はかる場 » 野菜のおいしさをはかる http://www.jp.horiba.com/hakaruba はかる場」とは、「はかる」ことで「見える」ようになる世の中のアレコレを紹介するメディアです。 Thu, 19 Nov 2020 04:47:00 +0000 ja hourly 1 http://wordpress.org/?v=3.5.1 野菜のおいしさをはかる[3] おいしい野菜を届けるために「はかる」 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1419/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1419/#comments Tue, 21 Oct 2014 02:00:02 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=1419 野菜のおいしさにとって重要な意味を持つ「硝酸」。前回はHORIBAの硝酸イオンメータを使って、野菜に含まれる硝酸のはかり方を紹介しました。「野菜のおいしさをはかる」連載の最終回は、前回お話をうかがったHORIBAの小松さんとともに、実際に野菜を育てる現場を訪ねます。野菜のおいしさに人一倍こだわりを持つ、高付加価値野菜を提供している京都の農家さんのお話です。


野菜のおいしさをはかる現場へ

京都市の北部・上賀茂は昔から農業を営む人が多い地域。今や全国的に知られるブランド “京野菜”も、古くから生産されています。今回、はかる場編集部が訪れた「森田農園」は、上賀茂で100年以上続く農家さん。お話をうかがった代表の森田良彦さんで3代目の老舗です。森田農園では夏場は果菜類(実や種を食べる野菜)、冬場は根菜と葉物野菜と、1年を通じてさまざまな野菜をつくられており、名だたる料亭やレストラン、ホテルからもご指名を受けるそうです。

「上賀茂という地域では昔から有機栽培が根付いていた」という森田さん。昔ながらのスタイルを大切にする一方で、硝酸イオンをはじめとしたデータを収集するなど、常に新しい取り組みで野菜のおいしさを追求されています。森田さんの野菜作りには、どんなこだわりが詰まっているのでしょうか?


「土に始まり土に終わる」……森田農園の哲学の源は土にあり

高付加価値野菜にこだわりを持って農家を営む森田さん。そのこだわりのルーツは岩手に、ベースは土にありました。

はかる場:高付加価値野菜をつくるようなきっかけのようなものはあったのでしょうか?

森田さん:もともと有機栽培をやってきたわけですが、有機野菜がブームになってスーパーの方や市の職員さんとお話しすると、かなり農業に対して勉強されていることがわかりました。私もこのままではいけないと、20年ほど前に岩手に行きました。半年ぐらいでしょうか。当地の農家はもちろん、大学の研究者、企業などが集まった勉強会に参加したんです。

はかる場:その場ではどういったことを学ばれたのでしょうか?

森田さん:ざっくり言うと「光合成」、「発酵」、それと「微生物」に関する知識ですね。日本中から集まってきた人たちに、先行して取り組んでいる農家や、企業の方がレクチャーする。その勉強会の流れでHORIBAさんともつながりました。いろんなメーターをつくられているので講師として参加してもらえないかと。勉強会で学んだことはその後の森田農園のこだわりにつながっていると思います。「土に始まり土に終わる」。

はかる場:土の研究ですか。具体的にお話いただけますか?

森田さん:当時は有機栽培という言葉が独り歩きしていたんですよ。認定農家でないと名乗れないという規格ばかりが騒がれたり、農薬や化学肥料の基準が曖昧だったり。名前が先走っていて、味は二の次。でも野菜の本質は土なんです。土を知らなかったら有機栽培なんてできない。どんな土が単粒なのか、団粒はどういう土なのか、双子葉はどんな土を選ぶのか。何より土と野菜のおいしさは密接に関係しています。育てるためにやたらに肥料を入れればいいというわけではない。硝酸なのか、カリウムなのか、pHなのか。育てる野菜に何が不足しているのかを見極めて、土を通じて肥料を与えなければいけません。

はかる場:なるほど、土を知らずして、おいしい野菜はありえないというわけですね。

森田さん:たとえば、野菜ができなかったら一度、土自体を太陽熱処理しなさいと。雑菌がたくさんあるのかもしれないし、肥料をあげすぎているのかもしれない。それを太陽熱処理して土自体をきれいにします。そこからはじめなさいと。


こだわりのおいしさを保つために「はかる」が果たしている役割とは

これまでの連載でお話してきたとおり、野菜のおいしさには硝酸イオンが大きく関わっています。そのあたりについて、森田さんにもうかがいました。

はかる場:まず土を知る。そのために「はかる」ことが必要になるんですね。

森田さん:それまでは勘に頼るしかありませんでしたが、やはり消費者の方に納得してもらうためには数字です。生産者としても、数字で見れば、肥料の与えすぎのような無駄なコストを省くことが、結果として利益にもつながります。今でもおいしさのバロメーターは私がおいしいと思うかどうか、「ベロメーター」ですが(笑)、おいしいと思ったら再度成分をはかってみるんです。それが予測やそれまでの基準と合っているか確認する。それにより、品質を安定させる目安ができますよね。

はかる場:硝酸イオンについてはいかがですか?

森田さん:硝酸イオンでいえば、先ほどもお話した肥料の節約がひとつですね。樹勢状態を見る時にも使います。虫がつく時は何かが起きているのですが、はかってみると正常な時と虫がつく時では数値が違います。そういった経験でわかる変化を見つけた時に、すぐにはかって確かめることができています。

はかる場:硝酸イオンメータは、どのような種類の野菜に、またどれくらいの頻度で使われているのですか?

森田さん:硝酸のたまりやすい野菜、ほうれん草や小松菜などの葉野菜ですね。頻度はそんなに高くなくて、収穫の手前などでしょうか。

はかる場:この機器を使って、品質に直結するようなことはあるのでしょうか?

森田さん:品質改良というよりは野菜がもつもともとの性格を知ることでしょうね。硝酸値にしても、もともと高いものもあれば低いものもある。そのうえで今度は、市場での反応を実際に見聞きします。出荷時はベストのものを出したけれど、店頭に並んですぐに黄色くなっていることもあります。おいしさについても、お客さんの求めるものを出さなければ売れません。お店の担当者さんから反応を聞いて、求められるおいしさに近づける、そういったことはありますね。

※樹勢(じゅせい):樹の勢いを指し、枝葉などの発育状態もあらわします。


森田農園のビジョンに、高付加価値野菜を生み出す先進農家たるゆえんを見た

 

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小松さんと森田さん。野菜のおいしさにかける思いは同じです!

 

おいしい野菜を提供する。「はかる」が果たしている役割はそのベースとなる、土の状態や野菜の性質を知るところにありました。しかしそれも一部に過ぎません。森田さんが思い描く、高付加価値野菜≒おいしい野菜の未来とは。

はかる場:森田農園の野菜のおいしさへのこだわりは、原点に忠実であることと感じました。その一方で、そうしたものづくりの姿勢は、今の世の中が求めている最先端なのではないでしょうか。

森田さん:今考えていることもそのようなお話です。消費者ニーズに合うものを、ということであれば会員制にして、個人単位でオーダーメイドの野菜をつくったり。うちは耕作面積もそんなにないですし、大量生産には向いていません。それに今もそうなのですが、消費者の方々の顔が見えることは生産するうえでもとても役立ちます。やはり安全性が求められているのは強く感じますし、その点でもお互い顔が見える関係はいいですね。農業ですが「生命の産業」だと思って取り組んでいます。生命を維持するためには、朝昼晩、栄養もバランスが取れた食事が必要です。

はかる場:実現のためには知識も技術も求められますね。

森田さん:そうなんです。高齢化社会になれば、病気が原因で食事に制限がかかる人も増えるでしょう。たとえば透析している人はカリウムが食べられない。そうした人たちに食べてもらえる野菜をつくるためには、全部数値化して見せなければいけない。知識と「はかる」技術がないとできません。ここまでしていると、農業という産業に対する見え方や考え方も違ってきます。先日も女子会(!)で農業を見学したいというオファーがありましたし、過去には「婚活」に絡めたこともあります。人が集まれば地域貢献にもつながりますし、そしてそこに参加する人たちはやっぱり、おいしい野菜を求めているんですよ。

「はかる」で言えば、”照度”をはかりたい。曇天と晴天では光合成に必要な量がどれくらい違うのか。昨今の異常気象もありますし、天候によって野菜の成長が遅れることも多いんです。不足した分をLEDの光で補うとか。難しいですよ、農業は。経営面でも、どのくらいの値段をつけたら値ごろなのか、突き詰めると心理学を学ぶ必要があったり……。恐ろしく奥深い。でも一生懸命やって、お客さんがニコって笑ってくれたら、「やっててよかったなあ」って思いますからね。やっぱり笑顔は大切ですね。


「はかる」を駆使して高付加価値野菜を栽培する先端農家。その実像は、原点に忠実に野菜作りに勤しむ、地域に根ざした農家でした。私たちがスーパーやレストランでおいしい野菜と出会う時、その向こう側には、多方面にわたって学び、多くの実践を重ねる農家の姿があるんですね。

森田さんがおっしゃるような、個人のニーズに沿ったオーダーメイドの野菜が提供される未来が来るのなら、私たちにも野菜を「はかる」ことが、もっと身近になる日がやってくるかもしれません。

 

森田農園

京都市北区上賀茂池端町39-1
TEL: 075-712-4889
FAX: 075-791-5986
「おいでやす」
営業時間 10~18時 不定休
※森田農園の野菜が買える直売所です

 

野菜のおいしさをはかる

>>野菜のおいしさをはかる[1] 「おいしさ」を「はかる」ことはできるの?
>>野菜のおいしさをはかる[2] 野菜の成長とおいしさを左右する「硝酸イオン」をはかる

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野菜のおいしさをはかる[2] 野菜の成長とおいしさを左右する「硝酸イオン」をはかる https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1198/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1198/#comments Thu, 29 May 2014 02:00:11 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=1198 人が食事で感じる「おいしさ」は、どうしても人それぞれ。客観的な評価ができないものかと、古くから研究が進められています。前回お話したように、おいしさを感じるメカニズムや、基本となる味を構成する成分はすでにさまざまな形で明らかにされています。一部では「はかる」ことで数値化することにも成功しています。

今回は野菜の成長とおいしさに影響を与える「硝酸イオン」を「はかる」ことをテーマに、もう少し深く掘り下げていきましょう。硝酸イオンをはかることができる「硝酸イオンメータ」を製造・販売しているHORIBAから、小松佑一朗さんにお話をうかがいました。


なくてはならない存在……野菜にとって「硝酸イオン」とは?

なぜ硝酸イオンをはかることが野菜のおいしさに関係してくるのか。それを知るためにまずは、硝酸イオンと野菜の関係からうかがいました。

komatsu2はかる場:硝酸イオンをはかるお話の前に、硝酸イオンと野菜の関係を教えていただけますか?

小松さん:はい、もう少し手前にさかのぼりますね。野菜を含む植物は、土壌や肥料、日光、大気中の物質などから必要な要素を取り込み、栄養にします。野菜の栽培では肥料が欠かせませんが、特に「肥料の三要素」とも呼ばれる窒素・リン酸・カリウム、この3つを多く要します。窒素成分は、主に畑でつくられる植物に硝酸(NO3)の形で摂りいれられます。葉をつくったり、植物を成長させる作用があります。

はかる場:野菜にとってはなくてはならないものなんですね。

小松さん:根っこから吸収され、日光のエネルギーなどを使いながら有機物化します。葉や茎になったり。二酸化炭素を材料にした光合成をイメージしてもらえばわかりやすいと思います。人間でいえば、ご飯を食べて筋肉をつけるような過程ですね。

はかる場:前回の記事では、肥料を与えすぎると土壌中の硝酸イオンが増加し、野菜が吸収しすぎると野菜自体を傷めてしまう可能性について触れました。

小松さん:はい。肥料には三要素がしっかり摂れる量含まれていますので、やりすぎてしまうと必然的に硝酸イオンも増えます。野菜は根っこから養分を吸収するので、まずこの根っこが傷んでしまいます。傷ついた箇所は病原体が入りやすいので、結果野菜自体が病気になる、弱ってしまう。これも先ほどの人間の例で考えればわかりやすいです。いくら食べ物にめぐまれていても、それらを全部食べたら食べただけ、成長するわけではないですし、健康になれるわけでもないですよね。場合によっては、これらの要素をはじめから多く含んだ土壌も存在しますし。いわゆる肥沃な土地というやつですね。そのような環境であればそもそも肥料の量が少なくて済みます。


硝酸イオンが野菜のおいしさを左右するポイント

komatsu1はかる場:硝酸イオンを多く吸収しすぎると、野菜に「苦味」や「えぐ味」が残ってしまうそうですね。

小松さん:人が苦味を感じる物質にはさまざまな要素があり、硝酸イオンもそのひとつ。主に葉物野菜においては硝酸イオンの占める割合が多く、これが苦味の原因になっています。硝酸イオンを吸収する量が多ければ必然的に野菜に含まれる量も多くなります。硝酸イオンは葉をはじめとした植物の「体」をつくっていく過程で使われるものですが、過度に吸収しても使い切れずに残ってしまうんですね。これが肥料をあげすぎた野菜に「苦味」や「えぐ味」が残る原因です。

はかる場:ここで「硝酸イオンをはかる」ことと「野菜のおいしさをはかる」ことがつながりますね。

小松さん:そうですね。前提として窒素・リン酸・カリウムをはじめとした肥料は、野菜の成長に欠かせません。しかし、農家の方々は野菜を育てるだけではなく、おいしい野菜として出荷し、消費者に届けたいと思って生産されています。そこで本来成長のために消費されるべきものがうまく使われず、「苦味」や「えぐ味」として残ってしまうのは避けたいですよね。

はかる場:となると、野菜のおいしさのために硝酸イオンをはかる現場はやはり、農家さんですか。

小松さん:高付加価値野菜と呼ばれるような、“こだわり”を前面に押し出している農家さんでの利用が多いです。作物でいうと、硝酸イオンが葉の成長に関与していることもあり、ほうれん草や小松菜などの葉物の栽培で多く使われています。土壌のチェックはもちろん、出荷前に出来上がりを確認される際にも。一部、スーパーマーケットでも導入されているところがあります。生産者と同じように高付加価値を謳っているお店ですね。売り場に並んでいるものの品質を保ったり、バイヤーさんが入荷時の品質をそろえるために、といった具合です。

ある数値より上だったら「苦い」、下だったら「苦くない」と絶対的な基準があるわけではありません。生産者や販売店それぞれに基準を設けられ、どちらも目的はお客様に安定して「おいしい野菜」を届けるために「はかる」技術が使われています。


実践! 野菜の硝酸イオンをはかる

はかる場:それでは実際に「硝酸をはかる」方法についてうかがいます。基礎的なことですが、仕組みを教えてください。

小松さん:今日は「LAQUAtwin(ラクアツイン)」という硝酸イオンメータを使って、野菜の搾り汁をはかります。野菜の水分中にどれだけの硝酸イオンが溶けているのかを調べるんです。量ではなく、mg/l(ミリグラム・パー・リッター)という単位で、1リットル中に何ミリグラム溶けているかという割合で表します。また、葉や茎、野菜の部位によって硝酸イオンの量が違うため、まんべんなくいろんな箇所を調べるケースが多いですね。

 

vege2_12搾り汁を先端に入れます。今回はレタスを使いました。

vege2_4蓋をして……

vege2_5絞る! 十分な量が出るまで絞ります。

vege2_7あとは出てきた値を読むだけ。カンタン!

 

はかる場:測定にかかる時間はどれくらいなんですか?

小松さん:だいたい1分以内で終わります。

はかる場:早いですね! 簡単に言うと、対象となる野菜の水分から硝酸イオンだけを見つけるということですよね?

小松さん:そうですね。硝酸イオンによく反応する膜が作用します。LAQUAtwinのラインナップには、同じくイオンをはかるものではナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン。それ以外にもpH、塩分、電気伝導率をはかるタイプがあり、全部で7種類あります。それぞれ対象に適した仕組みで知りたい成分を数値化します。

はかる場:このコンパクトさは魅力ですよね。

小松さん:現場に持ち込めるところで好評いただいてます。かつては大型だったり、pHだと試験紙を使わざるを得ませんでした。しかし試験紙ですと、相手が野菜だともう、試験紙自体に野菜の色が移ってしまったり。夜間や悪天候の中でしたら結果を確認するのも一苦労です。試験紙代も節約できますしね。

小松さんは実は、LAQUAtwinシリーズの生みの親(!)。今回の硝酸イオン計だけでなく、7つのラインナップすべてを使って世の中のあらゆる「はかる」に挑戦されています。その模様を近日、「はかる場」の新連載としてお届けしますので、乞うご期待!


理想の“おいしい”野菜は「食べる薬」?

komatsu4はかる場:やはり肥料のやりすぎが起こる要因としては、大量生産や生産を急ぐことが考えられるのでしょうか?

小松さん:中には根っこが傷ついていても出荷してしまう農家さんもいると思います。しかし、肥料のあげすぎは土壌自体をダメにしてしまうこともあります。

はかる場:硝酸をはかる意味、硝酸をはかることが野菜のおいしさに果たしている役割はそのあたりにありそうですね。

小松さん:おいしくて健康な、体に良い野菜をつくってほしい、ということですよね。野菜を育てるために肥料として必要、だけどあげすぎるとおいしさを損ねてしまう。硝酸をコントロールしなくてはいけない。そのために「野菜とお話ができる」ためのツールとしての「はかる」というか。

おいしさと健康はイコールだと思います。継続して食べることができて、健康にも寄与してくれるような。「食べる薬」と呼ばれるような野菜が究極の目標ですね。「硝酸イオン」と「苦味」をはじめ、味や性質を左右する成分を「はかる」ことは、そのためのお手伝いができるのではと考えています。


なぜ、野菜の硝酸イオンをはかるのか? その答えから、硝酸イオンが野菜の成長とおいしさの両方に左右する、とても重要な存在であることがわかりました。だからこそ、野菜と硝酸イオンが良好な関係であるためには「はかる」ことが欠かせない、というわけです。次回は、野菜の成長とおいしさのために硝酸イオンをはかる現場、農家さんに取材します。

 

野菜のおいしさをはかる

>>野菜のおいしさをはかる[1] 「おいしさ」を「はかる」ことはできるの?
>>野菜のおいしさをはかる[3] おいしい野菜を届けるために「はかる」

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野菜のおいしさをはかる[1] 「おいしさ」を「はかる」ことはできるの? https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1183/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1183/#comments Wed, 30 Apr 2014 02:00:35 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=1183 レストランや居酒屋探し、みなさんは何を頼りにされますか? 今だとやはり、口コミサイトでしょうか。ソーシャルメディアを利用している方からは、フォローしている人のレコメンドがいちばん、という声も聞かれます。もちろん古くからのグルメ雑誌の信頼も変わらず厚いことでしょう。

ところでこれらはすべて、発信する人と受け取る人の「味覚」に左右されます。おいしいと思うかどうか。ご存じのとおり、十人十色、千差万別です。誰しもがおいしいと思う名店の味、変わらぬおいしさのあのお菓子……多くの人に愛される「おいしさ」はたしかに存在しますが、それでも人の味覚に頼らざるを得ません。もし「おいしさ」が客観的に判断できたとしたら。お店選びや食材選びもガラリと変わりそうです。人間がおいしさを感じる仕組み、肉や魚、野菜など素材が持つ成分からもおいしさのヒントがあるはず。

というわけで今回のテーマは「野菜のおいしさをはかる」。そうです、「はかる」ことももちろん、おいしさを客観的にするための研究開発に利用されています。


意外と知らない? おいしさを感じる「味覚」の仕組み

食べ物を「おいしい」と感じるとき、私たちは目で見て匂いを嗅いでと、ほかの感覚器からの情報を統合して判断しますよね。おいしさにつながるさまざまな信号のひとつとして、味覚が存在します。

「味覚」はご存じのとおり五感のひとつです。五感のうち「視覚」には視力検査、「聴覚」には聴力検査と客観的な数値として「はかる」ことになじみがありますが、「味覚」の場合はそうではありません。「味覚」をはかることはできるのでしょうか?

味覚には「甘味」「苦味」「酸味」「塩味」「うま味」の5つの基本味があります。この基本味を受容するのが、「味蕾(みらい)」という名の、数十の“味細胞”の集合体です。舌を中心に口腔内に存在し、個人差はあるようですが平均して7,000~9,000個もあるそうです。舌先、舌の奥とそれぞれの神経細胞の役割を経て脳へと伝えられていきます。

味細胞の膜には受容体と呼ばれるタンパク質が存在し、先述した感覚からの情報を体内に伝えていく役割を担っています。詳細は省きますが、甘味や苦味、うま味に関してはタンパク質に対する味物質との反応で信号が脳に送られる仕組み、酸味と塩味はイオンを通す構造が利用されているなど、基本味の中でもその働きはさまざまです。


苦味の正体「硝酸イオン」と「野菜のおいしさ」

味やおいしさに関する研究は奥が深く、多様な技術や知見が役に立っています。おいしさすべてをこの記事で網羅することはとても不可能ですので、はかる場では「はかる」技術が活躍している“ある味”についてお届けします。その味とは……「苦味」です。

苦味と聞いて何を思い浮かべますか? コーヒー、ビール、大人の嗜好品。野菜にも苦いものがありますよね。苦味には、多くの毒物が苦いことから、有害物のシグナルとしての機能があると言われています。余談ですが酸味にも同様に、本能で避けるべき“腐敗”を伝える役割があるとされています。苦味のある飲料や食品には大人のイメージがつきますが、成長する過程でそれら苦味を持つ飲料や食品が安全なことを知っているからこそ、本能的な反応を超えて楽しめると考えると腑に落ちますね。

苦味を感じる飲料や食品が多岐にわたるように、苦味を感じさせる物質も多種多様です。たとえば野菜。肥料をやりすぎてしまうと、土壌中の「硝酸イオン」が増加します。土壌から根を通じて野菜に取り込まれる物質ですが、多すぎると野菜を傷つけることがありますし、野菜の中に多量に含まれると“苦味”が過ぎておいしさをそこねてしまう可能性もあるのです。しかし、この「硝酸イオン」は同時に、食材が育つための大切な要素なのです。


おいしさにつながる物質もあれば、そうでない物質もあります。次回は、農家や販売店を悩ませる、野菜の苦味の原因のひとつ、「硝酸イオン」対策で活躍する「はかる」技術に迫ります。「野菜のおいしさをはかる」ことで、おいしい野菜づくりに貢献できるでしょうか?

 

野菜のおいしさをはかる

>>野菜のおいしさをはかる[2] 野菜の成長とおいしさを左右する「硝酸イオン」をはかる
>>野菜のおいしさをはかる[3] おいしい野菜を届けるために「はかる」

 

Photo by Thinkstock/Getty Images

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野菜のおいしさ、掘り下げました。 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1135/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/1135/#comments Fri, 18 Apr 2014 02:00:20 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=1135  

豊かな大地で愛情たっぷりに育てられ、ご家庭の食卓にのぼる数々の野菜。口の中にみずみずしさが広がったり、甘い・おいしいと感じてもらえる良質な野菜を栽培するには、それを生み出す土壌や水質に日々細心の注意を払わなければなりません。HORIBAの技術は、土壌や食品中に含まれるミネラルなどの成分を分析・数値化することで、農作物の育成管理や安全な食品づくりをお手伝い。暮らしに欠かせない「食」のシーンでも、長年培ってきた測定技術の成果がしっかり実を結んでいます。

 

※広告シリーズ 「見えないけど、見つけられる。」 WEDGE(ウェッジ)2014年5月号より

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