はかる場 » タイヤをはかる http://www.jp.horiba.com/hakaruba はかる場」とは、「はかる」ことで「見える」ようになる世の中のアレコレを紹介するメディアです。 Thu, 19 Nov 2020 04:47:00 +0000 ja hourly 1 http://wordpress.org/?v=3.5.1 タイヤをはかる[4] 「タイヤをはかる」とレースの裏側が「見えてくる」 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/783/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/783/#comments Thu, 31 Oct 2013 05:00:44 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=783 「タイヤをはかる」現場を実際にレポートすべく参加した、全日本学生フォーミュラ大会(取材の模様はコチラ)。取材に協力していただいた東京理科大のレーシングチームに所属する金子さんと、同チームのチームキャプテンを務める安藤さんのお話が聞けました。

実際にタイヤをはかってみた感想と、タイヤをはかることがレースで果たす役割とは? 生の声からたくさんの可能性が見えてきました。


はかる場: タイヤの温度をはかるというミッション、いかがでしたか?

金子さん: タイヤの温度をはかることは、これまでもあったんです。でも、そのときは接触式の温度計で真ん中を1か所だけはかるという感じだったので、今回、外側・中央・内側の3セクションに分けてはかるというのはとても参考になりました。

はかる場: タイヤを3か所に分けてはかって、はじめてわかることがありましたか?

金子さん: レーシングカーは、コーナーを曲がるときにタイヤがしっかりグリップするようホイールにキャンバー(※)を付けるんですが、その倒角が適切かどうかがわかると思います。タイヤがちょうどいい角度になっていれば、内側も外側も同じぐらいの温度になるはずなんです。実際、いろんなチームの車をはかってみると、内側と外側で温度に差がありました。キャンバーの倒角がきつすぎると内側は路面との摩擦で熱くなりますが、外側はちゃんと接地していないので、温度が上がらないんじゃないかと。つまり、タイヤを全部使い切れていない、ということが見えてきました。

はかる場: 内側しか使っていなければ、タイヤの性能を最大限に発揮することはできませんよね。

金子さん: タイヤの温度にはドライバーの特性も大きく関係しているなと思います。コーナーリングのときにドライバーによってクセというか、テクニックに違いがあるんです。後輪を滑らせるか、反対にしっかりグリップして曲がっていくか。滑らせるほど熱くなるので、ドライバーの走り方がタイヤの温度からもフィードバックできるのは大きいですね。

はかる場: 今回はタイヤの温度に注目しましたが、ほかにもレースをする上で温度をはかると役に立ちそうなことはありますか?

金子さん: ブレーキの温度をはかってみたいです。ブレーキディスクが高温になりすぎると、熱でゆがみが出てくるんです。温度を見ればそれを管理できます。あと、うちは結構、車体にアルミを使うんですが、アルミは高温になっても赤くなったりしないので、熱いのがわからないんですよね。間違って触るとやけどします。

はかる場: 安全にもつながるわけですね。

金子さん: そうです。過酷なレースで実際、「うわぁー車が燃えてる」なんてこともあるわけです。走行の合間にあちこちはかって、異常に高温になっていないか、すぐにチェックできるのはいいことだと思いです。あと、断熱もはかってみたいですね。燃料タンクとか。以前に燃料の温度が上がりすぎてトラブルになったことがあって、断熱材を巻いているんですよ。断熱がうまくいっているかなとか。

はかる場: 温度一つとっても、はかるといろいろわかりそうですね。

金子さん: トラブルシューティングのときに、いろいろな角度から見られるようになります。以前、エンジンの高回転が出なくなったとき、電気制御系ばかりに注目していたんですが、実は排気が異常に熱かったということがありました。問題があったときにも、目を向けていなかったところに気づけるので、発見のツールになりそうでおもしろいです。

 

※自動車を正面から見た時、タイヤが内外に傾く角度のこと


放射温度計を使い、実際にタイヤをはかることを体験したことで、金子さんからは「レーシングカーをはかる」アイデアが次々に生まれました。まさに「はかる」と「わかる」を体現していただいた瞬間です。

同じく東京理科大学チームから、チームキャプテンの安藤さんにもお話を聞きました。開口一番「見えないところを見えるようにというのは、僕たちのマシンづくりの根幹にあることなので、すごくいいなと思って共感します」と、安藤さん。彼らの活動における「はかる」の役割を語っていただきました。


東京理科大学チームのレーシングカー。ドライバーの頭上に吸気フィルタ、向かって右側に車載カメラが取り付けられている。

はかる場: ものづくりが中心にある活動を通じて、「はかる」ということは、どのような役割を担っていると思いますか?

安藤さん: レーシングカーでは、目で見てわからないことが多いので、定量的なデータをマシンとドライバーにフィードバックして、それからセッティングを変えたり部品をアップグレードしたりします。見えないデータをはかるのは、マシンのステップアップの基本だと思います。「プラクティスエリアを走ってみて、こういうデータが出ているからいいセッティングができている、このまま行こう」という判断ができたりします。

はかる場: 金子さんにもうかがいましたが、タイヤ以外で温度をはかる場面もあると思います。

安藤さん: 僕たちのマシンは上方吸気というレイアウトを採用していますが、その目的の一つとして吸気温度を下げたいということがあります。エンジンよりも上の方に配置して、路面の輻射熱の影響などを避けています。ただ、それによってマシンの重心が高くなってしまうという新たな課題も生まれます。じゃあどっちを取るかとなったときに、走行中に上と下のあたりではかることができれば、本当に吸気温度が下げられているんだなということで、車体デザインへのフィードバックができます。吸気温度を下げることでどれぐらいパワーが上がると言えて初めて、重心を上げてでも上方吸気を採用しようと判断ができるんです。

はかる場: 温度以外はどうでしょう。たとえば車載カメラを付けていますよね。

安藤さん: ドライバーが見えていないのって、実は足下だったりするんですよ。たとえば「なんでこういう挙動になるんだろう」って考えたときに、録画で足下をよく見てみたらアクセルペダルと一緒にブレーキペダルも踏んでしまっていた、ということが見えたりするんですね。それで踏み間違え防止の板を付けようということになったり。コースだけじゃなくて、コックピットを撮っているんです。「はかる」ことをはじめ、「見えないものを、見えるように」することはレースに欠かせない要素です。


強烈なエンジン音とともに目の前を颯爽と駆け抜ける……。私たちが思い浮かべる華やかなレースシーンの裏側には、弛まぬ努力をささげる人たちがいます。レースを通じてものづくりを取り組んでいる学生さんたちが、「はかる」ことを通してその活動をさらに進化させてくれるのではないかとワクワクしました。

「タイヤをはかる」こと。それは日常生活からレースまで、いろいろなところで性能や安全に大きな役割を果たしています。自動車や自転車に乗るときには、ときどき「タイヤをはかる」技術のことを思いだしてみてください。

 

タイヤをはかる

>>タイヤをはかる[1] タイヤと温度のあつ~い関係
>>タイヤをはかる[2] 触れずに温度をはかる“放射温度計”の仕組み
>>タイヤをはかる[3] 全日本学生フォーミュラ大会で「タイヤをはかる」(前編)

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タイヤをはかる[3] 全日本学生フォーミュラ大会で「タイヤをはかる」(前編) https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/655/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/655/#comments Thu, 24 Oct 2013 02:00:32 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=655 これまで2回にわたり「タイヤをはかる」というテーマで、タイヤのグリップと温度のただならぬ関係や、離れても動いていても温度がわかる放射温度計の仕組みを見てきました。

百聞は一見にしかず。今回は、実際にタイヤの温度を計測してきました。自動車のタイヤにとって極限状態ともいえる、レーシングカーのタイヤの温度はどうなっているのか? 2013年9月3日~7日に静岡・掛川市で開催された「第11回全日本学生フォーミュラ大会」からの現地レポートです。


全日本学生フォーミュラ大会は、学生みずからが構想・設計・製作した車両で“ものづくりの総合力”を競い、次世代の産業を担う人材の育成を目的としたコンペティションです。レースで速く走らせることはもちろん、安全性や静粛性からコストまで、総合評価で競われます。

2003年の開始から11回目を数える今年度は、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど世界各国で開催されているフォーミュラSAEシリーズの日本大会として開催され、国内68・海外11の合計79チームが参加しました。うち6チームは電気自動車での参加です。

はかる場編集部は学生さんたちに混ざりながら、同大会のさまざまなエリアを取材しました。写真でレポートしていきましょう。

 

formula1_取材当日は、ブレーキ性能やドライバーが5秒以内に脱出できるかという安全面、騒音が基準値内に収まっているかなどなど、各種の車検が行われていました。

 

formula2_車検にパスし、車検証が発行されてはじめてレースに出走できます。

 

formula3_基準に満たない車はチームのピットで指摘箇所の修正をして再度車検に臨みます。スポンサー企業のベテラン社員が手ほどきする“修理工房”も設けられていました。

 

さて、いよいよこの日のハイライト、オートクロスです。レースは1周約800m、直線・ターン・スラローム・シケインなどからなる複合コースを約1分で走行し、最高時速は150 km/hを超えます。計4周のタイムを競い、競技ポイントが加算されるだけでなく、翌日行われた大会クライマックスともいえるエンデュランス(約20 kmを30分ほどで走行)の出走組み合わせを決める予選の意味合いもあり、とても重要なレースです。走行後のタイヤはいったい何℃くらいになっているのでしょうか。

formula4_ formula5_ formula6_

 

formula7_はかってくれるのは、学生さん6人。タイヤの温度測定の手順を真剣な面持ちでブリーフィング。左から、立命館大学・安平さん、東京理科大学・金子さん、東京理科大学・楊さん、早稲田大学・ノさん、鳥取大学・石岡さん、早稲田大学・高根さん。

 

formula8_レース走行後のタイヤはレース前のタイヤから、どのくらい温度が上がるのか。比較のためにまず走行前の温度をはかります。

 

formula9_前後左右4輪とも、各タイヤの温度は44.2℃~52.0℃。

 

formula10_このとき、路面温度は46.9℃。タイヤとほぼ同じです。

 

formula11_レースから戻ってきた車のタイヤをはかります。最も高いところで59.8℃まで上がっています。

 

全部で20チームのタイヤ温度をはかりました。この日、最も高かったのは65.3℃。

formula12_ formula13_ formula14_

 

formula15_もちろん、ただタイヤの温度をはかっただけではありません。前後左右のタイヤの温度を、走行中の状態に寄って負荷が異なる外側・中央・内側に分けてはかりました。なんとタイヤの内側と外側とで温度に差があることが判明。チームによっては内側が15℃以上も高い結果になるところがありました。

 

この日はタイヤの温度をはかるのとあわせて、排ガスもはかっていました。一酸化炭素や炭化水素のように人体に有害なガスがどれぐらい含まれているかや、空燃比(空気と燃料と比率)は最適に調整されているかなどが、数値で一目瞭然です。

formula16_ formula17_ MEXA_584_L_03

                                                                                                                                                                                 ※排ガス測定結果の例

 


 

formula18_ミッションを終えてホッとした瞬間。学生さんたちはこの後も、いろいろな「はかる」に興味津々の様子で、長い間測定ブースで話し込んでいました。

 

その中の一人、東京理科大学の金子さんと、同大学のチームキャプテンをされていた安藤さんにお話をうかがいました。次回は日ごろから「タイヤをはかる」ことに携わっている方の生の声から、「タイヤをはかる」意義や可能性を探ります。

 

タイヤをはかる

>>タイヤをはかる[1] タイヤと温度のあつ~い関係
>>タイヤをはかる[2] 触れずに温度をはかる“放射温度計”の仕組み
>>タイヤをはかる[4] 「タイヤをはかる」とレースの裏側が「見えてくる」

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タイヤをはかる[2] 触れずに温度をはかる“放射温度計”の仕組み https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/556/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/556/#comments Thu, 12 Sep 2013 02:00:53 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=556 高性能なタイヤ開発のための試験において、走行中の温度測定は欠かせません。今回は、高速で回転するタイヤをはかることも可能な“離れたところからモノに触れずに温度がわかる”優れもの、放射温度計についてお話しします。


放射温度計の誕生

現在用いられている多くの温度計は、“物体の持つ熱エネルギーがその物体に接する他の物体に伝わる性質”を利用したもので、接触型温度計とよばれています。接触型温度計の原形を作ったのは、かの著名なイタリアの物理学者ガリレオ・ガリレイで、温度変化による空気の膨張・収縮を利用したものでした。その後さまざまな改良が行われ、現在はアルコールや水銀を用いた温度計が一般的に知られていますが、その原理は大きくは変わっていません。

従来型の接触型温度計でははかることが難しいもの、直接触れることができないものをはかることができる放射温度計。放射温度計の誕生のきっかけは、1800年、イギリスの天文学者ハーシェルによる赤外線の発見です。詳細は後述しますが、その後の研究でつくられるようになった高性能の赤外線センサを利用して、放射温度計が誕生しました。放射温度計は、被測定物の表面から放出される赤外線放射エネルギーを赤外線センサを用いて計測し、被測定物の温度をはかります。そのため被測定物に接触することなく、その物体の表面温度をはかることができるのです。それではその仕組みをもう少し詳しく見ていきましょう。


温度と伝導、放射温度計の原理とは

温度と伝導、放射温度計の原理とは寒さや暑さが厳しい時に気温を調べてみたり、体調が悪い時に体温計を使ったりと、私たちは日常生活で何気なく温度を測定します。そもそも温度とはいったいどういうものなのでしょうか? 全ての物質は原子や分子によって構成されています。これらの原子や分子は、その物質の温度が高い時には活発に、低い時には不活発に、絶えず運動しています。この原子や分子の運動エネルギーの平均値を熱エネルギーといいます。温度とは、物質の持つ熱エネルギーを数値化して表したものなのです。

放射温度計の仕組みは、熱エネルギーの伝わり方がベースにあります。熱の伝わり方には、「伝導」「対流」「放射」という3種類の形態があります。

 

 

1.伝導
「伝導」とは、互いに接触した物体において、温度の高いほうから低いほうへと熱エネルギーが移動することです。伝導によって、高温の物体と低温の物体の温度差は次第に小さくなり、最終的に温度が等しくなって熱エネルギーの移動は止まります。接触式の温度計では、このような伝導の性質を利用して対象物体とセンサが熱平衝(先述の温度が等しくなって熱エネルギーの移動が停止)に達した状態で温度を測定しています。

2.対流
「対流」とは、水や空気などの流体が暖められると軽くなって上昇し、冷やされると重くなって下降することによって循環する伝わり方。この循環によって熱が伝えられます。冷暖房の効率などで用いられる概念ですね。

3.放射
「放射」とは、その物質が持つ熱エネルギーを電磁波(可視光線や赤外線など)という形態で周囲に放出する現象のことですが、これだけではピンとこないかもしれません。例えばストーブに手を近づけるだけで、直接手を触れなくても暖かく感じることができますが、これは手がストーブからの放射エネルギーを感じ取ったからです。この場合は、手が赤外線センサの役割をしているわけです。これと同じ原理で、物体から放射される赤外線エネルギー量を赤外線センサが検知し、その赤外線の量から物体の温度を測定するのが放射温度計です。


放射温度計の仕組みと注意点

放射温度計の仕組みと注意点

放射温度計

物体から放射される赤外線エネルギーをセンサで検知し、その量で温度を測定する放射温度計。仕組みは変わりませんが、実ははかる対象の大きさや性質によって求められる仕様が異なります。キーワードは「標的サイズ(測定視野)」と「放射率」です。

放射温度計の計測エリアを、その測定距離における「標的サイズ(測定視野)」として表します。標的サイズは被測定物より小さなものを選ぶ必要があります。被測定物より標的サイズが大きいと、放射温度計は被測定物の周囲も含めて計測してしまい、正確な温度がはかれません。このように放射温度計の視野を被測定物が満たしていない状態を“視野欠け”といいます。

また、物体から放射される放射エネルギーの強度は、物体の温度だけでなく「放射率」と呼ばれる物体固有の係数によって決まります。このため、放射温度計で温度をはかる際には、あらかじめこの値を調べ、放射温度計に放射率補正値を設定しておく必要があります。例えば「人間の皮膚=0.98」「地上に生えている木=0.5〜0.7」「コンクリート=0.94」「水の表面=0.92〜0.96」などなど。放射率が正しく求められていないことも、誤差の要因になります。放射温度計に放射率を設定できる機能がなければ、正しい温度測定はできないということですね。


さて次回はいよいよ、実際に放射温度計を使ってタイヤを「はかる」現場をレポートします。

 

タイヤをはかる

>>タイヤをはかる[1] タイヤと温度のあつ~い関係
>>タイヤをはかる[3] 全日本学生フォーミュラ大会で「タイヤをはかる」(前編)
>>タイヤをはかる[4] 「タイヤをはかる」とレースの裏側が「見えてくる」

 

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タイヤをはかる[1] タイヤと温度のあつ~い関係 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/512/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/512/#comments Thu, 22 Aug 2013 02:00:37 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=512 私たちは日々、移動しながら生きています。自転車から自動車、バスに電車まで、生活の中で多くの乗り物を利用します。それら多くの乗り物に共通して重要な役割を果たすのが「タイヤ」。速度を上げたり下げたり、角度をつけて進路を変えたりと、目的地にたどり着くためには欠かせない存在です。

タイヤはご存知のとおり消耗品です。走行距離はもちろん、あらゆる負荷により、すり減っていくことは避けられません。また、その時々の天候や道路のコンディションに左右されることも多く、安全に使用するためには市場への出荷前や日々のメンテナンスが欠かせません。ここでも「はかる」技術が活躍しています。今回は自動車のタイヤを例にお話しします。タイヤの性能に密接な関係がある「タイヤの温度」を「はかる」、その意味を探っていきましょう。


タイヤの「温度」と「性能」の密接な関係

自動車が走ると、地面に接しているタイヤの温度が上がります。なんとなく想像できますよね。また、ご存じのとおりタイヤはゴム製です。温度が低ければ固く、温度が上がれば柔らかくなります。自転車などで触った経験がある方もいるかもしれません。タイヤの地面に接する部分を「トレッド」と呼びます。トレッドもゴムでできており、柔らかくなれば地面との摩擦が増え、反対に固くなれば摩擦が少なくなります。摩擦が大きくなると、カーブを高速で走っても滑りにくくなったり、急ブレーキをかけてもスリップせずに止まることができます。この状態が“グリップの良い”タイヤ、というわけです。ただ、あまり摩擦が大きすぎるとタイヤが回転する時の抵抗も増えてしまうので、自動車の燃費に悪影響を与えることも。グリップが良いことと、燃費の良さはトレードオフの関係にあると言えます。

タイヤの温度はどのように上昇するのでしょうか? 実際に自動車が走る状況は、真夏のカンカン照りの日もあれば、夜間や冬季などの路面がひんやりするような温度の低い場合もあります。温度の低い場合でも、走行中の摩擦によってタイヤの温度が上昇しますが、上昇の度合いを左右するのは車が走るスピードです。例えば時速120キロメートルで走行している車のタイヤは、走っていない状態から40~50℃も上昇すると言われています。早く走ることを目的とした車やタイヤには、その上昇に耐えうる設計が必要になるのです。

 

タイヤの温度と密接に関係している、タイヤ点検の重要なポイントのひとつが「空気圧」です。タイヤの温度が上昇することで、タイヤの中の空気が膨張し、空気圧が上昇します。車にはそれぞれ車体に合った空気圧が指定されていますが、指定されている数値はタイヤが冷えている時のものです。一方でタイヤの温度が上がった状態ではかった空気圧が指定した数値になっていても、温度が下がった時には空気圧が不足した状態で走ることになります。タイヤの空気圧は不足していても膨張してしまっていても、破損の原因になるうえに寿命を縮めてしまいます。ドライバーの方は自分や同乗者の安全のためにも、日ごろの点検で意識することが大切です。


タイヤの性能と温度の密接な関係についてお話してきました。タイヤメーカーでは、季節・天候・時間とさまざまに変化する温度状況の中でも、適度な“グリップの良さ”と“燃費性能”のバランスをとるべく、日夜研究開発を行っています。温度を「はかる」ことは、とても大切な役割を果たしています。

ところでタイヤの温度を「はかる」にはどうすればよいのでしょうか? 当然ながら走行中のタイヤは高速回転しており、体温計のように触れた状態ではかることはできません。そこで登場するのが「放射温度計」です。耳慣れない名前の温度計ですが、実はこの温度計、“離れたところからモノに触れずに温度がわかる”優れものなのです。

次回は触れずに温度をはかる「放射温度計」の仕組みに迫ります。

 

タイヤをはかる

>>タイヤをはかる[2] 触れずに温度をはかる“放射温度計”の仕組み
>>タイヤをはかる[3] 全日本学生フォーミュラ大会で「タイヤをはかる」(前編)
>>タイヤをはかる[4] 「タイヤをはかる」とレースの裏側が「見えてくる」

 

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走ると、つい熱くなりがちですが。 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/465/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/465/#comments Tue, 20 Aug 2013 02:00:15 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=465  wedge_pict_tire

ドライブ好きなら、グッとアクセルを踏んだり、ハンドルをきりたくなる場面。ドライバーの気持ちが熱くなるほど、当然タイヤにも高い摩擦熱が生じてしまいます。HORIBAの技術は自動車用タイヤの性能試験において、その表面から発する赤外線を捉えて温度の変化を非接触で測定。良質なタイヤ開発をサポートし、ドライブの安心・快適を足元からしっかりと見守っています。

※広告シリーズ 「見えないけど、見つけられる。」 WEDGE(ウェッジ)2013年9月号より

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