はかる場 » はかる日々 http://www.jp.horiba.com/hakaruba はかる場」とは、「はかる」ことで「見える」ようになる世の中のアレコレを紹介するメディアです。 Thu, 19 Nov 2020 04:47:00 +0000 ja hourly 1 http://wordpress.org/?v=3.5.1 水のキホン、「純水」とは https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/391/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/391/#comments Mon, 22 Jul 2013 02:00:10 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=391 地球は「水の惑星」です。地球表面の7割が海です。生物はこの海で誕生しました。植物も動物も、もちろん我々人間も、水なしでは生きることができません。人間のカラダの7割も水から成り立っています。

地球上にも体内にも、あたりまえのように存在している水ですが、その性質は物質のなかでもかなり特殊です。ふつう液体の密度は、温度が低いほど大きく(重く)なりますが、水がいちばん重いのは、摂氏4度のとき。だから氷が水に浮くわけです。もし水が他の液体と同じ性質だったら、海は底から凍りはじめ、まったく動きのない世界となり、そこで生命が誕生することもなかっただろうといわれています。

さらに、水のモノを溶かす(溶媒としての)働きがなければ、化学や物理学の研究や、さまざまな生活技術の発達もありえなかったとも言われています。もちろん「はかる」ことにとっても、水は何より重要な要素です。電気を通しやすい、その特性を利用した導電率は無論のこと、“純粋”は分析のための基本物質なのです。私たちの暮らしと切っても切れない間柄の「水」。ここでは「はかる」対象として、「水」を見ていきましょう。


“きれいな水”と“うまい水”

“きれいな水”と“うまい水”

豆腐やお酒の良し悪しは、水で決まる、と言われています。このように飲みものや食べものの素となる“きれいな水”は、おいしい料理に不可欠です。ただし、ここでいう“きれいな水”は、“不純物が含まれていない”水ではありません。もちろんカビ臭い水やカルキ臭い水は論外ですが、ほとんど不純物を含まない水は、文字通り“味気ない”もの。清流やおいしいわき水には、適度のミネラル(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄などの鉱物質)を含んでいます。

飲料水において、よく硬水や軟水という言葉が使われますが、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを多く含む水が硬水、それぞれ少ない水が軟水と呼ばれます。日本の河川の水はほとんど軟水で、海外産のミネラルウォーターは、基本的に硬水です。おいしい料理をつくるには、硬水がよいのか、軟水がよいのか知りたくなりますが、一つの答えはありません。日本の料理は軟水を使うことを前提に発達してきたものですし、硬水が多い地域では、硬水にふさわしい料理がつくられてきました。水の違いが食文化の個性をつくってきたのです。

このように、味を左右する“きれいな水”や“うまい水”の定義はありません。一方で、限りなく“純粋”な水は存在します。「純水」と呼ばれる水です。


「純水」と「超純水」

「純水」と「超純水」

科学の実験や分析にとって、水は何よりも重要な要素です。不純物が大量に入った水で実験器具を洗っていては、正しい結果など出るはずがありません。とりわけ化学分析には、「純水」が不可欠です。

世にいわれる「純水」は、正確には完全に“純粋”な水ではありません。あくまでもほとんど“純粋”に近い水のことを指します。一般的には水道水などの水をフィルターでろ過し、イオン交換樹脂などを通して精製したものです。イオン交換樹脂を通過することで、水の中にイオンの形で含まれているミネラル分などの不純物が取り除かれます。このようにしてつくられた「純水」は、「脱イオン水」と呼ばれることもあります。さらに徹底してイオンを取り除いた水、「超純水」と呼ばれる水も存在します。ほんの小さな異物も許されない半導体製造プロセスで基板の洗浄などに用いられたり、医療をはじめ多くの分野で重要な役割を果たしたりしています。

これらの「純水」や「超純水」には賞味期限があります。“純粋”であるために、空気に触れるだけで大気中の二酸化炭素を吸収し、少しずつ変質してゆくため、精密な分析などに用いる場合はなるべく早めのご使用を、というわけです。


「純水」。飲料水や生活用水として、暮らしの中では触れることのない「水」です。しかし、塩分や河川の汚染を「はかる」ために用いられる「導電率」は、まさに“水に含まれる不純物の量”を知る、すなわち「純水」との違いを数値にして「はかる」ことなのです。

 

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お肌はどうして弱酸性? https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/370/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/370/#comments Mon, 08 Jul 2013 02:00:37 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=370 気温がグングン上がり、日差しもジリジリ照りつける季節になりました。気を抜くとすぐに汗でびしょびしょ、真っ黒に日焼けしてしまうこの時期、洗顔料やボディーソープなどのスキンケア商品が活躍する季節でもありますね。

最近では、“お肌にやさしい弱酸性”とうたわれているスキンケア商品もすっかりおなじみになりました。一方で、なぜ弱酸性がお肌にやさしいのかと問われると、答えられない方が多いのでは?

知っているようで意外と知らない、お肌とpHの関係について、お話ししましょう。


なつかしのリトマス試験紙……「pH」ってどんなものだった?

なつかしのリトマス試験紙……「pH」ってどんなものだった?

「pH(ピーエッチ)」という言葉を、一度は聞いたことがあると思います。酸性・アルカリ性の強さ(弱さ)をあらわすのがpHの数値です。理科の実験で、pHの値によって色が変化することで、酸性・アルカリ性を示したリトマス試験紙、覚えてる人も多いのでは。アジサイの花も、土壌のpHによって花の色が変わることが知られていますね。

pH 7が中性で、それより値が小さいと酸性、大きいとアルカリ性。身近な食べ物で例を挙げると、レモンはpH 2.5、石鹸水は7~10、コーヒーは5~6.5、牛乳は6.2程度、ビールは4.5だといわれています。酸性のものは酸っぱくて、アルカリ性のものは苦い。簡単に言えば、そんなイメージでしょうか。

人間のカラダにもさまざまなpHが存在します。胃液は強酸性で1.5~2.0(なんと主成分は塩酸!)、血液は7.4、汗は7.0~8.0です。肝心なお肌の表面ですが、pH 4.5から6くらいの弱酸性だといわれています。ですからお肌のケアには、お肌に優しい=刺激の少ない“弱酸性”が良いということになります。


お肌のpHは年齢とともに変化する

お肌のpHは年齢とともに変化する生まれたばかりの赤ちゃんの肌はほとんど中性ですが、あっという間に酸性に変わります。酸性≒殺菌作用があることを意味し、デリケートな子どもの肌を守るため、皮膚を弱酸性に保つ仕組みになっているわけです。

人間の肌にある皮脂膜は、肌を保護するための天然クリームの薄いベールのようなもの。肌のうるおいを保ち、滑らかにするだけでなく、肌を弱酸性に保つことで外部からの刺激や雑菌の繁殖を抑える働きもあります。

自然の殺菌作用が備わっている人間の肌ですが、年をとるにつれ、ふたたび中性に近づいてしまいます。その結果、殺菌作用が弱まり、肌荒れが起こりやすくなるのです。実際に肌荒れや皮膚病になると、pHは6を超えてしまいます。そういうこともあり、お肌のためには弱酸性の石鹸やクリームが薦められているのです。


お肌になぜ、弱酸性がやさしいのか、おわかりいただけましたか? 人が元来持つ、自らの肌を守ろうとする成分を守るための弱酸性、なんですね。

このように人体の性質とpHは切っても切れない間柄。「はかる場」では、人体とpHにまつわる、さまざまなエピソードを紹介していきます。

 

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PM2.5をはかる[1] PM2.5、いつどこからやってきた? https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/247/ https://www.jp.horiba.com/hakaruba/archives/247/#comments Wed, 19 Jun 2013 02:00:49 +0000 遠藤英之 https://www.jp.horiba.com/hakaruba/?p=247 ニュースの天気予報を眺めていたら、なんだか予報の種類が増えた気がします。明日の天気、気温、湿度、風向き、時期によっては風向きや不快指数……。天気予報も時代や環境に適応しているんですよね。

この春、そんな天気予報のラインナップでひときわ異彩を放ったのが「PM2.5分布予測」。
近年注目が高まった背景には「中国の深刻な大気汚染の影響が、黄砂とともに日本にまで及んできた」という報道もありましたが、日本国内でもそれ以前から発生が確認されており、確かな原因はわかっていません。
ではこのPM2.5とはいったい何なのでしょうか。じつは昨日今日つくられた言葉じゃないんです。
そもそもどういった数値なのか、そしてどのように「はかる」のか。まずはあらためてその意味と成り立ちをおさらいし、その正体に迫ってみましょう。


あらためて「PM2.5」とは

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「PM2.5」は、大気中に浮遊する微粒子のうち、粒子径(直径)がおよそ2.5μm(マイクロメートル、1/100万メートル)以下のもの(※)。2.5μmとは髪の毛の1/30ほどの大きさと言われています。PMとはparticulate matterの略。

大気中に浮遊する微粒子はぜんそくの原因のひとつともいわれ、従来から問題視されてきました。PM2.5の研究は米国ではじまり、1997年に規制がもうけられています。現在米国ではPM2.5とあわせて、1997年以前から規制のあった「PM10」とよばれる、粒子径10μm以下の粒子の2種類について監視が行われています。

米国でPM2.5が規制化されたきっかけは、大気中の微粒子濃度と死亡者数との相関が調査されたとき、PM2.5濃度がPM10濃度よりも死亡者数と高い相関をしめすと報告されたことです。これは、より小さな微粒子のほうが健康におよぼす影響が大きいということを表します。より小さな粒子のほうが大きな粒子よりも気管を通過しやすく、肺の奥深いところまで届くためだといわれています。またPM2.5の大半が、排ガスなどに由来する有害ガスが凝集してできた微粒子であるため、大きな粒子よりも有害成分を多く含んでいるからだともいわれています。発生源としては、「ボイラー、焼却炉などのばい煙を発生する施設、コークス炉、鉱物の堆積場等の粉じんを発生する施設、自動車、船舶、航空機等、人為起源のもの、さらには、土壌、海洋、火山等の自然起源のもの(環境省「微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報」より)」もあるといわれています。


PM2.5をはかる

日本では、1975年から「SPM」(suspended particulate matter)とよばれる粒子径10μm以下の微粒子について環境基準が設定され、大気中のSPM濃度が監視されています。SPMは、米国で規制されているPM10とはその内容が少し異なりますが、規制の目的は同じものと考えてよいでしょう。

米国でPM10に続いてPM2.5の規制が始まったのと同様、日本でもSPMに続いてPM2.5の規制が始まりました。
ひとつのきっかけになったのは、1999年和解にいたった川崎市南部の道路公害をめぐる「川崎公害訴訟」。国と住民との和解案に「大気中のSPMの調査とともに、PM2.5の測定手法を調査すること」という条項がもりこまれました。これを境に、PM2.5の測定手法や健康に対する影響についての調査が本格的にスタート。採取装置や自動測定機、測定分析手法などの技術の進展により、小さな粒子をはかれるようになりました。また、大気中の濃度の測定、粒子を捕集して分析しPM2.5にはどんな物質が含まれているのかまでも調べられるようになりました。


はかる技術が果たす役割とは

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私たちに届けられる天気予報の「PM2.5分布予測」は、大気中の濃度が「多い」「少ない」という大雑把な情報ですが、国から発せられる注意喚起は明確な数値に基づいて行われています。数値は環境省の大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君)でも見ることができます。ここにも当然、はかる技術が役立っています。しかし、たとえば基準値を超える数値の日は外出を我慢する、それを知らせるためだけの技術だとすると、それはちょっと悲しいですよね。

じつは、「PM2.5をはかる」ことは、さまざまな有害物質の発生を減らすことに役立っているんです。SPM(PM10)やPM2.5を分析することで、その物質の大きな発生源が煙突や自動車からの排ガスだとわかり、2009年5月、国により「1年平均値が15マイクログラム/立方メートル以下であり、かつ、1日平均値が35マイクログラム/立方メートル以下であること」とした環境基準案が策定されました。
規制ができただけではありません。「PM2.5をはかる」ことは、たとえばエンジンの燃焼効率を上げて有害物質を出しにくくしたり、火力発電所や工場の煙突から出る前にとりのぞいたりと、排出量を減らす根本的な取り組みを支えています。また、排出量がちゃんと規制より少なくできているかも「はかる」ことで確認でき、企業や事業所も規制を守ることもできるようになるんです。


私たちの生活と密接な関係になってしまったPM2.5。気づかぬうちに、長い付き合いになっていたんですね。避けたいのはもちろんですが、できれば根本的な解決を願いたいところ。

次回は「排出量を減らすために役立てられている『PM2.5をはかる』技術」について、お話ししましょう。

※大気環境基準では、粒子径2.5μmの粒子を50%の割合で分粒できる装置を用いて採取できる微粒子をいいます。

 

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