はかる場 » ゴミをはかる http://www.jp.horiba.com/hakaruba はかる場」とは、「はかる」ことで「見える」ようになる世の中のアレコレを紹介するメディアです。 Thu, 19 Nov 2020 04:47:00 +0000 ja hourly 1 http://wordpress.org/?v=3.5.1 ゴミをはかる[2] 有害? 再生可能? 安全なゴミ処理の第一歩は、「はかる」こと https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1618/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1618/#comments Fri, 29 May 2015 08:05:46 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=1618 私たちは日々の暮らしの中で多くのゴミを排出します。人口の増加とともに増え続けるゴミの量は、ゴミを出す人間に与えられた大きな課題です。リサイクルをはじめ分別の意識や仕掛けは進んでいますが、自分たちで処理できるものもあれば、処理に専門性を擁し、然るべき機関での処理が必要なものも。その代表格が産業廃棄物です。

前回は、この産業廃棄物の処理に「はかる」が役立つ、というところまでお話しました。非接触、非破壊で「はかる」ことができる、蛍光X線分析装置、それも持ち運びが可能なハンドヘルド型蛍光X線分析装置が用いられています。ゴミに含まれる成分を教えてくれるこの機器が、さらに明らかにする事実とは。HORIBAで同製品を担当している瀬川真未さんにお話をうかがいました。


産業廃棄物処理の第一歩 はじめに「ゴミをはかる」ことの意義

産業廃棄物の処理と聞いて、どんなイメージが浮かびますか? 大きな工場や大掛かりな機器を思い浮かべますが、ハンドヘルド型蛍光X線分析装置でゴミをはかることは、どのような役割を担っているのでしょうか。サイズがサイズだけに細かくなってから? いえいえ、反対です。最初期にこそ、使用されるべき機器なのでした。

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はかる場:産業廃棄物処理の過程において、ハンドヘルド型蛍光X線分析装置を用いてゴミをはかることが行われているとうかがいました。どのような工程で使用されるのでしょうか?

瀬川:産業廃棄物の約半分はリサイクルされています。ですから産業廃棄物の中間処理では、再利用することを第一に考えて、分別・選別、破砕・切断・圧縮、焼却などの工程があります。そこで最初の作業となるのが、リサイクルしやすいように廃棄物を適切に分けることです。再利用できるかどうかを見極める。有害物質が含まれていれば当然、再利用には回せません。そのためには、廃棄物に含まれている成分をチェックしなければなりません。ハンドヘルド型蛍光X線分析装置は、工程の早い段階で登場するんです。

はかる場:処理場に持ち込まれる産業廃棄物は実に多種多様です。どのように調べるのでしょうか。

瀬川:まず全体をざっとスクリーニングして、有害物質の有無をチェックします。そこで有害物質の含まれている可能性がある場合は、詳細分析に回します。このスクリーニングに使われているのがハンドヘルド型蛍光X線分析装置です。手持ちで使えるため、ゴミの形状やサイズ、はかる場所も選びません。

先端部分を廃棄物にできるだけ近づけ、持ち手の部分のトリガーを引くとX線が放射され、廃棄物からの反応で蛍光X線が出てきます。これを再び機器がキャッチし、成分を判別します。かかる時間はおよそ1分程度でしょうか。

はかる場:蛍光X線によって成分を分析するということは、以前はかる場でも紹介した「X線分析顕微鏡」と同じ仕組みなのでしょうか。

瀬川:その通りです。廃棄物にX線を照射すると、中に含まれている物質の原子とX線が相互作用を起こして蛍光X線が出ます。このとき出てくる蛍光X線は、各元素に特有なものなので、出てくる蛍光X線を調べればどんな元素が含まれているのかがわかるのです。また、元素によっては蛍光X線の強さをはかることで含有量までわかる場合もあります。

処理場には大量の廃棄物が持ち込まれるため、迅速に処理を行う必要があります。そこで求められるのは、有害物質が含まれているかどうかを手早く判別することです。有害物質が含まれていて、詳細分析をするとなるとコストも時間もかかります。まず有害物質が「ない」とわかることは、とても重要なのです。


有害物質は時代を超える……ゴミをはかることは安心・安全社会の盲点に気づくこと

不法投棄などのニュースと共に報じられることが多く、産業廃棄物すべてが有害に思えてしまうこともあります。実際には繰り返してきたように、再生利用が可能なものもありますし、また産業廃棄物に関する規制が進むことで根本的な解決策も多数講じられています。では、ゴミをはかることで見つけられる有害物質とは。

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はかる場:産業廃棄物処理の初期段階で使用されるということですが、選ばれる理由は何ですか?

瀬川:やはり手持ちで作業できる手軽さ、そして結果が出るまでのスピードがあります。さらに、蛍光X線分析という技術は非接触・非破壊で行えることが最大のメリットです。ゴミをいたずらに触ったり、崩したりすることで有害物質を発生させるリスクがあるからです。

また、X線は取り扱いに注意しなければなりません。操作部分はタッチパネルになっていて、スマートフォンのような快適な操作性を実現していますが、手にした人が誰でもすぐに作業できてしまわないように、パスワードでのログインが求められ、しっかりロックをかけられるようにして、安全に配慮しています。機器自体にカメラがついているので、どの部分を測定しているのかも一目瞭然です。

はかる場:測定するデータの取り扱いはどのようになっているのでしょうか?

瀬川:Wi-Fiを通じて測定結果をパソコンに転送することもできますが、機器自体に設定をしておけば規定した有害物質の量でアラームを表示させるなど、その場で判断できることがポイントです。たとえばヒ素の制限値を何ppmとあらかじめ設定しておけば、あとははかるだけで指定した危険の判断ができます。

そうそう、作業時は軍手など手袋をはめていることも多いですが、そのままでも反応できるようなタッチパネルを採用しています。また、Wi-Fiを通じてスマートフォンで本体と同様の操作ができます。現場向きの機器、といえますね。

はかる場:産業廃棄物処理の最初期のスクリーニング、実際にはどのような有害物質が見つけられるのでしょうか?

瀬川:産業廃棄物に関しては法律や規定も整備され、製造段階での改善も進んでいます。それもあり、中間処理の段階で発見され、問題となるものは古めの製品だったりします。身近な例を挙げると、液晶テレビですね。液晶テレビのパネルには、ガラスの消泡剤、つまりガラスに気泡ができるのを防ぐための添加剤としてヒ素やアンチモンなどの毒性物質が使われているケースが過去にありました。

はかる場:最近の製品では使われなくなりましたが、古いテレビ、つまり廃棄物として持ち込まれる古い製品には注意が必要なんですね。

瀬川:少しゴミからは外れますが、同じように古くなったものの処理として注目されているのが、木造住宅の廃材処理への活用です。木造住宅の土台部分に使われる木材は、基本的に防腐剤処理されています。ところが、その防腐剤に発がん性物質や重金属などの有害物質が含まれているケースがあります。

たとえばシロアリなどの害虫やカビによる腐食から木造住宅を守るために使われていたCCA系木材保存剤。これはクロム、銅、ヒ素を含みます。クロムとヒ素は発がん性物質として知られていますね。もっとも危険性が明らかになった現在は、国内ではほとんど使われていません。

はかる場:この先寿命を迎える木造住宅も多そうですし、無視できない問題ですね。

瀬川:まさにその通りです。1997年に水質汚濁防止法が改正されて、ヒ素の排出基準が強化されました。これによりCCAの使用は減少したのですが、問題はそれ以前に建てられた木造住宅で、CCAが使われている可能性があるのです。日本の木造住宅の平均寿命は一般に30年ぐらいと言われています。ということは、今から30年前、つまり1985年頃に建てられた木造住宅の解体がそろそろ始まっていることになります。それ以前に建てられたものも含めて廃材処理は要注意です。

産業廃棄物だけではなく、これから大量に出てくる住宅廃材の安全な処理のためにも、お役に立てればと思います。


最後に、ハンドヘルド型蛍光X線分析装置を使ってゴミをはかることへの期待をうかがいました。

sub3「産業廃棄物の処理は、工程を経ていくごとに大掛かりになっていきます。時間も、技術もコストもかかります。それゆえに、良くないこととわかっていても目をつぶってしまう、不法投棄のような問題も起きてしまっているんですね。ハンドヘルド型蛍光X線分析装置は、詳細分析のような働きこそできませんが、処理の初期段階で有害物質の有無を判別できるのが最大の利点です。持ち運びができるサイズで場所を選ばず、時間もかかりません。これによりまず有害物質が含まれている、詳細分析や相応の処理が必要なものをわけるだけで、とても多くのリスクが減らせるのではと思っています。産業廃棄物を安全に廃棄するための第一歩として、使用していただけたらと思います。」


取材の最後には「同様の技術がスマートフォンに搭載されたら?」など、家庭での実用化ができたらと、想像も膨らみました。それくらい身近なお話でしたよね。ゴミや廃材による汚染は、私たちの暮らし、住む家にすら大きく関係してきます。今、大きな課題となっている産業廃棄物処理の現場での「はかる」に注目しましたが、ゴミをはかること自体は私たちひとりひとりが関心を持つべきテーマなのかもしれません。気になった方は、明日の朝に出すゴミがどこへ行き、どこでどのように処理されるのか、そんなところから調べてみてはいかがでしょうか?

 

ゴミをはかる

>>ゴミをはかる[1] 安全に処理するために、ゴミの中身をはかる

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ゴミをはかる[1] 安全に処理するために、ゴミの中身を知る https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1613/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1613/#comments Fri, 29 May 2015 08:00:50 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=1613 日本で一年間に出されるゴミの量を、ご存じでしょうか? 主に家庭から出る一般廃棄物が約4,500万トン(平成24年度実績・環境省調べ)、さまざまな事業によって排出される産業廃棄物が約3億8,000万トン(平成23年度実績・環境省調べ)。この膨大な量のゴミをどのように処理するのか。それはゴミを生み出している私たちに突きつけられた課題です。

平成24年の時点で、一般廃棄物はリサイクルに回るのが約20%、残りのほとんどが粉々に砕いたり燃やしたりしたあと、埋立処分場で処理されています。産業廃棄物は平成23年度の時点で、約53%が再生利用され、残りは全体の約3%のボリュームまで減量化されて最終処分場に埋め立てられています。生活者の間でも環境問題に対する意識が高まるにつれて、リサイクル(資源化)、リデュース(減量)、リユース(再利用)の3Rに、リファイン(分別)、リペア(修理)の2つを加えた「5R」の考え方が定着してきました。その結果、一般廃棄物の総量は、平成23年度から24年度にかけて約20万トン減っています。またゴミ処理技術の進歩により、出たゴミを大幅に減量できるようにもなってきています。ゴミを出す時点の工夫、ゴミを処理する技術。私たちは二つのアプローチで、ゴミ処理問題に向き合っています。

私たちの社会は、自分たちで排出したゴミとその処理の問題に、しっかりと向き合っています。一方でゴミ処理を行ううえで一点、見過ごせない問題があります。それは、ゴミの中に有害物質が含まれている場合です。ゴミをいかに処理するかという大きな問題に取り組む中で生まれる新たな問題。ここに「はかる」が関係しています。


それぞれができることを……ゴミ処理の基本はゴミの分別

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ゴミ処理では、中身の分別が重要です。リサイクルやリユースに回すために、あるいは燃焼・粉砕して減量する場合も、中身を確認して有害物質を取り除かなければなりません。たとえば、有害物質を含むゴミを処分場に埋めてしまうと、環境汚染を引き起こしかねません。廃棄物から有害物質が漏れだし、それが地中に染みこんで、河川の水や土壌を汚染するのです。

先にもお話したとおり、一般廃棄物については分別収集が徹底されるようになってきました。分別方法は自治体ごとに細かく定められています。そのひとつにペットボトルのキャップとラベルを分別し、リサイクル可能なPET樹脂製のボトルを回収する仕組みがあります。ちょっと前ならば大げさに思えたことも、今では自然と行っていませんか? また、家電製品のリサイクルは平成13年に「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」が制定され、現在はこの法律に則ってリサイクルが進められています。家電製品はペットボトルと同じように、家庭で分別して捨てることはできません。家電製品のリサイクルは、廃棄物の削減と金属やプラスチックなどの資源の再利用が目的ですが、エアコンや冷蔵庫には冷媒としてフロンが、液晶テレビの画面には水銀やヒ素が使われていることもあります。これらを家庭では処理できないため、専門の業者が処理を請け負い、リサイクルする資源と有害物質に分別する必要があります。そのため、リサイクルと回収・運搬の費用を使用者が負担することが定められました。

どちらも人々の暮らしの中で排出されるゴミですが、その中身によって処理の難しさも、役割も変わってくるのです。


産業廃棄物の中身

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テレビや新聞でもたびたび大きく取り上げられているので、なんとなくイメージされている方も多いことでしょう。産業廃棄物は、処理するために一般廃棄物よりも高度な処理が求められます。産業廃棄物の要件は、廃棄物処理法第二条に以下のように定められています。

「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)」

これら事業活動によって生じた20種類の廃棄物を産業廃棄物と呼び、示すとおり内容は多岐にわたります。建設現場で出るコンクリートやレンガの破片(がれき類)、食品加工場から出る魚や獣の“あら”もそのひとつです。

産業廃棄物のなかでも、引火性の廃油や、強い酸性/アルカリ性の廃液、医療機関などから出される使用済みの注射針、毒性の強い水銀や鉛などは特別管理産業廃棄物と呼ばれます。これらは、爆発性、感染性、毒性が強く、適切に処理しなければ私たちの健康や生活環境に大きな被害を及ぼすおそれがあります。排出されてから処理されるまでの間、常に注意して取り扱うことが定められており、これらを排出する事業者には、特別管理産業廃棄物管理責任者の選任など、通常の産業廃棄物よりも特別な管理や処理方法が義務づけられています。


ゴミなのに丁寧に? 非破壊でゴミをはかる

産業廃棄物は扱いを誤ると私たちの生活に悪影響を及ぼす危険性が大きく、処理する際は詳細な決まりにしたがって、適切な処理が求められます。適切に処理するためには、処理前に廃棄物内に含まれているものを確認し、リサイクル可能な資源や有害物質を分別する事が欠かせません。ここに「はかる」技術が活かされています。

以前「文化財をはかる」シリーズでは、はかる対象である文化財を保護するために非破壊であることが求められました。対象物にX線を照射し、対象物を構成する成分を明らかにする仕組み。ゴミをはかる際にも、この方法が役に立ちます。産業廃棄物に有害物質が含まれている可能性がある以上、手で触りながら分別することには危険が伴います。また、ゴミに含まれる有害物質の中には、その物質単体で有害なものだけではなく、同じくゴミの中に含まれた成分と反応することで有害物質化するものも。手を触れずに、かつ対象をいたずらに崩さずに「はかる」ことが、必然的に求められるのです。

とはいえ、同記事で紹介したようなX線分析顕微鏡にゴミを入れてはかる、なんてことはできません。そこで、ゴミをはかる現場では携行型の「ハンドヘルド型蛍光X線分析装置」が用いられています。次回は、手軽ながらも多様なニーズに応える「ハンドヘルド型蛍光X線分析装置」を通じて、「ゴミをはかる」世界をさらに深堀していきます。


私たちの暮らしに密接するゴミ問題。ひとりひとりがゴミ箱に捨てる際の行動はもちろんですが、一方で見えないところで重大な作業も行われています。そこで活躍する「ゴミをはかる」技術。ハンドヘルド型蛍光X線分析装置はいったい、何を見つけてくれるのでしょうか? そこには有害物質だけではなく、意外にも価値ある発見まで含まれているようです。次回、「ゴミをはかる」技術に迫ります。

 

ゴミをはかる

>>ゴミをはかる[2] 有害? 再生可能? 安全なゴミ処理の第一歩は、「はかる」こと

 

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金目のモノが、埋もれているかも。 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1527/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1527/#comments Fri, 19 Dec 2014 02:00:50 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=1527  

ゴミを分別して捨てることが当たり前になっている今日でも、燃えるゴミと燃えないゴミはついうっかり一緒に捨ててしまいがち。それが一般家庭から出るゴミならまだしも、工場や建設現場から出るゴミの中には、焼却時に有害物質を発生させるモノが混入しているかもしれません。HORIBAの技術は、それら廃棄物に含まれるモノの元素を、簡単&スピーディーに検出することが可能。大気を汚さないクリーンで安全なゴミ処理環境の構築に、私たちも日々情熱を燃やし続けています。

 

※広告シリーズ 「見えないけど、見つけられる。」 WEDGE(ウェッジ)2015年1月号より

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