているので治療初期から大変な治療を開始することも多く、獣医師はきちんと説明し、理解していただくことが重要になります。

はかる場:ちょうどその辺りの話を前回までしていまして、動物の病気の進みが人間よりも速いということは、理解しておかなければいけない部分ですよね。では、動物種、犬で言えば犬種など、個体差についても意識されることが多いですか?

中村先生:種類による差を考慮するのは基本的なこととして、うちで特に気を遣うのはそれぞれの動物の性格なんですよね。すごく怖がりな子や、家族以外に触られることにものすごく慣れていない子もいます。必要な検査や治療であっても、無理をすると精神的に参ってしまってかえって状態を悪くしてしまうこともあるんです。場合によっては命にかかわるような重い病気で、しっかりと入院して検査や治療をすれば延命できるかもしれないけれど、逆に精神的に追い詰められて命を縮めてしまう可能性がある。そういう子には、生きる期間が多少短くなるとしても、ご家族の元で過ごせる期間が長いほうがいいんじゃないかという選択で治療の方針が決まることもあるんです。

繰り返しになりますが、動物たちは治療や説明を理解できないので、動物が極端に嫌がることはできない。暴れて危険な場合には麻酔してから検査や治療をする場合もありますが、それなりの負担も伴います。どれだけ受け入れてくれるかなというのを、しっかり見極めながら対応するようにしています。


いざという時のための「健康診断」の重要性

健康をはかる以前に考えられなければいけない人と動物の違い。飼い主になる私たち人間は物言わぬ動物たちに代わって、時には命に関わる決断を迫られることもあるのです。可愛い動物たちのため、私たちにできることとは。

はかる場:動物の異常に気付くためには日ごろからしっかり観察することが欠かせないと思います。人でいうところの健康診断のように、正常値を知ることも有効ですよね?

中村先生:犬の場合は少なくても年に一回、フィラリアの検査と予防で通院の機会があり、様子を確認することができます。この時の採血で健康診断としての項目もチェックできるので、少なくも中年齢以上の子には健康診断の実施も合わせてお勧めしています。ところが猫になると、キャリーケースなどの入れ物に慣れていないと病院に連れてくること自体がむずかしい場合もありますよね。連れては来たけど興奮していて飼い主さんも触れないような場合もあります。こうなると連れてくるのが大変で、動けなくなってからようやく連れて来たら病気の末期だった、ということにもなりかねません。さらにとても臆病な子の場合、先ほどの話にも通じますが、採血もできないほど暴れることがあります。こうなると思うような治療ができないケースも考えられるんです。飼い主さんも鎮静剤や麻酔を使ってまではやりたくない、とおっしゃることもありますし。

はかる場:いざという時を考えると、病院に慣らすことも必要かもしれませんね。

中村先生:少なくとも年に一回くらい来院していただくと、動物も少しは病院という独特な雰囲気の場所に慣れることができると思います。我々としても、飼い主さんや動物のことを覚えていられます。何年も空くとわからなくなってしまいますが、年に一度が続いていけばその子の性格もわかってきますし、毎年のちょっとした変化にも気づけます。ただ、飼い主さんは連れて来たくても先ほどの猫の話のように連れて来られない場合もあります。ですので、できるだけ病院が怖くないように、予防などで来院する際には大好きなご褒美を持参していただき、診察台の上で与えてもらったりします。ワンちゃんでしたら、お散歩の途中にでも寄っていただき、院内でご褒美をあげたり、スタッフに抱かれたりして普段から慣れておいてもらうのも一つの方法です。ときどきでも来院していただければ身体検査で初期の病気の兆候を見つけられることもあり、「今は詳細な検査や治療はしなくてもいいですが、このまま進行したら2年か3年後には必要になるでしょう」といったお話と、これからの対策を説明でき、心の準備もしていただけるかなあと思います。

調子が悪くて弱っているときは、診察も検査も何でもできるんです。でも繰り返しになりますが、その時にはかなり進行してしまっている可能性が高い。一方で少し良くなってきたり、そこまで症状が出ていない時だと元気すぎて何もできない、ということも起こってきてしまいます。なので、慣れてもらうために病院に来てもらう。健康な時から、怖くないんだよ、と慣れておいてもらうのはすごく重要ですね。


動物病院で「血液をはかる」ことが果たす役割とは

動物病院におけるコミュニケーションはいちに飼い主さんへの問診、続いて触診をはじめとした診察。多くの異常はここで判断することが多いそう。見つけた異常の原因を探り、治療方針を決める大きな材料になるのが検査です。ここで「はかる」の出番です。

はかる場:この連載では「動物の健康をはかる」というテーマの中でも、代表的な検査項目である「血液をはかる」ことにフォーカスしてきました。血液検査は比較的早い段階でされるものだとか。

中村先生:そうなんですが、動物の場合採血をするのも人のように自分で手を出して、終わるまでおとなしくしているということはほとんどありません。待っていてくれるわけがないので押さえないといけないんですよね。体重が30kg、40kgあるような大きな犬だったら血管も太いので、おとなしければ簡単に採血できるんですが、2kgくらいの小型犬の場合、脚も短いし血管も細いし、ものすごくむずかしい。さらに、暴れる猫なんかはもう猛獣です(笑)。押さえられません。おうちでは聞いたこともない唸り声を出して、飼い主さんが驚かれることもあります。

はかる場:あんなに可愛い猫なのに(笑)

中村先生:ですので、できるだけ興奮させないような工夫をしています。先ほどの慣れるということにもつながるのですが、犬ではご褒美の使い方を説明し、猫では「連れてくる時のキャリーケースは普段からおうちとして利用しておいてください、洗濯ネットのような袋に入れて連れてきてください」など、病院に来る前から普段の生活の中で準備をしていただき、診察台上で興奮させないようなアドバイスをしています。採血自体は動物にとってそれほど負担になる検査ではありませんが、苦痛にならないように非常に気を遣っています。

はかる場:血液をはかることで実際にどんなことがわかりますか?

中村先生:そのときの状態ですね。何かを診断するというよりは、いま身体の中で何が起こっているのかを知る。調子が悪いのであれば、どういう変化をしているのか見極めるというのが、一番の目的になるのかなという感じです。検査はあくまでも、病気を確認するための道具のひとつ。どんな状態かをお聞きし、診察をして、そのうえで検査によって細部を詰めていきます。ただし、何がどうおかしいのか、問診や診察では判断できない時もあります。その時はやはり検査が必要で、その結果から方針を立てていくことになります。

はかる場:自動血球計数装置を使われていますが、この装置の果たしている役割を教えてください。

中村先生:大きなところでは正確に血液の状態を把握できること、結果が速いので院内での迅速な評価ができる、というところです。小型の動物は採血量が限られています。何回も採血を必要とする検査や、たくさんの血液を必要とする検査は、それ自体が難しいですし、体調が悪くて血圧が低下した小型の動物となると採血自体が非常に困難。少量で多くの項目が検査可能な自動血球計数装置には助けられています。


はかる場:動物病院において「はかる」が果たしている役割はズバリ?

中村先生:病院に来たらまず、体重をはかります。体温をはかります。聴診をして、心拍数もはかります。飼い主さんからお話しを聞いて、検査に進めば血液もはかります。たとえば貧血。まぶたの裏が白い、舌が白いと、見た目でわかることでもあるんですが、その具体的な度合いを知るためにはヘマトクリット値が指標になります。はかることで数字が出てきますが、治療をしたあとに良くなっているのか、効果が出ずに症状が進んでいるのか、客観的な変化がわかります。また、年に一回健康診断を繰り返していれば、前年の結果と比べてどうなったかなど、長期的な健康状態が非常にわかりやすくなります。


共通の言語を持たない人と動物のコミュニケーション。飼い主さんとの対話や、日ごろからの観察、定期的な健康診断など、動物の健康を良い状態に保つためには多角的なケアが必要です。その中で、はかることで数値化する、この作業が果たす役割も小さくないでしょう。

「やっぱり調子が悪かった動物が元気に帰れるというのが、自分を含めてスタッフが一番うれしいことかなと思いますね。たとえば人馴れしていない猫を調子が悪いと連れて来られた場合、当たり前ですけど体調が悪いので最初はおとなしいんですよね。動けないから診察、検査、治療となんでもできるんですが、いよいよ治って退院しましょうという時にはもう手に負えない。あんなにおとなしかったのに怒ってるみたいに(笑)。でも怒るというのはそれだけエネルギーを使うことなので、元気になった証拠なんです。獣医は常に嫌がることばかりするし、動物に感謝される仕事じゃない。でもそういう怒ってる姿を見ると、よしよし、元気になったな、という感じでうれしくなりますね(笑)」

最後にこの仕事のやりがいを尋ねると、苦笑いしながらこう答えてくれた中村先生。ペットがいるご家庭では「家族の一員」という考え方が当たり前ですが、家族の一員であり続けるためにも人との違いをあらためて知り、より深い愛情に確かな知識を加えて接することが大切なようです。

 

 

めぐむ動物病院
院長 中村 仁先生
〒601-8394 京都市南区吉祥院中河原里北町49
TEL:075-313-4655
ホームページはコチラ

 

動物の健康をはかる

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>>動物の健康をはかる[3] 動物の血液をはかる

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動物の健康をはかる[3] 動物の血液をはかる https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/850/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/850/#comments Fri, 29 Nov 2013 08:00:41 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=850 共通言語を持たない人間と動物とのコミュニケーションにおいて、こと健康に関する部分で血液検査の果たす役割はとても重要です。自ら痛みや苦しみを言葉にできない動物たちの声を、血液検査の結果が代弁してくれるのです。

前回は「血液をはかる」ことについて、仕組みと意味をご紹介しました。基本的な考え方は人間も動物も変わりませんが、少なからず異なる点があります。今回はHORIBAで動物の医療機器を担当している瀬川鈴菜さんに、「血液をはかる」うえで人間と動物での違いをうかがいました。


人間と動物、動物の品種、同じ血球数でも診断結果は個体差で異なる

OLYMPUS DIGITAL CAMERA当然ながら大きな相違点として、まず人間と動物ではカラダの組成が違うことが挙げられます。瀬川さんのお話もそこから始まりました。

瀬川さん: 人と動物とで大きく異なるところで、赤血球の数や白血球の数といった、血球自体の総数が明らかに違います。また「犬」とひとくくりにされることも多いのですが、犬種などによっても違ってきます。たとえば元々走ることがメインの猟犬は、酸素を多く必要とします。そのため酸素を運搬する役割の赤血球が、ひとつひとつとても小さく、数自体がとても多くなっています。一方で猫は、じっと待って瞬発力でガバッと獲物に飛びつかないといけないので、血管の収縮率がすごく高かったり。いろんな要因で基準が異なるため、多少の個人差はあっても種としての差がない人間より難しいんですね。

はかる場: 考えたこともありませんでした。ペットを飼う人たちにとっては常識なのでしょうか?

瀬川さん: そうとは言えないですね……。動物の病気については「好発品種」という考え方があります。”よく起こる”という意味で「好発」、ある病気が一定の品種でよく起こるというデータがあるんです。たとえば胴の長いダックスフンドやウェルシュコーギーは、腰に負担がかかるのでヘルニアをはじめ、腰の病気になりやすかったりとか。

本来コーギーは狐狩り、ダックスはアナグマ狩り用の犬だからそれなりに赤血球も多く、運動量を多くしてあげないと太っちゃうんでんすよ。でもどちらも可愛らしさがすごく立つ犬種なので、飼い主さんがカワイイカワイイとついついおやつを与えたり、小さいので散歩も少しでいいやと思われがちで太ってしまうと。太ってしまえば腰に負担がかかっちゃって、ヘルニアなどの病気になってしまうという。実は私、きちんと育てられた正しいボディコンディションの子たちをあまり見たことがなくて、みんな太ってるんです(苦笑)。

はかる場: なるほど(苦笑)。血液をはかることで得た結果に対し、品種などの要因が関わってくるんですね。

瀬川さん: そうです。人間だとヘマトクリット値は男性で38~50%、女性で34~45%が基準値なのですが、猟犬のダックスの場合60%程度で正常。これは人間だと濃すぎる血、ドローっとした血なんです。獣医さんは検査結果をさまざまな観点から診られるんです。

 

※血液中に占める血球の容積の割合を示す数値


動物の血液をはかる際に求められる「精確さ」「迅速さ」「低侵襲」

OLYMPUS DIGITAL CAMERAHORIBAの動物用自動血球計数装置は、「精確さ」「迅速さ」「低侵襲」と3つのキーワードをメリットとしています。ここにももちろん、相手が動物だからこその理由が隠されています。

はかる場: 多くの動物は人間よりも小さく、弱い生き物です。「低侵襲」であることは人間のそれよりも重要であり、動物の血液検査でも同様だと思うのですが。

瀬川さん: もちろんそうですよね。人間の血液検査のように2ミリリットルを5本など一度に抜いてしまったら、それだけで致死量という子もいますから。室内飼いや小型犬の需要が増えてきていることもありますし、微量で検査ができる技術は以前よりも求められています。HORIBAの動物用自動血球計数装置では検査に必要な検体吸引量はわずか10μL。測定時間も検体吸引後わずか約70秒と、その場ですぐに結果を知ることができます。

はかる場: 「迅速さ」も売りにされてますよね。前回記事にも書きましたが、動物の病気の進行は人間よりも速い。

瀬川さん: 人間の場合、血液検査の結果がその場でわかる機器を導入されているクリニック(開業医)は全体の3割程度なんですが、動物病院においては実に8割。この普及率自体が動物の治療におけるスピード感の重要さのあらわれだと思います。私たちが病院で検査してもらい「1週間後に結果を聞きに来てください。」ということは普通ですが、動物はその1週間が1か月と同じ。人間でも診察後1か月も結果を待っていたら、最悪死んしまうかもしれないですよね。だからできるだけ早く院内で確認して、適切な処置を少しでも早くしてあげることが大切なんです。

動物用自動血球計数装置

はかる場: 3つのメリット、最後の一つ「精確さ」についても教えていただけますか?

瀬川さん: これは人間の血液をはかる機器でも同様なのですが、採取した血液は機器の中で必ず2回以上測定します。2回の値が異なれば機器が自動で判断し、3回目を行います。1回目と3回目、もしくは2回目と3回目が一緒であれば、3回中2回が一緒でしたよ、と返しますが、3回ともバラバラだったら検体自体の異常か検体の混ぜ方が足りない可能性もありますので、目視で確認して下さいねというマークを出すことにしています。

また動物特有の病気を診断するため、試薬を変える工夫も行っています。動物は直接土に接触したものを食べることもあり、人と比べて寄生虫にかかる割合が高いんです。人間用の自動血球計数装置ではリンパ球、顆粒球、単球の三分類ではかりますが、動物用ではアレルギー指標となる好酸球(顆粒球のひとつ)も見られるようになっています。大型の機器であれば同様に顆粒球を詳細にはかり、好中球、好酸球、好塩基球に分け、5分類まで調べるものもあります。血液検査は検査の初期段階で行われ、実際お医者様も血球の数値を重要な指標のひとつとされています。そのためにも目的や条件にあったやり方で、正しく広く病気の可能性を見つけられるような装置を提供できるよう、心がけています。


今回瀬川さんにうかがった「動物の血液をはかる」こと。前回お伝えした、人間を含めた「血液をはかる」仕組みと合わせ、身近な検査でありながらもなかなか知りえないものだったのではないでしょうか? 家族の一員ともいえるペットのために、瀬川さんは「正常値を知っておく」ことの大切さを説かれます。

「診断結果で毎回一喜一憂するのではなくて、健康だった時のデータと照らし合わせてみてほしいです。病気と診断されなくても、健康時の値と比べて中性脂肪の値が高ければ痩せるためのサポートをしてあげたり。最近では人間ドックならぬドッグドックやキャットドックも増えています。まずは健康な状態で一度連れて行って、正常な数値を知っておくといいですね。」

物言わぬ動物たちの健康を守るためには、言葉以外でのコミュニケーションによる”気づき”が必要です。血液をはかることが果たす役割はとても大きなものだと言えそうです。

次回「動物の健康をはかる」最終回では、動物医療の現場にて獣医さんを取材します。

 

 

動物の健康をはかる

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動物の健康をはかる[2] 「血液をはかる」意味と仕組み https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/809/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/809/#comments Thu, 21 Nov 2013 02:00:16 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=809 「目は口ほどに物を言う」と言いますが、口以上に健康状態を知らせてくれるのが血液です。血液の状態を詳しく調べることで、体の中で何が起こっているかを知ることができるので、意識を失っている患者の診察には欠かすことができません。自分で症状が説明できない赤ちゃんの診察時も、血液検査が大きな頼りとなります。

もちろん、共通の言語を持たない動物たちとのコミュニケーションにおいても同様です。今回のテーマは「血液をはかる」こと。血液の何をはかり、何を知ることができるのか。身近でありながら意外と知らないその仕組みを明らかにします。


病気と密接な関係を持つ、白血球の働きが「血液をはかる」カギ

病気と密接な関係を持つ、白血球の働きが「血液をはかる」カギ血液の重要な要素が、おなじみの赤血球、白血球、血小板など、「血球」と総称されるものです。もっとも数が多い赤血球の役割は、おもに酸素運搬です。血小板には血管の傷を修復するはたらきがあり、量が少ないと出血が止まらなくなります。白血球は生体の防衛を担当します。これら3つの「血球」の比率は、健康状態で最も少ない白血球を1とすると、赤血球は1000、血小板は50とされます。

血球の中でも特に「白血球」は、病気と密接な関係にあります。体内に細菌などの病原体が侵入して炎症を起こした時に白血球の数が増加する仕組みから、血液検査では血液1マイクロリットル(※)あたりの白血球の数と種類を調べて、病気を診断する手がかりにしているのです。

人間の血液中には通常、1マイクロリットルにおよそ4,000から9,000の白血球が存在し、大きく5種類に分けられます。このうち「リンパ球」(LYM)は白血球のおよそ3分の1を占め、免疫反応では相手を敵と認識したり、それに対する抗体をつくったりする「知的中枢」を担当しています。「リンパ」の語源は「澄んだ」という意味で、その細胞質の透明性が高いことから名づけられました。

リンパ球が「知的中枢」であるとすれば、「実戦部隊」は「顆粒球」とよばれるグループです。古くから白血球の検査には、酸性・中性・アルカリ性の三種混合染料が使われていますが、顆粒球グループの「好酸球」「好中球」「好塩基球」はそれぞれどの染料に染まりやすいかという性質によって名づけられました。好中球(NEU)は白血球の約6割に及び、白血球中もっとも数が多く、外敵との戦いで一番活躍するエース的存在です。感染の規模や重症度を推定するには、好中球の数を調べます。

白血球の約5%を占める好酸球(EOS)は、「好酸性顆粒」というアレルギーを抑える物資を積めた袋をもっています。アレルゲン(アレルギーの原因物質)の近くで袋を破り、中の物質をまき散らして症状を緩和します。好酸球の増加は、じんましんやアレルギー性疾患などの指標となります。好塩基球(BAS)は、白血球の1%前後ともっとも少数の細胞で、ヒスタミンやヘパリンが含まれており、アレルギー症状に関係していると考えられています。

リンパ球、3つの顆粒球と並んで分類される単球(MON)は、白血球の約5%。自分で敵を認識し自由に動いて症状を鎮めます。体内の老廃物を処理するのも単球の役目です。白血球はこのような役割分担をしているため、病気にかかった時にその全体の数やそれぞれの役割が変わります。この5つを分類して計数することで、素早く病気を見つけることができるわけです。

これら血球のほかにも血液検査で発見され、病気の診断に役立つ指標があります。「C-反応性タンパク」(CRP)は、組織が損傷したときや微生物が体内に進入したときに血中にあらわれるタンパクの1つです。肺炎患者の血清中で発見され、肺炎球菌の膜成分であるC分画と反応することからこう呼ばれていますが、現在ではいろいろな病気で重症度を反映して増減することがわかっているため、治療方法の決定や薬剤の選定に役立っています。

※1ミリリットルの1000分の1に相当


血球の仕組みを利用して「血球の数」をはかる

自動血球数計数CRP測定装置

実際に血球を「はかる」ためにはどのような作業が行われているのでしょうか? 医療をテーマとしたドラマや映画での「白血球が増加している」、「血小板が少ないから輸血を」といったセリフに聞き覚えがある方もいらっしゃるはず。このようなシーンで使われているのが「自動血球計数装置」です。

日本では1975年頃まで、ガラス計算板と呼ばれるものを用いて顕微鏡で一つ一つ(!)数えていましたが、この方法はとても手間がかかる反面、必ずしも正確ではありませんでした。現在では高度医療機器の開発に伴い、各種病院検査でも自動化が進められて、血球数の計算についても自動血球計数装置が用いられることが多くなっています。

血球も細胞の一種で「電気を通さない」、つまり電流が流れにくい性質を持っています。この性質を利用し、血球の数をはかります。まずは電流の流れやすい食塩水を容器に入れ、一定の電流を流しておきます。容器にはごく小さな穴が開いていて、穴を通じ、チューブで中の食塩水を一定量吸引できるようになっています。この容器に血液を、計りやすくするために一定の割合で薄めて入れます。チューブから容器の中の食塩水と薄めた血液を吸引すると、容器の小さな穴を血球が1つずつ通ります。この時、血球は電気を通さないので電気の抵抗が生まれます。この抵抗を電気信号として数えることで血球の数が分かる仕組みになっているのです。

また、血球は種類によってそれぞれ特徴ある形をしています。たとえば顕微鏡で見ると、白血球は白く大きな球形、赤血球は丸く赤いクッションのような形、血小板は小さな破片のような形をしています。自動血球計数装置ではそれらの血球が穴を通る時、体積による電気信号の特徴から血球の種類も見分けています。血球はこのように、種類により大きさも形も違っているのですが、生産過程をさかのぼるとすべては骨髄中に存在する「幹細胞」と呼ばれる1種類の細胞に行き着きます。人体のメカニズムのすごさを感じずにはいられないですね。


「血液をはかる」意味と仕組みをご紹介しました。シンプルですが得られる情報量は多く、その重要さがわかります。注射針でチクっと刺されるのは大人になっても嫌なものですが、意味を知れば、我慢できますよね。次回は「血液をはかる」仕組みをさらに、動物のケースで掘り下げていきます。

 

(監修:京都府立医大 感染制御・検査医学講師 稲葉亨)

 

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動物の健康をはかる[1] 意外と知らない“ペットの健康” https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/760/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/760/#comments Mon, 28 Oct 2013 02:00:20 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=760 ペットを飼ったことはありますか? なじみ深いのは犬、猫でしょうか。一般社団法人ペットフード協会による「全国犬猫飼育実態調査」によると、平成24年の犬の推計飼育数は1,153万頭、猫の推計飼育数は974万頭とされています。日本の人口と比較して10%近い数字が、人気の高さと多くの世帯で家族の一員として愛されていることを物語っています。また日本では昨今、高齢化社会への対応という課題を抱えていますが、ペットとして飼育されている犬猫も同じく高齢化が進んでいることをご存知でしょうか? ペットフード協会の同調査によれば、7歳以上(人間でいえば44歳以上)の犬が50%を超え、猫においても約40%を占めているのです。

このように私たちにとってペットとは、とても身近な存在でありながら、意外と知らないことがいっぱいあります。その中でも私たちと同じように生きていくうえでとても大切な「健康」については、知らなかったでは済まされないことも。実はペットの「健康」を知るうえでも、「はかる」がとても大事な役割を果たしています。今回はペット、特に身近な犬を中心に「動物の健康」について、「はかる」を通じて学んでいきましょう。


冒頭でも「7歳以上(人間でいえば44歳以上)」という書き方をしましたが、人と動物たちとでは歳を取るスピードが異なります。犬の場合、小型犬のほうが大型犬よりも「若い時」には老化の進行が早いのですが、「中年」になってくると逆に大型犬のほうが小型犬よりも老化の進行が早いと言われております。目安ですが、小型犬は生後1年で人の約17年を数え、生後2年目はさらに人の約7年分、以降1年で人の約4歳分程度歳を取ると言われています。

このことからも示されているとおり、犬は病気の進行が早いことでも知られています。「あれ、ちょっと苦しそうだな……」「これは獣医さんに診てもらわないと!」と気づいた時にはもうだいぶ進行してしまっているなんてことも。ペットの健康のためには早期発見が何より重要になってきます。日々の暮らしの中で、食欲、体温など、触れ合うことで気づける部分も十分にあります。当たり前のことですが、愛情を持って接し、小さな変化に気づいてあげることが重要です。

 

とはいえ、専門家ではない私たちが気づけることは限られていますよね。ペットの体の異常を正しく知るためには、動物病院や獣医師のお世話になる必要があります。症状が出てからの診察はもちろん、言葉を話すことができない動物たちの“声”を聞き、“サイン”に気づくための健康診断も受け付けてくれます。


ここで「はかる」の出番です。動物病院での診察/健康診断では、人間と同じく尿検査やレントゲン、心電図などを用いさまざまな症状を調べますが、まずはじめに行うのが「血液検査」です。上述したように進行が早い動物にとって「血液」を「はかる」ことは、重要な初期診断であり、多くの病気を発見することができます。

私たち人間にとっても、誰しも経験がある「血液検査」。そもそも「血液」を「はかる」とは、どのようなコトなのでしょうか? 次回は「血液をはかる」ことについてお話しします。

 

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ワンちゃんの血が、騒いでいます。 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/716/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/716/#comments Fri, 18 Oct 2013 02:00:27 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=716  wedge_pict_tire

一見、元気そうに走っているワンちゃん。でも、皆さんの知らないうちに貧血やウイルス感染といった症状が、少しずつ進行しているかもしれません。HORIBAの技術は、動物から採血した血液中の血球情報を微量かつ短時間で測定し、獣医さんの的確な診断をお手伝い。動物の健康を、そして飼い主であるご家族の幸せを、長年にわたり培った信頼の分析力で守り続けています。

※広告シリーズ 「見えないけど、見つけられる。」 WEDGE(ウェッジ)2013年11月号より

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